「石森萬画館」第八十二回訪問記

平成二十五年十月二十七日(土)

 五時半起きで六時二十九分の水沢発上りに乗り、一ノ関には五十三分着。慌ただしく乗り換えて七時丁度の発、四十六分に小牛田着。やはり赤と青のマンガッタンライナーが停車している。ここで恐怖の五十四分待ち。八時四十分小牛田発、石巻着は九時二十五分。実に三時間近い所要時間のうち三分の一は待ち時間。この週は台風接近で心配したがここまで好天、運行に乱れは無し。
 萬画館に急ぐ。かんけい丸の斜め向かい、「まんぼう」臨時事務所の建物の外壁には、旧墨汁一滴の建物に取り付けられていた「飛び出す009」が設置されている。中には入らず。
 入館して映像ホールに向かい、事前入手済みの券を提示して入場。開場時刻九時半は既に過ぎている。事前申込制で定員五十人、既に前列から埋まっている。いずれにしても筆者は後列の席が好みである。
 司会は「まんぼう」の木村部長。定刻の十時を過ぎてから関智一と村枝賢一入場。後述の特別企画展にちなむ催し物「村枝賢一×関智一トークショー」開会。漫画家・村枝賢一は複数回見ているが、声優・関智一を見るのは初めて。関と筆者は世代が近く、章太郎没後作品や「ドラえもん」、「ウルトラマン列伝」等、関の出演作にはなじみがある。
 今回の聴衆には四国や福岡県から来た人もいる。石巻市民は少ない。
 両者とも子供の頃から章太郎萬画に親しみ、OVA「ギターを持った少年」に両者とも関わっている。実は漫画家志望だった事もあると言う関は、章太郎には会えなかったが子供の頃から水木しげる、藤子F、永井豪に接触を試みたと言う。
 私的に何度か来館していると言う関は萬画館を「ヒーロー好きの出雲大社」と評する。
 村枝も、大量生産の章太郎超人伝説を語る。
 関も出演している最近の東映特撮についての話題。
 お絵かき対決。出されたお題について両者が即興で絵を描き、どちらが上手か勝負する。判定は聴衆。三本勝負で、一本目「南光太郎」は関の勝ち。二本目「アンドロイドV」は村枝の勝ち。三本目の「チックン・ダック」は両者とも苦戦、まるで違う代物を描いてしまい、引き分け。描かれた六点はその場でじゃんけんで聴衆に贈呈。章太郎大全集を持っているのにこの有様、と言う事で木村部長が(本心ではなく演出だろうが)「よくそれで詳しい等と言えますね」と言うが、筆者が「一番知らないのは萬画館自身だろう」と思ったのは言うまでもない。
 質疑応答で、今後やってみたい章太郎作品はと言う問いに、関は変身忍者嵐やロボット刑事を舞台でやりたいと答える。
 村枝の元には、「SPIRITS」のアニメ化の話は来ているが、漫画連載自体まだ途中なので具体化には至っていないと言う。
 もし海斗がアニメ化されたら主役を演じたいと言う関。
 盛況のうちに十一時半、お開き。
 中瀬を出て、マルシェを通過して八幡家に向かい、予約無しで飛び込めば食事可。かば焼き定食と茶わん蒸し、三千五百円。紀代子女将には会えず。
 ショーの時間が迫っているので中瀬に急ぐ。橋の上で背後から呼び止められる、振り向けば神奈川県の先輩。日帰りでショーを見に来たと言う。
 十時半から一連のショー。まず海斗の水上ショー。前日に復活している。司会が「海斗はどこからやって来るか」と煽り、観客があちこちを探すと轟音と共にイスラスタで川下から遡ってくる海斗! 今回はヒメラニアンとの水上対決は無く、水上を走り回り、またプレゼントを観衆に向かって撒く。これだけでも拍手喝采。
 舞台では3大ヒーローコラボショー。登場するのは海斗、村枝の出身地熊本県のヒーロー・グランパワーヒノクニ(二人組)、村枝漫画のジエンド。司会は萬画館アテンダントからヒノクニ組の人に交代。脚本は今回用の独自。この四人の他にも劇の途中で警察特殊部隊や悪者複数勢力がいろいろ登場し、特殊部隊を蹴散らすので悪者かと思ったら正体は人間と言う事で最終的にヒーロー側に付く者もおり、ショー終了後の記念撮影にだけ参加のヒーローまでいて、最終的に舞台に並んだのは前述四人の他にラフジャックダイヤモンド、武士神ぶしがみ、ジュグリッター。
 村枝と関も見物している。ショー終了後に関と言葉を交わす。
 晴天だが強風。熊本県司会者も寒いを連発。
 入館。第51回特別企画展「村枝賢一原画展~受け継がれるHERO SPIRITS~」十月十二日(土)から一月二十六日(日)まで。
 展示の先頭の方には「俺たちのフィールド」「光路郎」等が並び、後半は「SPIRITS」。原画や大きなカラーパネルで各作品を詳細に紹介している。ここでまた「RED」のパネルに間違いを見つけて通報、1976年は十九世紀ではない。賑わっている。
 常設には仮面ライダー鎧武のマスクが追加されている。新番組放送開始日からの展示。
 ライブラリーのカウンターの正面のラックに先頃亡くなった「やなせたかし」の著書が数点まとめて置かれている。アンパンマン絵本一作目を手に取る。仮面ライダー同様、異様な姿に大人達からは不評だったのが子供達に大人気となったキャラクターである。
 十五時十分からの回の海斗特別編を見る。
 墨汁一滴で少し買い物、新刊や土産物の菓子等。年間パスポート提示で五パーセント引き。
 作田嶋神社参拝。震災遺構として保存かそれとも撤去か、方針未決定の女神像。
 十六時頃には辞去。粟野商品は見当たらず、マルシェでいつもの鯖の煮物二つを買う。
 駅のNEWDAYSにも粟野が無い。車内で摂る為に軽食をいくらか買い、十八時五十五分水沢着。 

 演出や冗談でも萬画館に「汝は物を知らない」等とは言って欲しくない。
 村枝と関からは漫画家と声優それぞれの立場からいろいろ聞けて面白かった。本稿は例によってあくまでも抄録である。これからも関には萬画館に来て欲しい、我等スカイライダー世代。
 台風大暴れの週だったので開催が危ぶまれたが当日は寧ろ晴天だった。来夏こそ水上戦闘再開に期待する。強風で寒いのには参ったが降水よりはマシだ。ステージショーは登場人物が多過ぎて、またジエンド関係はヒーローなのか悪者なのか一目で判らない者もいて、多少まとまりを欠く印象も受けたが、貴重な大集合であったとは思う。最近はありがたみが無くなったが、筆者は子供の頃にウルトラ兄弟や先輩ライダー集合に胸躍らせていた世代である。
 村枝展は何度か見ているが今回は「SPIRITS」以外の作品も鑑賞できたのがよかった。
 「まんぼう」臨時事務所だった建物は十一月二日にアンテナショップ・まんがる堂として開店した。地元産品等を扱うと言うが、既に駅前にはロマン海遊21、近所には期限付きながら復興マルシェがあり、「まんぼう」自身には萬市場の開設と撤退と言う過去がある。さて今度は存続できるだろうか。

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