「石森萬画館」第一回訪問記

平成十三年七月二十三日(月)

 やはり九時十二分水沢発、十一時十五分石巻着。暑い。
 三年前から度々訪問している石巻市に遂に石森萬画館開館。何ケ月も前から上司に「この日は何が何でも休ませろ」と言っておいての石巻行。石森三昧の三日間の最終日。
 石巻駅のびゅうプラザで萬画館の前売券を購入。
 まず石巻双葉町郵便局に向かう。汗をかきつつ山を登り、そして下ると局が見えて来る。
 佐藤局長とは昨夏のふるさと記念館開館初日以来の再会。この日発売の東北版官製絵入り葉書「石巻マンガロード」と萬画館オープン記念タトウを買う。前者は石巻市内郵便局と東北六県の中央局のみで販売される品物。後者はA4大の、仮面ライダー画や章太郎の言葉が印刷された台紙に二百七十円普通切手とふるさと切手「仙台開府四百年」が貼られ、それぞれ「石森萬画館オープン」の石巻局小型印と石巻双葉町局の風景印が押された物。仮面ライダー画はふるさと記念館の記念碑と同じ絵。「009」に続いて今回のタトウもなかなか美麗な代物である。局長には一昨日、昨日のふるさと記念館の噺をする。局長からは夕方に萬画館に臨時出張所が出る旨を聞く。夕方の再会を約して辞去。
 立町通りを行く。所々にヒップホップアーティスト・TOMI‐Eトミーなる人物による壁画が見える。青い009画が印象に残るが、あまり筆者好みの絵ではない。
 ペアーレ前の仮面ライダーモニュメントの右の触角は修復はされているが、修復された物と一目で判る出来。やはり痛々しい。
 ことぶき町通りの青い「チョビン」フラッグが美しい。
 旧「墨汁一滴」店舗はマンガッタン倶楽部の事務所になるようである。
 再度損傷の憂き目に遭ったエッちゃんモニュメントは修復済み。  更に橋通りを進むと萬市場。マンガランド関連商品や地元産品を扱う土産物屋。なかなかよさそうな品物が多く並ぶが何も買わず。
 粟野蒲鉾店が橋通りにも進出、中ではawano若旦那達が開店の準備中。
 橋を渡って中瀬へ。
 映画館の岡田劇場では十四時から「仮面ライダー対ショッカー」を繰り返し無料上映。劇場近くの歩道では何かの露店、若い女性店員から「お兄さん」と声を掛けられるも無視して去る。しかし妙齢の女性に昼間から「お兄さん」と呼ばれて少しギョッとする。
 いよいよ萬画館へ到達。
 すぐ和田社長に会う。萬画館向かいのアパートの川に面した一室に案内される、(有)H0の作業場だという。そこにはすぎやま女史、「相馬よりの使者」氏、黒沢女史と息女(以上順不同)。再会や初対面を喜ぶ。
 この時点でまだ十二時過ぎくらいだったと思う。事実上「墨汁一滴」スタッフだというすぎやま女史の案内で一般公開前の萬画館内へ。
 三階建ての大きな、異様な建物。これから訪問する人の楽しみの為に、まだ内部の詳細は述べまい。ただ言えるのは、単なる美術館、人形屋敷、図書館、遊園地ではないということ。前々から内部構造、常設展示内容は知っていたものの実物を見てみると予想以上の素晴らしい出来。
 そしてまた十月二十二日までの企画展「THE 章太郎ワールド」もよい。圧巻は平山ライダーの石森デザイン画展示、特に気に入るのはスカイ。番組の初代アイキャッチャーにして「組曲仮面ライダー」ジャケットの絵。筆者の大好きな絵で、勝手に「ライダーブレイクの図」と呼んでいる。その大好きな絵を大きな原画で見られて大感激。
 やはり特撮関連展示の前では狂喜のあまり叫び、歌い、悶える筆者。得意になって解説。すぎやま女史はさぞ呆れていたに違いない。
 アパートに戻る。鞄等を置いて昼食を摂りに出る。
 マンガランド構想参加の蕎麦そば屋・えび志は休み、残念。橋通りの中華楼で食事。ついでに自販機から缶ジュース三本を買って帰り、アパートの諸氏と飲む。
 暫し談笑。萬画館開館式典についてはかなり危険な演出案も飛び出して皆で爆笑。一例、戦闘員が乱入して来てその覆面を取ると中から石巻市長が出現、等。
 由利徹が存命なら萬画館開館式典のゲストにこれ程ふさわしい人はいないのに、と思う。「がんばれ!! ロボコン」レギュラー出演者にして石巻市出身である。
 「相馬よりの使者」氏とは須賀川市のうつくしま未来博や同市立博物館の生誕100年円谷英二展の噺。
 小野寺丈到着の報。果たして萬画館入り口に丈がいる! 「小野寺丈さんですよね」と言って近づき、「これの!」と言ってバンダイEBシリーズ「仮面ライダーBLACK」を取り出すと彼は喜色で「はい、はい!」と大きく頷く。その本にサインしてもらう、家宝である。
 開館を待つ一般客の行列は昨夏のふるさと記念館の時に比べると短い。この暑さでしかも平日だからか。筆者は並ばず。
 またアパートへ。双葉町局で買った絵入り葉書で友人知人恩師達に暑中見舞いを書く。さらさらと万年筆を走らせる。
 心地よい風が吹いてくる。ふと横になる。「いつの日か」が口をついて出て来る。変な男に萬画館案内で奇態を見せられた上に下手な歌まで聞かせられて、すぎやま女史にはとことん災難な一日だったと思う。
 双葉町局の佐藤局長もこちらに顔を出される。
 十六時から式典。記念館向かいの空き地にて。空き地の周囲には祝いの花輪が林立する。
 市の幹部や経済産業省の局長、石巻出身の日野市朗代議士等。日野代議士は「こう見えても」漫画が大好きだそうな。
 妙な老人がいる。「漫画なんかに我々の税金が使われている」「駐車場の無い施設なんて駄目だ」「一年ももつか」と周囲の人々に触れ回っている。入館者行列でも同じ事を言っていたが、所謂反対派だろうか。
 十六時半、テープカット。市幹部、石森遺族、藤岡弘、佐々木剛、藤田まことや地元小学生等。仮面ライダー1号、2号、アギトも登場。
 筆者も再び入館。売店・新「墨汁一滴」に旧「墨汁一滴」以来のスタッフである阿部女史。去る六月二十四日のNHK・BS2と同ハイビジョン「熱血!ふるさと対抗”千人の力”コンテスト」での女史の出演と「マンガ灯ろう祭り」グランプリについて祝辞を述べる。
 売店の品揃えは豊富、文具、小物、食品、実に様々。しかしながら筆者のこの日の買い物は萬画館図録のみ。本当はもっと買いたかったのだが混雑で落ち着いて品定めが出来ず、また暑い日に食品を持ち歩くのも衛生上よくないとの判断による。
 「墨汁一滴」で「石研」やまおか氏に会う。挨拶を交わしただけであまり話もせず。
 また展示を見てみる。萬画館オリジナルアニメ「龍神沼」も鑑賞。
 とにかくすごい人出。
 建物の一階と二階から隣の広場に出られる。既に露店が出ている。何やらガンガンと大音量の音楽が流れている。郵便局臨時出張所で更に絵入り葉書を購入し、先程書いた暑中見舞いの小型印押印での発送を頼む。
 忘れ物しないようにアパートに自分の持ち物を取りに行く。新「墨汁一滴」若手女子店員三人が休憩中。勧められてパンを一切れもらう。後で聞いたところではこの女子店員達の中に「BLACK」を見ていた人がいて、筆者が去った後に「あの人は『BLACK』の研究家」と知って驚いていたのだという。
 あらゆる年齢層の人々が集っているがふるさと記念館開館時よりは若者、十代の少年少女の姿が多いように思う。
 広場の西端に「マンガ灯ろう祭り」に登場した「ペットボトル仮面ライダー」とグランプリトロフィーが据えられている。大変立派な出来。日が暮れると中に仕込まれた明かりで美しく浮かび上がる。萬画館内に常時設置してほしいものだが、如何?
 十八時から広場でオープニングフェスティバル。TOMI‐Eが壁に絵を描いて司会者が騒いでいるようだがよく判らぬ。専ら飲食と旧「墨汁一滴」組との雑談に徹する。
 十九時頃から来賓登場。漫画家達、石森遺族、藤岡、佐々木、藤田。藤岡と佐々木は司会者の求めに応じて「変身」を披露。
 生前の章太郎と面識があったわけでもなく、石森作品への出演も「燃えろ!! ロボコン」へのゲスト出演一回だけの藤田が石森関連施設の行事に「出演者」として大きな顔で二度も来場するのは如何なものか。しかも今回は「必殺」の音楽に乗って登場して、司会者にわざわざ「藤田さんは『ロボコン』に出たことがあります」と説明される始末である。筆者は「サンタクロース!」と声を掛けてやったが、会場の人々のどれ程がそのことを知っているのか、疑問である。どうせなら村上弘明を呼べばいいのに、尤も、彼が仮面ライダー8号ということを知らない人も多かったりして。
 名残を惜しみつつ十九時半頃に会場を後にして駅まで疾走、五十分の小牛田行に乗る。後で聞けば、後二分待っていれば「乾杯」だったのだという。
 三日間の宮城県行ですっかり日焼け。全国的な記録的猛暑の日々、炎天下を歩き回ってよくぶっ倒れなかったものだと思う。ただ、愛用の黒い扇子は酷使した為か要が壊れてしまった。
 萬画館は素晴らしい、もう絶賛絶賛、大絶賛17。とにかく石森章太郎、石森作品に関心のある人は行くべし。それと、井上和彦愛好家にも嬉しい施設である。井上は開館式典の来賓として出席してもよかったのではないか、藤田まことよりよほどふさわしいと思う。
 萬画館図録、この内容で七百円とは安い。大看板である「仮面ライダーシリーズ」「009」の二つを柱に、写真や絵をふんだんに使った豪華な内容。石巻市の歴史、地理についての記述も詳しい。「仮面ライダー」は「アギト」までの写真、「J」までの石森画が載っている他、初作と「Black」が口絵で大きく扱われている。G3とギルスは載っていない、ライダーマンと違って号数には入らないのか。
 ああ、近いうちにまた行こう。

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