「石森萬画館」第六十五回訪問記

平成二十二年十月二日(土)

 今回も前回同様七時六分の上りで出発。途中の小牛田駅に蒸気機関車と客車が停まっている。火は入っていないようで人気ひとけも無い。恐らく九日から十一日まで運行の「SLホエール号」の準備であろう。
 十時十三分に石巻に着く。自宅を出る時には肌寒くて上に一枚長袖を羽織るが石巻市は暑くて、すぐ脱いで鞄にしまう。ホームに降り立つと外から楽隊の演奏が聞こえる。
 「仙台・宮城『伊達な旅』キャンペーン」の一環として、土日の二日間に亙って「東北4大焼きそばフェスティバルinいしのまき」開催。会場は中瀬公園だが駅前にも資料配布のテントや牡蠣、帆立、海鞘ほや等の食品の屋台が出ている。市内のどこかの中学校であろうか、楽隊がいる。また、石巻市観光キャラクター「いしぴょんず」が危なっかしい足取りで踊っている。今回参加の「4大」とは当地の石巻焼きそば、秋田県の横手やきそば、青森県の黒石つゆやきそば、福島県のなみえ焼きそば。チラシには青森県の八戸せんべい汁、宮城県の気仙沼ホルモン、登米はっと汁も掲載されている。
 すぐ駅前をあとにする。例の旧丸光の建物は前回訪問時はまだ作業中で形をとどめていたが解体が進んでこの日には既に無い。中瀬公園は既に大変な人出。作田嶋神社参拝の後、列の長さを見比べてまずなみえ焼きそばに並ぶ。十時半からのはずのシージェッター海斗ショーは十一時近くになってから始まる。列に並びながら音だけ鑑賞する。内容は前回訪問時のファリンクス登場編と同じ。明らかに川村栄二の音楽を使っているがどの作品のサントラかまでは判らない、筆者の勉強不足である。
 五十分ほどかかってなみえ焼きそばにありつく。店頭に立っていた少女達は福島県浪江町の御当地アイドル「NYTS」だったのか。列から離脱して適当な場所に着席して食す。確かに麺が太く、「ソース仕立ての焼きうどん」のような趣がある。もやしの歯応えが心地良い。
 次は黒石つゆやきそば。これも五十分ほど並ぶ。正午前に隣の横手やきそば完売が告げられる。黒石もソース焼きそばで、濃いスープがかけられる。辛い。
 公園の西側でミニ新幹線運行中。よく催し物に来るミニSLの新幹線版。円周ではなく直線軌道を前後する。
 二食続けてソース焼きそばを喰って口の中に辛さが残る。中瀬から一時脱出、内海橋を渡っていると中瀬に向かう八幡家の紀代子女将とすれ違う。
 A級グルメを求めて八幡家、但し今回はいつものようには喰えない。茶そばと茶わん蒸し、千三百円。
 再び中瀬。萬画館に入ってBZのコーヒー一杯。館内も混んでいる。
 第46回特別企画展「釣りバカ日誌と北見けんいちワールド」この日から一月十日(月・祝)まで。漫画連載は三十年を超え、先頃映画シリーズが終了した作品の特集。
 作品自体は筆者は漫画も映画もテレビアニメも鑑賞した事は無い。「爆竜戦隊アバレンジャー」とテレビアニメが競演したのは見た。
 作画担当北見けんいちの歩みや、「釣りバカ」以外の作品についても展示。北見と赤塚不二夫やスタジオ・ゼロの関係や、北見も参加した「オバケのQ太郎」が大きく取り上げられている。「釣りバカ」についてはさまざまな名場面の他、青森県大間町、宮城県女川町、岩手県釜石市等、東北地方が舞台になった作品が現地の現地写真と共に紹介されている。映画やテレビシリーズの映像も上映されている。玩具の展示は少ない。巖手屋の「せんべい汁」が大々的に展示され、且つ墨汁一滴でも売られている。やはり客層は中年以上の男性単独か家族連れが多く、子供や女性の客は比して少ない。「釣りバカ」に次いで「昭和トラベラー」の展示も大きい。
 常設の入れ替えは無し。
 十五時頃、再び公園に行く。前述の新幹線は撤去してトラックに積み込み中。完売の店が増えるがまだ行列の続く店もある。八戸せんべい汁と登米はっと汁をそれほど並ばずに喰う。前者は午前中には長蛇の列だったが後者は初めから行列は長くない。今までふるさと記念館周辺で喰って来たはっとは醤油の汁だったが今回は味噌。
 はっと汁の隣の気仙沼ホルモンに謎のヒーローがいる。顔には大きな「王」の字があり「超力戦隊オーレンジャー」のキングレンジャーだが、ヘルメットの地は黒ではなく赤。仮面ライダー剣のベルトをして、黒マントとよく判らぬスーツを着ている。手先は指の出た黒手袋で、調理に参加している。何者だ。
 紀代子女将は「なごみ庵」のテントで石巻バーガーの調理をしている。せっかくだから石巻バーガーにも並びたいが行列が長い。その隣の玉こんにゃくを一本喰う。会場にはまだまだ多くの客がいる。
 十六時頃にまた入館し、企画も見る。漸く空いたBZで「009のゼリー」一つ、三百五十円。
 十七時の十分ほど前に誰にも告げずに辞去し、NEWDAYSで粟野の「野菜揚げ」を買い、十七時十二分の小牛田行に乗車。小牛田駅では午前中に見た蒸気機関車が姿を消しているが「こがねふかひれ号」の発車を見送る。十九時五十二分水沢着。
 尚、同月八日(金)に岩手県遠野市を訪問、蔵の道ギャラリーに立ち寄る。
 そして翌九日(土)に秋田県横手市の増田町まんが美術館訪問。宮城県の両館と遠野市と合わせて、「ぐるっと一周みちのくマンガロードスタンプラリー2010」全四ヶ所訪問押印達成。また、少し足を延ばして「横手やきそば暖簾会」会員店・「味一番」にて横手やきそば大盛りを食す。

 フェスティバルについては主催者側の予想をも上回る人出だったようで、土曜日の一日だけで主催者発表で二万二千人来場。筆者も事前には焼きそば四種とも喰うつもりでいたが上記二種がやっと。石巻は後でもいつでも喰えるし横手も今後行く機会があると考えて後回しにした次第である。そして翌週には現地横手市で喰った。
 思いの外、行列の待ち時間が長くてまともに海斗ショーを見られなかったので、先月にわざわざショーだけ見に行って正解ではあった。
 今回の企画展は必ずしも女性、子供向けではない。漫画の中の風景と実際の風景の写真の対照展示は面白い。東北地方に絞っての紹介だけに近県からの客にはなじみ深いだろう。北見に限らず、いろいろな漫画家の「章太郎との意外な関係」は積極的に紹介すべきだ。

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