「石森萬画館」第五十八回訪問記

平成二十一年四月十一日(土)

 新年度最初の宮城県行は石巻市。いつもの九時十一分水沢乗車、十一時四十六分石巻着。ここ数日水沢市も温暖ではあるが(この日桜の開花宣言)、当然宮城県も春模様である。石巻線の車内から左手、北側を見れば山々に桜花。
 石巻で降りてマンガロードを歩く。市長選挙立候補者の事務所の前を通る。翌日が公示日。萬画館開館以来二代の石巻市長は不祥事続きで、「BLACK」愛好家としてはやはり「石森ヒーローと市長」の組み合わせは不吉だと言いたくなる。十九日の投開票の結果、現職は落選。
 今回は八幡家に入店できる、もし三回連続で入店できなければ絶交するつもりでいた。かば焼き定食と茶わん蒸し、三千百円。紀代子女将達から花見の予定を訊かれるが、度々書いているとおり筆者は咲き誇る花々よりも緑の草木そうもくを好む。初夏の木々の緑は楽しんでもわざわざ花見の類はしない。紀代子女将と映画「釣りキチ三平」の話をする。この店内にも矢口高雄の色紙が飾ってある。
 中瀬に入りこれも定例の作田嶋神社参拝。隣の公園では多くの家族連れが遊んでいる。
 入館、そしてBZでコーヒー一杯のみ。今回も後述の特別企画展にちなむパフェが提供されているが、以前何度か喰ったここのパフェは筆者には甘すぎるので注文しない。
 一階に降りる。受付に年間パスポートを提出して更新手続き、先着百名の景品を受け取る。有効期限は七月だが三月中に更新案内の手紙一式が来てそのとおり既に年会費を送金済み。萬画館は前倒しで年会費収入を確保したいのか。これも関係者達に言っているが筆者は年会費を十年、二十年分でも前払いして終身会員になってもよい。
 第40回特別企画展「ギャグマンガの王様 赤塚不二夫展」この日から四月十一日(土)から六月二十八日(日)まで。
 一年半前にふるさと記念館で赤塚展を見たのは本人の最晩年。赤塚の死は作品の知名度やタモリとの関係等で一般マスコミにも大々的に取り上げられた。結局本人の再起はならなかったが、今も作品は愛されている。今回の企画展は青梅会館との協力企画。
 企画の入口にスタジオぴえろ/取締役布川郁司からの花。その近くに座敷が設けられ、赤塚作品DVD上映中。その中のぴえろ版「おそ松くん」の原画が展示されている。展示内容は「天才バカボン」に偏らず多くの作品を掘り下げ、また豆知識の類も多く展示されている。先般の水木展と構成が似ている。展示作品の中で「天才バカボン」の「実物大」「ナシ」「イライラ」「キェンキャイキャキャキョン」は小六の時に漫画本を読んだ記憶がある、型破りな手法の連発。
 鑑賞していると七十代くらいの女性達、即ち漫画自体に一番縁遠いと思われる団体客が押し寄せて来るので一度企画を出てBZに退避。BZではよく団体客の添乗員が休憩している。
 暫くしてからまた鑑賞しなおす。トキワ荘の仲間として赤塚と章太郎の共作も展示されている。漫画の他、今回も赤塚の仮装写真の展示がある。
 常設も入れ替え、石森ギャグ漫画。「さるとびエッちゃん」「となりのたまげ太くん」「がんばれロボコン」「ボンボン」。
 何時頃か、一階に浜松市福市長ウナギイヌの着ぐるみ登場。体は黒いが頭が大きくて胴が短く、体形は「ばいきんまん」とあまり変わらない。握手撮影に参集する人々は大人が多い。寧ろ居合わせる萬画館女子職員の方がウナギイヌみたいな顔をしている。一階には青梅会館の説明パネルもある。
 BZやライブラリーで従業員達と会話。何故かウナギイヌの肉球を気にするBZの人々。知るかそんな事。
 十七時前に辞去、十七時十二分乗車、十九時五十二分下車。

 特別企画展は座敷が無駄に場所を取っていた、テレビを見る為に上がり込んでも座布団が無い。漫画原画とDVD上映を連動させていたのは良い。「ギャグマンガの王様」はそのとおりだが、それ以外の「知られざる赤塚作品」も鑑賞したいものだ。
 今回の訪問とは直接は無関係だが苦言を呈しておく。去る三月はシージェッター海斗五周年であったが公式記念企画は一切無し。海斗の停滞振りはもうどうにもならないのか。後発の超神ネイガーにあっという間に追い抜かれ、ネイガーは秋田県内でレギュラーテレビ番組を持っているが海斗をテレビで見るのは至難の業である。海斗は境港市水木しげる事業や彦根市「ひこにゃん」のように権利即ち金銭問題が報じられてもいない。つまり問題になるほどの人気、金づるでもないのだ。海斗をテレビにも出さなければ遠出もさせない、幼稚園回り専門で本当に地元に徹すると言うのならともかく(それが天下の石森章太郎原作ヒーローにふさわしいとも思えぬが)、中途半端に県外にも出張して、有名歌手に主題歌を歌わせている。一体海斗はどこに行くのか、それともやはり別にどこにも行くつもりは無いのか。尤も、我々その筋の愛好家がいくら批判しても「幼児相手で何が悪い」「現状でも十分喜ばれているのだからそれでいいではないか」と言われればそれまでだ。「初心者が喜んでいるのを年季の入った愛好家が馬鹿にしてはいけない」と言うのが筆者の姿勢ではある。

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