「石森萬画館」第五十七回訪問記

平成二十一年一月三十一日(土)

 今回の冬は雪が少ないがこの日は朝から雪模様。いつもの九時十一分上りに乗る。外が寒い分車内の温かさが心地よい。外はずっと雪景色、それでも小牛田で石巻線に乗り換えて暫くすれば雪が見えなくなるのがいつもだが、この日は十一時四十六分に石巻に到着してもまだみぞれが降っている。雪は払えば落ちるが霙は冷たい上にしみ込むので実に始末が悪い。そしてまた風も強く、実に珍しい悪天候である。
 小走りでマンガロードを通過して八幡家に直行するも本日予約客のみ。どうもここ暫く、先約にぶつかって入店できない事が少なくない。
 少し引き返して、以前から噂に聞く中央の飲食店「まきいし」に入る。とり釜飯と味噌汁。
 十三時頃に出たのだろうか。愈々天気は悪くなっている。中瀬に入って作田嶋神社に詣でるも境内はぬかるんでいて足下が危険である。
 入館して例によってBZ直行、コーヒー一杯。壁には「構想」関係者の遺品が飾られている。ピンバッジや「Black」複製原画。カウンターの脇に水槽が置かれ、中の蟹や魚を木村店長は我が子のようにでる。
 第39回特別企画展「矢口高雄アートワークス 〜広がる無限の世界〜」この日からから四月五日(日)まで。
 矢口については今までも何度も触れているのでその人についての紹介は略す。今回の原画は一点物や話の中の数ページの展示が多い。展示作品は「釣りキチ三平」「マタギ」等。
 改めて思う。矢口の特色は自然の風景や動物の描き込みの緻密さであり、そしてまた躍動感である。色彩もまた鮮やか。今回特に興味を持ったのは漫画本表紙とその原画の対比展示。展示の末尾に三月公開の「三平」実写映画の資材がある。
 常設の原画展示は四季にちなむ四作品に差し替えられている。春は「化粧師 百媚百嬌」、夏は「009 星空の夜編」、秋は「さんだらぼっち 大家の義太夫」、冬は「佐武と市 凍った血」。
 一階に降り、墨汁一滴を見渡し、やはり買う物は無い。テレビセットで「三平」実写映画の予告編を流している。
 天気のせいもあろう、客は少ない。閑散とした館内。BZやライブラリーで従業員達と会話をする。今年西暦二千九年は「009の年」だと萬画館からの年賀状にも書いてあったが、それで萬画館としては一体何をするつもりなのか全然見えて来ない。持参した雑誌「宇宙船」掲載の深田ドロンジョの人形の写真を見せて、萬画館従業員にドロンジョの服装が似合う人はいないと言う噺をする。着てみても人によっては随分貧相な、情けない代物になるだろう。それにしても同誌に掲載の記事で「ヘドリアン王女」と言う表記を見て、復活しても所詮「宇宙船」は「宇宙船」だと思う。玉子サンドを喰い、茶を啜る。
 二階は二巡見ておく。
 BZで過ごしているうちに風雪は激しさを増してますます天気は悪くなる、今までの石巻市訪問で最悪の状態。不吉な予感がする、そして不吉な予感ほど的中する。十六時四十分頃に辞去して十七時十二分の小牛田行きに乗り、十七時五十二分の小牛田着までは良い。やはり悪天候で運行が乱れており、十七時三十七分発のはずの一ノ関行がまだ出ていない。十八時半頃にやっと出て徐行運転で十九時二十五分頃に一ノ関着だが更にここで一ノ関・北上間の運休、バス代行輸送を告げられる。切符を持ったまま改札を出て、駅前に来ている岩手県交通のバスに乗り込む。日常的に鉄道を利用するようになったのは十七年前からだがバス代行輸送の経験は初めて。バスは雪道を進んで駅の一つ一つを回り、案の定水沢まで一時間強かかる。翌日の新聞でこの日の交通大混乱の様子を読む。

 矢口展は石森両館で何度も見ているが今回の企画は案外「またか」と言う感じのしない展示だった。切り口、構成を変えれば見る方も退屈しないものだ。しかしやはり掲載一回分の原画を読みたい。
 本文中でも述べたが本当に今年、「009」について萬画館は何をする、或いは何かするつもりなのか。

一覧に戻る

目次に戻る