「石森萬画館」第四十九回訪問記

平成十九年十一月三日(土)

 我が「帝國」は筆者個人の興味や経験によって重箱の隅をつつくのが趣旨であり、広報や報道機関等が既に取り上げたことを改めて追及するような事はしない。具体的には、例えば石森両館の特別企画展の内容の誤りを発見して鬼の首を盗ったように指摘するのが我が「帝國」の本分だが、所謂「新聞沙汰」を筆者が更に「捜査」等をしようとは思わない。

 猛暑残暑とは雖も十一月にもなれば朝晩冷え込む。少し厚着をしていつもの水沢発九時十一分に乗り、十一時四十六分石巻着。
 今回は萬画館直行、正午には間に合う。映像ホールにてDVD上映。「僕らの地球をまもる森と海」今年四月の仙台市の輪王寺の植樹祭で配られた物だが所用で筆者参加できず、この日が初めての鑑賞。筆者の入室前には親子連れ二、三名、その後数組の親子が入って来るも観客は十人いたかどうか。
 内容。海の異変に気付いた少年と海斗が山林に調査に出向き、そこでヒメラニアン帝国の環境破壊工作を目撃する。少年の願いに応えて森の伝説の英雄・植樹マン出現、海斗と共にヒメラニアンを退治(木の苗等に変えてしまう)。物語の後に植樹の専門家の講義があるが、当日上映のDVDと海斗ウェブで公開中のダイジェスト版では出演者が異なる。海斗の出番は多いもののDVDの題目が植樹なので、植樹マンの企画に海斗が参加したものであろう。上映時間は二十分。
 一度中瀬から出る。粟野の橋通り店のシャッターが下りて看板も外されている。
 八幡家。かば焼き定食で飯のお替わり、茶わん蒸し、茶そばで三千七百円。普段の数日分の食費を一回の食事で使う。一時間以上かけて食す。
 十四時、再び中瀬に入る。館北側にてシージェッター海斗ヒーローショー。内容は毎度の「音波兵器篇」。その幕間にこれもいつもどおりミャーガノイド養成教室、そのBGMは何故か「8人ライダーVS銀河王」。舞台上のミャーガノイドが環境破壊の志願者を募ると最前列で見物中の「海斗の面を着けた少年達」が一斉に元気よく挙手、これには観客の間から苦笑が漏れる。ミャーガノイドは「海斗のお面なんか着けてる奴は駄目だ」と言って、結局父と息子の二人組が挑戦。
 ショー見物の後、企画に入る。第34回特別企画展「太田隆司ペーパーアートの世界展」【FIRST STAGE 日本の情景〜情緒あふれる日本の表情〜】九月二十二日(土)から十一月十八日(日)まで。今まで多忙で会期末近くの参観。
 一種の貼り絵だろうか、紙を部品の形に切り出し、貼り合わせて情景を作り上げるのだがこれが実に立体的に作られている。展示に顔を近づけたり横から見たりすればよく解る、作品自体はそれほど厚みは無く、遠近法や紙を丸めたり反らせたりして立体感を出している。建物や人々の群像等が細部まで作り込まれて、見事な作品群である。副題から察せられるように今回も「昭和の風景」、一体萬画館は何度目の「昭和」だ。
 BZ混雑中にて入店せず。一度館を出て南下、作田嶋神社参拝。
 館の南側の公園では人のいない時は鳥の群れが広がって遊んでいるし、犬を散歩させる人もよく見掛ける。二階から入館すべく通路を上がり始めると何か褐色の物体が草の上をもそもそと動いている。体長四、五十センチメートル程の亀、飼い主に連れられて来ているのである。見覚えのある種類の亀なので飼い主氏に尋ねればケヅメリクガメ、そこで筆者が「この間映画になった」と言えば何と向こうもガメラ愛好家。「小さき勇者たち」のトトはこの種類の亀である。筆者はこの日たまたま「大怪獣空中決戦」の時のガメラ帽子をかぶっているのでそれを示して意気投合、「レギオン襲来」の話等で盛り上がる。亀は動き回りながら黙々と草を食べる。そこへ筆者以外にも公園で遊んでいる人達や犬の散歩中の人も集まって来る。亀の生態についての人々の質問に回答する飼い主氏、その彼も他の人の連れている犬をだっこさせてくれ等と言うことになって、付近は動物ふれあい広場の様相を呈する。
 館一階では「組曲仮面ライダー」が聞える。墨汁一滴近辺を見回してみても「お詫び」等の貼り紙は見当たらないし、営業は平常どおりのようである。数人の関係者に尋ねても、今般の報道について店頭で表示したのかどうかよく判らない。さすがにレジに直接訊こうとまでは思わない。ウェブでの「お詫び」は十月二十七日に掲示されて十一月五日には削除されていたのを確認している。
 十六時頃、やっとBZ入店。例によってコーヒー一杯のみ。
 実はこの日は「仮面ライダーTHE NEXT」パンフと「宇宙船別冊仮面ライダーBLACK」を持参、八幡家とBZの女性達に見せてみる。どうしても女性達からは「いい男」「かわいい」等と言う感想が出て来る。そして彼女達が目ざとく気付く#1のホモ場面。
 珍しく次の訪問予定日を告げて十七時に辞去、十四分に小牛田行きに乗って十九時四十四分着。

 海の海斗と陸の植樹マンの共演は愉快だが、植樹マンの敵役・破壊女王アナベラが二年前の中瀬の植樹祭以来姿を見せていないのが残念ではある。ああ、麗しの女王今いずこ。
 企画は萬画館では今までにない種類の展示。二次元の絵ではないし、彫塑ともまた違う。あまり見る機会の無い種類の芸術だと思うので会期後半も楽しみだ。
 海斗の面を着けながら環境破壊に参加しようとする、或る意味この無節操が日本の国民性を象徴している。

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