「石森萬画館」第四十六回訪問記

平成十九年三月十七日(金)

 今回は仙台市から石巻市に移動する。仙石線十時二十一分仙台発、十一時四十六分石巻着。途中、鹿妻でマンガッタンライナーとすれ違う。あおば通を利用することは滅多に無い。
 定例どおり八幡家を目指すもこの日は予約客の貸し切りで入店できず。素通りして中瀬に入り、作田嶋神社参拝。
 天気はいい。少し風がある。
 公園から館の二階に接続する通路が妙に汚れている。恐らく鳥の糞。ここの掃除は誰の管轄だ。
 BZ直行。当然ながら昼食もここで、久方振りの「BZの逆襲」。カレーライスと食後のコーヒー。時間をかけて、カレーライスに立てられた旗を倒さぬように喰らう。板橋社長来店、後述の鬼太郎トーストセットを食す。
 第32回特別企画展「水木しげるとゲゲゲの鬼太郎展」この日からから六月二十四日(日)まで。妖怪漫画の第一人者にして今や本人が妖怪化している水木。さまざまな媒体に展開して長い歴史を持つ「鬼太郎」、四月からは五度目のテレビアニメ化と実写映画公開。実に時宜を得た企画である。
 「鬼太郎」についてはいろいろ思い出や思い入れがある。幼少時にテレビシリーズ第二部(野沢雅子のカラーアニメ)の再放送を見ていた記憶があるが、何と言っても吉幾三の第三部世代人である。そして第四部(松岡洋子)の頃はパソコン通信の電子会議室でいろいろ議論をして、その時に知り合った数人とは今も付き合いがある。また、水木しげるの展覧会は過去に秋田県で一回、岩手県で二回見て、水木本人は一回見たことがある。確かに彼は妖怪だった。
 よく石森施設で水木展が開催できたものだと筆者は少し驚いている。何故なら、今の水木は何かにつけ生前の手塚治虫と石森の「徹夜自慢」を揶揄して、この両者にあまりいい感情を持っていないのではないかと思われるからだ。手塚治虫文化賞受賞の際にも「賞金が欲しいから受賞した」等と発言している。或いは個人的感情と商売は別か。
 それと水木についてもう一つの不審点、それは水木は漫画や文章で栄典制度を皮肉って来たくせに、自身は褒章を受けていると言う事。
 話題を今回の展示内容に進める。「鬼太郎」については漫画に於ける登場人物の解説が主で、鬼太郎の正義のヒーローとしての面だけでなく、いかがわしい部分についても紹介されている。漫画一話分の原画展示は「あなぐら入道」のみ。上映ビデオは第一部(白黒アニメ)から第四部までのオープニング、エンディングの繰り返し再生と言う芸の無い物。その他水木の人生の「絵巻」や昭和四十年代以降の鬼太郎商品、漫画に於ける鬼太郎の姿の変遷、テレビアニメのキャラクター設定画、妖怪銅像等。水木と石森の関係についても一切触れられておらず、特に今回、水木本人から「言葉」が寄せられたわけでもないらしい。アニメ第五部については四月から放送開始と言う貼り紙だけで、ポスターやパイロットフィルムの類は一切無い。
 また外に出て公園を歩く。小学生の男子三人と女子一人が野球をしている。その女子は決して上手ではないようだが皆と仲良く遊んでいて、彼女を罵る男子はいないのでバッファロー怪人の出番は無いようだ。筆者が川辺を歩きながら口ずさむのはいつものあの歌、仮面ライダーは君達の味方だ。
 BZ。期間限定の鬼太郎トーストセット、六百円。トースト二枚、鬼太郎柄の缶ジュース、サラダ、目玉親父の飴。トースト二枚のうち一枚には鬼太郎の絵が焼き付けられていて、もう一枚は目玉親父、ネコ娘、ビビビから選べる。この日の一番人気はビビビで、ネコ娘が不人気だと言う。
 何度も企画に出入りし、また館内を徘徊する。企画に熱心に見入っているのはやはり青年層以上。怖がって帰りたがる幼児は正しい反応なのか。初日は大入りとまでは行っていないようだが、第五部の放送が始まって子供達に「鬼太郎」が広く知られるようになればまた客の入りも変わるだろう。
 館の玄関から入って真正面にテレビセットが設置されて劇場版の特報と二種の予告編が上映されている。結局今回館内で見られた新作映像は劇場版関連のみ。しかし近場の上映館の案内が全くないのでそこは職員に指摘しておく。まだ第五部については展示できる素材が来ていないのだと言う。入ったらウェブで知らせると言うのでそうしたらまた見に行こう。
 十六時半頃辞去。すぐ駅に向かい、十七時十四分の出発で水沢帰着は十九時四十四分。

 二年前の全国巡回展「OH! 水木しげる展」との差別化はされているが、やはり展示会場の規模が違うし(OH! の岩手県会場は県立美術館)、こちらの方が展示内容に深みが無い。漫画原稿が一本分だけとは何とも寂しい。やはり敢えて水木の石森に対する言動は表示すべきだと思う。
 萬画館にしては珍しく新作アニメ、映画にちなむ展示なのだから、前述のとおり新作アニメの資材が入り次第、展示して欲しいものだ。

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