「石森章太郎ふるさと記念館」第四十二回訪問記

平成十九年四月十四日(土)

 新年度最初の宮城県訪問。
 八時半頃、マシンで出発。昨夜が雨、出発時は雨は上がっているものの路面は濡れている。出発から十分ほどで雨が本降りになり、鞄から雨具を取り出して着用してからまた走り出すが走行中に雨は止み、国道三百四十二号線に入る頃には晴れ上がってしまう。また脱ぐのも面倒だからそのまま走行する。特に渋滞等も無く、一時間半弱で現地到着。北側の駐車場にマシンを置いて本館直行。
 エントランスに友の会会員証と年会費二千円を差し出して更新手続。すぐ企画展示室に入る。
 第23回特別企画展「ウルトラマン漫画・アニメ展」四月七日(土)から七月八日(日)まで。初日から一週間遅れでの参観。
 「ウルトラQ」以来、言うまでもなくウルトラシリーズの本流はテレビ特撮シリーズだが、テレビ以外の媒体、特撮以外の表現形式での作品も数多く存在する。今回は本流から見れば二次的、傍流の部分の特集である。今まで筆者は岩手県でテレビシリーズ主体の展覧会、福島県で円谷英二生誕百年記念の展覧会、青森県で初期ウルトラシリーズの美術監督・成田亨の展覧会を見たことがあるが、今回のは過去に見たいずれとも異なる。
 「随想・雑記」でも少し触れたとおり、元々筆者は仮面ライダーシリーズよりもウルトラシリーズこそなじみがある。純正第三期世代人、即ち幼稚園年長組で「ザ☆」、小一で「80」。物心つく頃から割りと第一期や第二期の再放送の機会に恵まれ、「Q」も幼稚園児の頃に見た記憶がある。平成初期、十代後半の頃はNHK・BS2での放送をS‐VHSで録画して自分なりの「傑作選」を作って楽しんだ。セルソフトの所有も仮面ライダーシリーズよりウルトラシリーズの方が多い。「USA」は筆者が初めて自分の小遣いで映画館に見に行った映画である。
 展示の紹介。漫画の原画展示は順路の順に高田裕三「THE FIRST」、内山まもるの小学館雑誌(コロコロコミックや学年誌)掲載作品、一峰大二の「ぼくら」掲載作品。どれも筆者は初めて見る。それぞれ作風が違って面白い。特に一峰版「セブン」の最終回ラストに興味を惹かれる、テレビとは若干異なる内容。
 展示の圧巻はやはり「ザ☆」と「USA」の立体展示である。両作品それぞれの着ぐるみジオラマ展示、ジョーニアスとチャック、スコット、ベスがそれぞれ怪獣相手に戦っている場面。これが実に世代人として感無量。単発映画だから知名度が低いのは当然な「USA」、そして何より本来シリーズ正史の一作品でありながらアニメ故に各種の公式な「大集合」「総集編」等の企画で除外されることが多く、全話収録商品も十年以上前のLD‐BOXのみで今や鑑賞自体困難な「ザ☆」が室内の大きな区画を占めて堂々と鎮座しているのである。心で泣く。これら両作品の台本やパンフレット類もガラスケースに陳列されている。
 以上は巨大変身ヒーロー作品。それ以外のアニメ作品も展示されている。各種の「ウルトラマンキッズ」の紹介パネル、台本、絵本、「ウルトラニャン2」「ウルトラマンМ78劇場」のセル画等。「ニャン」も一応「変身且つ巨大化」か?
 海外で出版されたウルトラ漫画本。いずれも現地人が書いたものであろう。中国語版は「宇宙英雄奥特曼ウルトラマン」。場面や台詞から察するに「さらばウルトラマン」。品物自体が粗末な出来、絵柄は垢ぬけていなくて昔の日本の漫画のようだ。「TOWARD THE FUTURE」は「G」の事、アメリカコミック風の洗練された筆致である。
 今回の展示の目玉として館が強調しているのが、平成五年のバンダイビジュアルのビデオ「ウルトラマンVS仮面ライダー」。当時は「ウルトラマンG」「仮面ライダーZO」が最新作。ビデオ全体としては両シリーズ(但し「ザ☆」の映像は除外、音楽だけ使用)の名場面集である。その中から、当時の円谷プロ社長・円谷皐と石ノ森章太郎の「巨頭対談」と短編作品「スーパーバトル」が上映されている。「巨頭対談」は両者(共に故人)が両ヒーローの誕生秘話や今後の展望等を語り、互いを讃え合っていつか一緒に仕事をしようと言って握手するという内容。「スーパーバトル」の内容は敢えて書くまい。知る人ぞ知る問題作、まさに一発芸。説明展示によれば、このビデオは著作権の問題から再販、放送はしないという条件で作られたという。
 ふるさと記念館ではいつものことだが、全体的にただ素材を並べるだけで説明不足である。セル画を何枚も並べてもあれだけでは「ウルトラニャン」とは何なのか全く解らない。また、「漫画・アニメ展」と言いつつ、何の脈絡もなくウルトラ兄弟の写真パネルも貼ってある。ティガの人形もあるしふと見上げればハネジローの人形までぶら下がっている。入場者プレゼントの賞品はネクサス、マックス、メビウス、そして何とノアのサイン色紙。そして大風で建物が揺れれば天井から破片が落ちて来る。もう企画展示室内、或いは今回の企画自体がアンバランスゾーンである。
 蔵楽。実は昨夜から何も喰っていない。まず牛丼を平らげる。書籍や文具等、ウルトラ商品販売中。買わぬ。「電王」のテレビ未登場第四のフォームの人形が売られている。
 そして生家。小野寺おっかさんと正午前くらいまで会話。
 本館の客の入りはそれほどでも無い。「メビウス」を見ていた幼少児が喜ぶ内容でもないし、寧ろ萬画館での「ジャッカー電撃隊」「真ライダー」のように「何これ知らない」と言われても仕方ない作品群である。まして「ミライ君」目当ての女性客にでも来られたら目も当てられない。やはり五月連休のウルトラヒーロー握手会が集客の勝負だろうが、これもどのウルトラマンが来るか、気になるところだ。G、パワード辺りが来てしまったら喜ぶ人は喜ぶだろうが。
 久方振りに山形県の常連氏と会って、蔵楽や企画室内で話し込む。第一期世代人の彼は今までアニメ作品の存在自体殆ど知らなかったようで、「アニメのウルトラマン」に対して驚きと違和感を隠せない。彼は「やはりウルトラマンは特撮」と言うが、筆者は「アニメだからと作品の存在を無視、抹殺するな」と主張する。これが世代間対立である。小野寺おっかさんも参観。
 よりによって成田亨著「眞実」を持参して蔵楽で店員女史や常連氏に見せる。今回の大多数の展示品の時期は前述の円谷皐社長の時代。成田が口を極めて罵った皐路線の極致がここにある。尚、成田は同著で仮面ライダーのデザインを「不潔」と評している。
 新年度着任職員・只野氏から挨拶を受ける。本宮館長か熊谷副館長を捕まえて一席教えを垂れてやろうと思うも両者とも所用で不在。それこそ「眞実」を見せたかった。
 蔵楽で更に天ぷらうどん、ブルーベリーアイスクリーム、りんごジュース。
 十四時半頃辞去、帰りは全く雨に当たらずに自宅まで帰着。

 誰でも知っているウルトラシリーズ、その知られざる一面。今回ほど対象が限定されそうなウルトラシリーズ展示も珍しいと思う。繰り返しだが、ウルトラシリーズの漫画やアニメは元々二次的な存在であり、愛好家や時に制作側からも「のけ者」にされることもあった作品もある。必ずしも一般受けではない、或る意味ではこれぞ「通」向け、ふるさと記念館にふさわしい展示かとも思う。
 第三期世代人としては、「アンドロメロス」の展示が無かったのは画竜点睛を欠くの感を否めない。小学館の学習雑誌を熱心に読んでいて、メロスの正体が明らかになる辺りは興奮したものだ。
 それと、「漫画・アニメ展」と言いながら「アニメの上映」が無い。それこそ「ザ☆」でも上映すればいいのに。

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