「石森萬画館」第四十四回訪問記

平成十八年十二月二十三日(土)

 こちらも久方振りの訪問である。
 水沢九時十一分発、石巻着は十一時四十六分。曇天。
 石巻立町局のATMで資金調達をしようとしたがこの日は祝日、ATMは休みである。さくらの百貨店四階のATMを利用する。この建物の映画館マイカルは一月八日で営業終了、「おめでとう岡田劇場」と言うべきなのか。
 八幡家。今回もかば焼き定食、飯お代わりと茶わん蒸し、三千百円。紀代子女将と多少会話。
 満腹で多少足元がふらつく。十三時過ぎに中瀬到着。
 館北側の広場で海斗ショー。司会は003アテンダント二人、登場人物は順不同で海斗、楽天のクラッチ、支倉常長、サンタクロース、ミニスカトナカイ、ヒメラニアン帝国のアバローニャ、クラブアビシス、ミャーガノイド二人。クリスマスを妨害しようとするヒメラニアン帝国が石巻市に立ち寄ったサンタクロース一行に危害を加えるが、海斗、クラッチ、常長の地元三大ヒーローが撃退すると言う筋書き。暫く前に野球場でのショーに初登場した女性幹部アバローニャ、最近中瀬にも登場するようになって筆者は今回初めて見る。着ぐるみではなく顔出し、中国風の髪型、短いチャイナドレスに帯締めて網タイツ、左足だけ黒い靴下、黒い扇を持って目の周りをパンダのように黒く塗っている。声はアバローニャ役本人ではなく萬画館職員がテントの中から生で当てる。ミャーガノイドが蹴散らされて三大ヒーローが残るアバローニャ一人を攻撃する場面はまるで「太陽戦隊」。アバローニャはヒーロー達と格闘で互角に渡り合う。
 プレゼントを配布して、一時間弱でショー終了。ショーの登場人物達がとぼとぼと館に戻る。クラブアビシスとミャーガノイド一人が肩を組んでスキップして行く、実にいい光景だから写真を撮ろうとすれば海斗が筆者の前に飛び出す。邪魔しやがって。
 南下。館長室の窓が開いていて中からショーの出演者達と思われる声が聞えるが、さすがに窓から覗き込むようなことはしない。鴨の群れが公園の芝生の上に広がっているが筆者が近付くと順次飛び立って川面に移動。作田嶋神社参拝。
 二階から入館。BZで例のコーヒー一杯。店内混んでいる。
 第30回特別企画展「昭“和”のこころ」九月三十日(土)から一月八日(月)まで。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」と昭和三十年代回顧。これもまた会期末近くになってからの参観である。
 相変わらず全国各地で開催されている「昭和三十年代賛美」の展覧会、萬画館でも二度目。しかし三十年代ばかりが「昭和」ではない。何より、昭和三十年代とは本当に夢と希望ばかりで非の打ち所の無い、理想的な時代だったのか。年表を繙けば、水俣病公式認定、ハンガリー動乱、ダライラマ亡命、安保闘争、浅沼稲次郎刺殺、キューバ危機、JFK射殺、いずれも昭和三十年代の出来事である。また、戦前戦中の暗黒時代と平和憲法下の戦後民主主義時代を「昭和」で一括することに反対する意見もある。
 企画に入るとすぐ、昔の茶の間の再現が設営されている。白黒テレビが何かを映している。ガラスケースに駄菓子屋の商品等が入っている。
 何故あの時代を「昭和」と言うのか。それは当時の元号が「昭和」だったからである。前述の茶の間の次に掲示されている「昭和」元号の由来についての文章で、中国古典「書経」の「百姓昭明、万邦協和」が出典であると説明しているのは誤り。確かに「書經」だが後の句は「協和万邦」が正当、厳密には「万」は「萬」。「昭和」の「昭和」たる所以である元号の出典の誤り、これだけで今回の特別企画展の筆者の評価は「0点」である。この件については帰宅してから萬画館の担当者にメールで指摘。向こうからは平謝り、すぐ訂正する旨の返事が来る。尚、「百姓」は漢文では「ひゃくしょう」ではなく「ひゃくせい」と読む。「百姓」を農民の意味で使うのは日本独自。
 もう少し進むと「三丁目の夕日」の展示。パネル、宣伝映像、建物の模型、西岸良平の原作漫画の原画。
 常設の原画展示は石森の「青い月の夜」「キングアラジン」「どろんこ作戦」と西岸の「子守り唄」。「青い月の夜」が良い、「差別表現についてのお断り」のような野暮な物は無い。
 先程のショーの観客はそれほど多くなかったし展示室内も閑散としているのにBZだけは妙に混雑して、何とか再入室してココア一杯は飲むものの店員達とは全く会話できず。BZで会話しないで帰るのも珍しい。
 十六時半頃辞去。
 粟野蒲鉾店で知人宛に「サイボール・ゴボウレンジャー」発送を頼む。
 十七時十四分石巻発、十九時四十四分水沢着。

 筆者は今まで石森両館の特別企画展をどれだけ酷評しても絶対評価で「0点」と断じたことは無かった。しかし今回は「昭和」の何たるか、その根幹自体が解っていないという失態を演じていたので担当者に「0点」を言い渡した。「入り口」からして誤っているのだからその後でどんな展示品を見ても評価にあたいしないし、担当者の力量について今後当分は信用も期待もしない。萬画館よ恥を知れ。

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