「石森萬画館」第四十三回訪問記

平成十八年九月十六日(土)

 歌手のライブ企画第三弾、トリは串田アキラ。その見物記である。
 思うところあって七時六分水沢発に乗る。一関乗り換えを経て小牛田で快速南三陸1号に乗り、最後に前谷地で普通列車に乗り換えて十時十六分石巻着。遅れ無し。石巻市、曇天。
 情報は得ていたが前回は行きそびれていた旧墨汁一滴跡地。建物が取り壊されて更地になっている。「虎の穴」が出て行ってから数年、遂に借り手はつかず。
 中瀬。館の北側の広場にライブの設営が行われている。今回のライブ、天気が良ければ屋外で、雨の場合は正午より整理券を配布して映像ホールで開催という予定だが屋外で開催の様子である。早くも場所取りの連中もいる。
 作田嶋神社参拝。
 入館、勿論BZ直行。コーヒーとスパゲティー。二週続けて石巻行で八幡家に行かない、BZ大逆襲。
 まだ時間がある。企画を見る、四度目。室内三ヶ所にビデオセットが設けられ、それぞれ仮面ライダーシリーズ、「ハリマオ」を含むヒーロー作品、不思議コメディのオープニング、エンディングを流している。「BLACK」のは何故か#2。テレ朝ライダーの「アギト」以降は所謂ノンテロップ、細川茂樹のみならず全員の名前が無い。「見よ! ゴレンジャー」は歌ではなくコーラス付きの演説だと思う。「真」「ZO」「J」「平成ハカイダー」「ボイスラッガー」の映像は無い。
 展示されている実物大仮面ライダーの頭に埃がたまっている。
 十三時頃にはライブの会場に立つ。前の方には陣取らず、道路に面した柵に寄りかかる。直前になって少し雨が落ちてくる、館は急遽テントを建てて傘を貸し出す。筆者はテントの中に鞄を置き、自身は折り畳み傘を差す。
 十四時からライブ開催。今回も司会はショッカーO野。
 串田アキラ、一時期晃を名乗る。彼も東映特撮の常連、筆者の世代では「太陽戦隊」「宇宙刑事」「キン肉マン」が忘れがたい。メタルヒーローで一番多く主題歌を歌ったのは串田だ。
 曲目。

 「ジライヤ」「ジバン」の頃は晃だった。今回は石森プロの社長や「ZX」の平山亨プロデューサー、そして「『マシンマン』のプロデューサー」等業界人も多数来場。「ドラゴン・ロード」の所でO野に促されて平山が「ZX」の思い出話を語る。「STAND BY ME」はリズム&ブルースの歌手として七分間の熱唱、感想を求められた客席最前列の「群馬のアメリカ人女性」が「スゲー」と賛嘆。「キン肉マン」は串田によるスグルの物真似つき。富士サファリパークのCMは関東地区のみだが同園のウェブでも視聴できる。
 七月のMoJo、先週の宮内、そして串田と、三人とも「ボウケンジャー」の歌を歌う。
 ライブの間は天気は辛うじてもつ、本降りには至らぬも晴れはせず。
 再びBZ。店の人々相手にライブの興奮を語る。
 今回も企画展示の不備をいくつか指摘したが最後の見物で気が付いたのがこれ、「ネムリン」の説明文で「太古」ならぬ「太鼓の生物」。響鬼さんかよ。
 実に満足、上機嫌で石巻駅に向かい、十五時十四分の小牛田行に乗り、水沢帰着は十九時四十七分頃。また三分ほど遅れる。

 MoJoは館内映像ホールで事実上出入り自由、宮内は同じく映像ホールで要整理券、串田は屋外。三回共開催形態が異なるが、今回の串田の方式がいいと思う。そもそも映像ホール自体が狭くて息苦しい。また、MoJoの時には途中退席の家族連れが興をそいだ。当日の天候の問題はあるが、屋外が一番いい。次善で室内開催なら混乱回避の為に整理券はある方がいい、その配布は年間パスポート所有者を優先して欲しい。
 CM作曲家・MoJo、ムード歌謡・宮内、リズム&ブルース・串田と、各人の特撮・アニメ以外の面に注目したのは良かった。普段なかなか機会が無い、珍しいものを聴けた。
 改めて思う、テレ朝ライダーや今時のアニメの主題歌は果たして将来「懐かしのアニソン」になれるのか。今の子供達が大人になった時、それらの歌がまだ彼等の記憶に残っているのか、また、その歌手達も再びその歌を歌うことがあるのか。末永く記憶に残り、歌い継がれること、それが歌の生命だと思う。百回近く「原作者ゆかりの地」を訪問している筆者でも「テレ朝ライダーの主題歌を歌っている子供」は見たことが無い。その一方でavex modeを全否定するつもりも無い。「のび太のワンニャン時空伝」を映画館で見た時は場内の少女達がエンディングで「YUME日和」を大合唱、映画よりも寧ろこの大合唱に感動した。
 今般の特別企画展について。筆者の口癖「量も質のうち」、まさに今回はこれだと思う。前述のとおり「網羅」この一言に尽きる。展示内容の細かい点にケチをつけられないこともないが、とにもかくにも全実写作品を揃えたのは快挙である。石森作品の看板たる仮面ライダーシリーズでも、第二期やバンダイビジュアル三部作のように、知名度が低くて普段あまり言及されない作品は存在する。今回、「日陰者」の作品にまで光を当てたのは素直に褒めてやろう。「マシンマン」「バイクロッサー」「平成ハカイダー」「ボイスラッガー」(年代順)は萬画館常設のビデオでも紹介されていないのだ。
 旧墨汁一滴の建物はオイスタンプラリー以来、筆者とマンガランドの付き合いの出発点であり、室内の壁の漫画家サイン等、建物自体が貴重な遺跡だっただけに何とか活用法を見出して欲しかったが、実に残念な結果になってしまった。

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