「石森章太郎ふるさと記念館」第三十九回訪問記

平成十八年十二月九日(土)

 新たな特別企画展が始まればなるべく早目に見に行くのが定例だが、ここ暫く忙しくてなかなか出向けず、この時期になってからの訪問である。
 登米市役所のウェブで市民バスの時刻を確認してから出掛ける。分厚く着込んで水沢発七時六分の一ノ関行に乗り、三十一分着。二十九分間の待ち時間を経て八時丁度の仙台行に乗って石越着は八時二十二分。車内から白鳥の群れの飛行を見る。寒々とした空。
 十月のダイヤ改正で土日のバスは一日二本。それを待つ間、JRの駅待合室で読書をしたり、向かいの「くりでん」石越駅の周辺を見て回ったりする。停車中の車両の写真を撮り、発車を見送る。
 石越局ATMで資金調達。
 九時十九分の市民バス。珍しく途中で客が何度も乗車する。
 二十分ほどで記念館前に着く。例によって生家に入って小野寺おっかさんと歓談。前回の訪問から四ヶ月が空いて且つ企画展会期も後半に入ってからの訪問、案の定現地では筆者の身を案じていたと言う。
 蔵楽入店、西條女史掃除中。まだ飯が炊けていないと言うので食事は後回し。棚に装着変身EX「BLACK」と「RX」を見つけて、「BLACK」のみレジに渡す。会計は食事とまとめて後で。
 本館。第22回特別企画展「青山剛昌と名探偵コナンの世界展」十月十四日(土)から一月十四日(日)まで。長期連載漫画、長寿テレビアニメの特集。
 作品の絵柄や、原作者とアニメの主演声優が夫婦と言うこと程度は知っているが、作品自体は全く見たことが無い。エントランスで「『未来少年コナン』と間違えて来た人はいるか」と尋ねれば「いました」とのこと。やはり。
 展示されているのはカラーの複製原画。ページ毎に詳細な技術解説が付されている。劇場版のパネルや、「コナン」以外の作品の原画も展示。室の中央で小学館のオリジナルビデオ上映中。
 常設では「チョビン」原画入れ替え。「日本の歴史」の卑弥呼の絵。その絵の背景の漢文(所謂「魏志倭人伝」)は読めるが、ライブラリーに置いてある台湾の新聞の中国語は読めない。
 とうとう雪が降って来る。職員が暖炉に薪をくべる。事務室で熊谷副館長と長時間話し込む。そして珍しくエントランスの連中とも会話。大体、萬画館のアテンダントの人気は衣装によるものであり、人間自体で勝負すれば容姿も上品さもふるさと記念館の職員の圧勝だ。萬画館のウェブの掲示板には職員の勤務、接客態度についての苦情書き込みが年に数回はあるが、ふるさと記念館では皆無である。
 エントランスに置いてある無料雑誌「MM」創刊準備号。その中のインタビュー記事で「やなせたかし」曰く「力道山やスーパーマン、月光仮面といった正義の味方は、誰一人として、ひもじい子どもを助けたりしないんですね」。世間は人それぞれに役割と言うものがあるのだから「やなせ」の理屈で力道山達があれこれ言われる筋合いも無いとは思うが(逆に「アンパンマンが『ばいきんまん』一味を滅ぼしもしなければ改心もさせられないから連中の悪事も収まらない」と言えないこともない)、これに相当する事をしているのは元横綱大鵬の納谷幸喜氏と現在の藤岡弘、か。五代雄介なら世界中の旅先で困った人を助けたり手伝ったりしていそうだが、乾巧や天道総司は多分そんなことしないだろう。
 常設の入り口の脇に「ハイパーホビー」付録のポスターが張ってある。歴代ライダーやタイプ等の違い、タックル、シャドームーン、G3シリーズ、オルタナティブ等、実に百種類を越えている。増えたものだ。
 蔵楽。新メニューのエビフライランチセット、千円。実にうまい。そしてまた棚を見れば装着変身EXの「シャドームーン」と「バトルホッパー&アクロバッター」に気付く。前者は今日入荷したとの事。こうなれば「RX」も含めて四点とも購入だ。石森局の生体認証対応ATMで資金調達。
 デザートに花そば。食事と装着変身、全部で一万千九百円。
 十二時五十八分のバスに乗るつもりでいたが、熊谷副館長が遠来の客を石越駅まで送るのに便乗することにする。
 もう一度企画を見る。客の入りは良いと言う、確かに親子連れが入っている。しかし物理的に室にもう少し展示物を詰め込めるはずだ。展示物は壁面のみ、室内中央にはテレビセット。
 十三時四十分頃、館の自動車で出発して石越駅まで。雪のような雨のような、嫌な天気。
 すぐ十四時一分の一ノ関行に乗って二十三分着。もし十二時五十八分のバスに乗っていてもこの電車を利用することになる。また一ノ関での待ち時間が一時間四分で、十五時二十七分に盛岡行きに乗って五十分水沢着。石越で一つ遅い電車、十五時丁度の便に乗っても水沢着は同時刻。いずれにしても、バスとJRのダイヤが全く連絡していない。往復の移動にかかる時間の半分は待ち時間。

 往々にしてふるさと記念館の特別企画展は素材の羅列に終わっているものが多く、今回のように読み応えある解説付きの企画展は珍しい。作品人気だけに依存するのではなく、工夫ある展示に期待する。
 装着変身EXの箱には「劇中の人物とは無関係」と書いてあるが、倉田や堀内に少しは似ている。

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