「石森萬画館」第三十六回訪問記

平成十七年十二月四日(日)

 積雪深き水沢市、定例の九時十一分の上り列車。石越辺りまでは一面の雪景色、小牛田から石巻線に入ると更に雪が少なくなって十一時四十六分に石巻市に着けば雪は全く無い。やはり積雪には縁遠い港湾都市、曇天。
 八幡家に直行するも臨時休業の貼り紙、落胆しつつ中瀬に向かう。萬画館では十二時の仕掛け時計出現。
 中瀬の東南端に何やら新しい食堂のような建物が出現している、それに行こうかと一瞬思うがBZへの義理がある、行かない。作田嶋神社参拝。
 十一月十三日の植樹祭の現場を訪れる。何本かの苗木が育っているが筆者の植えた苗かどうかは判らない。果たして一人前の木にまで成長するのは何本か。
 萬画館二階から入館、そしてBZ。八幡家休みにつき昼食をここで喰う。たらこスパゲティーとピラフとコーヒー。たらこスパゲティーはキャンペーン中にて籤引き実施中、はずれ。
 店の人々と歓談。「萬画館とふるさと記念館の混同」ネタは本当に尽きない、両館存続する限り永遠の問題。遠方の人にしてみれば両館共「仙台にある」程度の認識だろう。尤も、筆者の周辺にも「甲子園球場は大阪にある」と思っていた人や、神奈川、埼玉、千葉の三県を「東京」と呼ぶ人はいる。
 二階企画の受け付けの商品販売は撤去されている。もう何巡目だ、また室内を見る。「みやぎキャラクター大図鑑」本当に何度見ても飽きない、数多くのキャラクター。章太郎を含むプロによるものから実に地方色豊かな代物までいろいろ。「ブータンのホルモン焼」のテレビCMが今はアニメになっていたのか、勉強になったぞ。そのブータンのCMソングと「メガネの水晶堂」のナレーションが共に富田耕生、何か宮城県に縁があるのか。小林亜星にも来場して欲しかった、彼の本業は弁当屋だと思っている仙台市民がいる。
 二階から一階に降りる途中、北側のガラスを外側からコンコンと叩いて筆者を呼ぶ人。見れば狩野、大森両氏が壁面に電飾を設営中。筆者も外に出て少し会話。
 今回の訪問目的、十三時半から館の玄関前に本日の着ぐるみ登場。館長室から出現して佐久間女史の介添えでよたよたと歩く東北電力のマカプゥ、館の前の道路に自転車ビシャクロン号で颯爽と登場、仙台市荒町商店街のドラマチック戦士アラマチマン、そしてシージェッター海斗。マカプゥとアラマチマンの様子を館内から見て墨汁一滴店員とアテンダントが二人で腹を抱えて大爆笑、主催者側がウケてどうする。
 伊澤女史の司会で三択クイズ大会、この回答者の子供達が「アラマチマンは五十歳」「海斗の乗り物はトラック」と迷回答連発。ところでこのアラマチマンは作りは貧乏臭いが見た目はよい、その真っ赤な体は海斗と並ぶとレッドアンドブルーでなかなか映える。デビューは海斗よりアラマチマンが数ヶ月早い。
 普通はヒーローショーのヒーロー自身(中の人)は喋らないものである。しかしながら筆者が「長町で『仮面ライダー THE FIRST』見ちゃったから私はアラマチマンの敵だなあ」と言えばアラマチマン大爆笑。解る人だけ笑え。
 一階北側の自販機の前でIHクッキングヒーターの実演、白石温麺うーめんを喰う。電気でも火力はガスに負けないのだと言う。
 クイズの後に握手・撮影会、玄関前の催し物は二十分ほどで終了。マカプゥは危なっかしい足取りで館内に戻る。姿や動きが何かに似ていると思ったら「あたしンち」の母だ。
 またも企画を見る。どこぞの中年男性団体客、マカプゥとバカボンを混同し、更に「天才バカボン」の原作者を手塚治虫等と言っている。世間の認識なんてそんなものだろ。
 三階の廊下壁面に、人権週間にちなむパネル十点ほどが展示されている。昭和四十五年頃に根本進その他によって描かれた啓発漫画。学校の部活動でのいじめ、近所の村八分、金融の暴力的取り立て、肖像権の侵害等、三十年以上も前に描かれたパネルの内容は全く古くなっていない。パネルが先進的なのではなく、我々が変わっていないのだ。
 BZ、噂をすれば和田社長出現。
 十五時半の回の着ぐるみショーも見に行く。事務室の出入り口前で控えるアラマチマン、海斗両雄を撮る。
 玄関前で着ぐるみ三体と館女子職員三人の記念撮影のカメラを持たされる、筆者は客だぞ逆だろうが。筆者がカメラを構えて「√4=?」と言うと「に!」とは言わず黙り込んでしまう職員達、ここの連中は数学が苦手なようだ。「2.…?」等と言っているのがいる。玄関から入館しようとしてマカプゥ転倒、決定的瞬間を撮り損なう。自販機前でマカプゥは他の客に取り囲まれて記念撮影、実に大人気。
 先程のクッキングヒーター実演で今度はフライドポテト調理中。それを食す女子職員達、芋姉ちゃんが芋喰ってる。その芋の香りが二階にも漂って来る。
 何度もBZや企画に出入りして職員達と歓談。つくづく今度の特別企画展は最高傑作だと思う、今後これだけの傑作が出て来るかどうか。BZでホットドッグを喰う。この日は「萬画大全集」勧められぬ。
 十六時半頃辞去。降り出しそうな雲行きだが何とか持ちこたえる。
 川の西岸、石巻商工信用組合の辺りから萬画館を撮る。日中に設営のクリスマス電飾、見事に輝く。
 十七時十四分の小牛田行に乗って十九時四十四分に水沢に着けば街の雪はだいぶ消えている。

 前回の訪問で破壊女王を見て以来、最早萬画館の女子職員達が全員、色褪せて見える。あの衣装が似合う人は萬画館にはいない。
 アラマチマンの格好よさ以上にマカプゥの人気が印象的ではあった。特にこれといった特技があるわけでもない、鈍重な動きの着ぐるみだがそこがいいのだろうか。
 今回の特別企画展についての賛辞は既に述べたとおりだが、萬画館よ、くれぐれも慢心するなかれ。いつもなるべく批判的に、努めてけなすように心掛けているのに今度ばかりは少々褒めすぎた。

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