「石森萬画館」第三十回訪問記

平成十七年三月二十七日(日)

 六時四十一分の水沢発上りに乗車、一ノ関で新幹線に、更に仙台で仙石線に乗り換える。途中、仙台行きのマンガ列車とすれ違う。石巻着は九時三十八分。
 ホームに萬画館の木村氏、本郷、山本両女史を見る。この日開催のマンガッタンライナー二周年記念行事の準備。
 駅構内に新しい跨線橋竣工。エレベーター付き。これもまた階段や壁面が萬画だらけである。式典開始前、暫しホームを徘徊して写真を撮る。見物みものは北側の階段だ。
 式典は十時半から、司会は山本女史。石巻小学校の鼓笛隊の演奏や石巻市長とJRの人の挨拶の後、テープカット、シージェッター海斗も参加してくす玉割り。海斗出現の時には詰め掛けた野次馬の間からどよめきが起きる。
 十一時過ぎにマンガッタンライナー到着。市長も自ら入国証を配る。
 海斗が筆者に対して撮影して欲しそうな素振りを見せるので一点撮影、その場でその画像を彼に見せると満足そうである。
 十一時半頃、ホームの式典終了。駅を出て中瀬に向かう。
 温暖な石巻市。今回の冬は三月に至っても雪が多く、水沢市にはまだ残雪があるのに石巻市には見当たらない。
 旧墨汁一滴は相変わらず空家のまま、連絡先を書いた紙が貼り付けてある。
 萬画館入館、BZで定例どおりコーヒー。今、市内で噂の「素敵な局長さん」に会う。壁に「石研」やまおか氏の絵画作品が展示されている。
 ネタとして期間限定「マジレンジャーカレー」を注文する。勿論子供向けの品目、あっという間に平らげてしまう。マジグリーンの人形が付いている。
 第21回特別企画展「スーパー戦隊ワールドin石ノ森萬画館」三月十九日(土)から六月十九日(日)まで。「秘密戦隊ゴレンジャー」から最新「魔法戦隊マジレンジャー」に至るシリーズ全体の特集。
 「戦隊」それは大いなるシリーズ、「戦隊」それは子供達の憧れ、「戦隊」そしてそれはヒーロー番組の王道。「ゴジラ」「ウルトラ」「仮面ライダー」各シリーズは何度かの休止期を経験しているのに対し、「スーパー戦隊」が「バトルフィーバーJ」以降は二十六年間も続いているのは手放しで賛嘆すべきことだと思う。しかしその一方で今以て「ゴレンジャーシリーズ」「ゴレンジャー物」と呼ばれたり、「ゴレンジャー」自体が何十年もずっと続いていると思っている人がいたりもする。全く興味の無い人にすればシリーズ二十九作品の全てが「ゴレンジャー」に見えるのだろうが、それの区別が付く人のことを世間ではオタクと呼ぶ。
 シリーズのうち、石森作品は「ゴレンジャー」「ジャッカー」のみ。両作品のデザイン原画や萬画が大々的に展示されている。モモレンジャーが当初は白だった等、デザイン画と完成作品との相違が興味深い。
 シリーズ全作品についてパネル一枚ずつで紹介している。「兄弟戦隊」「六人目の戦士」等の、シリーズ初の趣向を導入した作品についてはそれぞれ特記しているが、番組途中での隊員の交代についてはそれに触れた解説とそうでないものがあり、不統一が見られる。そういえば昭和期には度々見られた隊員交代、平成では無い。
 「パワーレンジャー」については「恐竜戦隊ジュウレンジャー」の解説で言及され、ビデオテープが一本陳列されているのみ。
 歴代ロボットの玩具は文字どおり羅列、ただガラスケースにごちゃごちゃと押し込まれただけで何の工夫も無い展示。今や近所のジャスコの「超星神シリーズ」の玩具もジオラマ仕立てで陳列しているのに。背景に富士山の大きな写真を張るくらい思いつかなかったか(超全集)。
 「変身小道具の変遷」のような興味深いコラムも掲示されているが、熱心に読む人は殆ど見当たらない。多くの見物客は写真パネルを見て「これ見てた」「これから見ている」程度のことしか言わない。
 複数のテレビセットでビデオ上映。ポピー、バンダイのCM集や各作品の主題歌集、遠藤正明とサイキック・ラバーのライブ映像。
 「爆竜戦隊アバレンジャー」と「特捜戦隊デカレンジャー」のマネキン人形陳列。撮影に使われたスーツかどうかは判らない。
 展示末尾の「おまけ」。全国各地で展開中の「御当地戦隊」の紹介、岩手県からは勿論「新幹線トレインジャー」! ダンスの解説まで展示されて、ひときわ扱いが大きい。今流行の「御当地ヒーロー」については営業や権利関係の問題で「本家」たる東映は監視の目を光らせており、実際に東映から物言いがついて中止になった例もあると言う。その点、我等のシージェッター海斗は関係各方面との調整の上で誕生した石森プロの正式なヒーローであり、「偽仮面ライダー」「御当地仮面ライダー」呼ばわりされる筋合いは無い。同格とまでは言えまいが、過去のヒーローとは別個の存在である。
 場内大変な混雑。この日は特に萬画館で特別な催し物やゲスト来訪があるわけでもないのに盛況である。但し家族連ればかり、上記のとおり「その筋の愛好家」は少ない。
 墨汁一滴で今更「爆竜」を並べたりして売れるのだろうか。
 館内の暖房が効きすぎて気持ち悪い。戸外の冷気が心地よい。作田嶋神社参拝。
 昼頃のBZはさほど混んでいなかったのがその後は大いに混む。木村店長以下総勢四人が動く。何とか空席に就いて、たらこスパゲティーとアイスココア。四品注文しても二千円に届かぬ、八幡家では一回昼食を摂ればすぐ三千円くらいにはなるのに。長居の割りに金額は大したこと無い、悪い客だ。ココア飲みつつ、店員達の背中をボーッと見ている。
 十四時頃辞去。
 粟野。笹かまぼこ十枚。
 和田社長。以前から「萬画館最強の隠し展示は和田社長」と言ってきたが、寧ろ「BZは和田社長の出張所」であるらしい。最近の話題は石巻市出身の弁護士・布施辰治。明治憲法下の時代に活動した所謂「弱者の味方」である。朝鮮にも渡った事があり、その時期が水沢市出身の朝鮮総督で、後に二・二六で暗殺された齋藤實さいとうまこと子爵の在任期間に当たる。水沢市の齋藤實記念館では、子爵は朝鮮に善政をいて朝鮮人から慕われた名総督として賞賛されているので、水沢市民としては「子爵がうまく治めている時に左翼弁護士がわざわざケチをつけに行った」と思える。果たして布施が子爵をどう思っていたのか、多少興味がある。
 十五時十九分の小牛田行で帰途に就く。東北本線に入った辺りで雨、水沢帰着時には雪。

 「特に大ネタが無ければ特別企画展初日や土日でも閑散としている」というのが筆者がよく見る萬画館の状態だが今回は違った。この一週間前の三連休も大入りだったそうである。
 特別企画展の派手さと薄さは予想の範囲内。撮影用の資材や、「バトルフィーバーJ」以降の作品のデザイン画等が見当たらなかったのが最大の不満。ヒーローのマスク、各種小道具、怪人の着ぐるみ、悪者の衣装等、残っていないのか。萬画館での開催だから石森原作二作品の原画にスペースを割くのは当然としても、「スーパー戦隊」はまず第一に「テレビ番組」なのだ。
 愛好家の目で見れば不満な展示だが、多くの家族連れ即ち「ゴレンジャー」を見て育った親や今の番組を見ている子供達はそんなこと気にせずに素直に喜んでいる。作品の本来の対象である子供達に好評ならばそれで良しとすべきか、とも思う。他人の参観について「その程度の見方は素人」等と言うのは巨大な世話である、楽しんでいる当人達に対して誰にもそんなこと言う権利は無い。
 この際だからトレインジャーを呼んで海斗との共演ショーを開催して欲しい。

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