「石森萬画館」第二十八回訪問記

平成十六年十二月十八日(土)

 本年最後の宮城県訪問。
 七時七分水沢発上り、一ノ関乗り換えを経て八時四十八分小牛田着までは順調である。九時二十六分発の気仙沼行快速・南三陸1号がなかなか来ぬ。この日の七時四十五分頃、東北本線大河原駅構内(仙台よりもっと南)で信号機の故障が発生し(故障自体は八時五十五分に復旧)、その影響で列車運行が乱れているのだという。前谷地で石巻行に接続するので安心されたしという場内放送に一安心。この前日の十七日にも天候のせいで宮城県内の列車運行に影響が出たそうである。
 九時四十八分に快速列車出発。前谷地で石巻行普通列車に乗り換えて石巻着は十時三十七分、時刻表より二十一分の遅れ。駅を飛び出して中瀬に向けて疾走する。時間をかけて数キロメートルを歩くのは好きだが走るのは五十メートルでも苦手だ。十一時から萬画館で開催の「シージェッター海斗」CD発売記念・遠藤正明クリスマスライブ、何とか間に合う。
 西側入り口から館に突入、すぐ板橋社長や常連各氏に挨拶。まず墨汁一滴で予約済みのCD二枚を買う。
 ライブ会場の一階映像シアターには一目で判る「その筋の愛好家」の女性達が大勢。以前、盛岡市で「クウガ」の時に宮内タカユキや橋本仁等、「アギト」の時に石原慎一や山形ユキオ等の出演する「スーパーヒーローライブ」を見物した際は親子連れの客ばかりで「愛好家」は筆者一人だけだったので、やはり岩手県より宮城県の方が都会なのだと思う。そして遠藤の服装も素肌に直接シャツを着て上の方のボタンを外して胸板を見せているので、それもまた客層へのサービスなのか。後で館事務室で聞いたところでは、今回の「その筋の愛好家」達は帰途の遠藤を追いかけて仙台駅のホームで彼を取り囲んだという。彼女達の家庭が「BLACK」#45のようになっていないことを祈るばかりである。
 司会は館の山本女史。まず主題歌に合わせて構成されたプロモーションビデオが上映される。海斗が中瀬近くの水上を疾走し、そしてヒメラニアン帝国の怪人達とその辺りの空き地で戦う。特殊効果も何も無いが客席からは大きな拍手が起きる。
 海斗、そして遠藤正明入場。遠藤は海斗についてイナズマンに似ていると言う。海斗の元ネタ・潜鋼騎シャドルはバシャーンの原案であることが出版物等で明かされており、ネット上では顔が仮面ライダー剣、ロボット刑事等にも似ているという評判だが、上半身の形状がグランゼルに似ているという指摘は聞かない。
 曲目は「シージェッター海斗」「爆竜戦隊アバレンジャー」「クラッシュギアファイト」「ウルトラマンダイナ」「戦士よ、起ち上がれ」そしてもう一度「海斗」。以上、クリスマスソングは一曲も無いし、「海斗」以外の石森歌曲も無い。「爆竜」と「ダイナ」の後には遠藤の漫談。意外と「業界」に宮城県出身者が多いのだという。遠藤も当地出身である。
 遠藤歌唱の間、一様に身を揺すって腕を振り上げる女性客達。場内の雰囲気がやはり今まで見聞した出し物とは違う、実に異様な熱気。
 四十分でライブお開き。その後、館内のジュース自販機の前でサイン会開催。CD購入且つライブ見物の客のみ対象。筆者は二枚のCDのうち一枚は為書き入りで自分用、もう一枚は普段世話になっている知人用にサインを貰う。そして握手。筆者に対して板橋社長曰く「ライブの間、手拍子もしないしあまり面白そうな顔もしていなかったな」。つまらなかったのではない、駅から走って来た上に狭い会場内であの熱気だから「物理的に」少し気分が悪くなったのだ。今にして思えば「ケーブルテレビで『B’T X NEO』見てました」程度のことでも言えばよかったのだがそこまで気が回らず。
 そろそろ海斗の胸の辺りにほころびが見える。
 とにかく心身を落ち着けねばならぬ。BZでいつものコーヒー一杯。
 二階、常設の原画展示は変わらず。第19回特別企画展「サイボーグ009生誕40周年展+最後のマンガ・お宝発掘展」はこの日から二月十三日(日)まで。
 「009」については原画中心の展示。初回と最終回、各編の見所を網羅しているようではある、前年ふるさと記念館でも見た。二台のテレビセットで過去のアニメシリーズのビデオを映している。ふるさと記念館開館時に上映された「平成009」ビジュアルコンセプトも見られる。
 「お宝」は各方面の協力で出された品物の即売、新潟県中越地震の慈善企画。図書、玩具、音盤、LD、その他。珍品、貴重品もあるようだが特に欲しい物は無い。
 閑散とした展示室内。客層はやはり「愛好家」ばかりで、子供の姿は全く見えない。遠藤ライブの女性客達も全く見当たらない、ライブの前に参観を済ませたのか、それともライブ見物のみが目的でそれが済めば帰ってしまったのか。
 館内は暑い。一度館外に出る。「オレの青春」を口ずさみつつ中瀬南端まで歩いて水面を見つめ、作田嶋神社に詣でる。曇天、少し冷たい風が心地よい。再び萬画館に戻って来る時に「自動車に乗り込んでどこかに出掛ける海斗」という珍しい場面を目撃する、運転者は勿論館職員だ。
 BZで食事、スパゲティーミートソースとココア。ココアのこの甘味と口当たりが絶妙である。器になみなみと注がれてしまったので口の方を器に近付ける、まるで落語の酒飲み。
 ライブラリーでライオンさんのオープンワークショップ開催中、邪魔してはいけないので声掛けずに通過。
 墨汁一滴で自分用にウェットティッシュを買う。文具や菓子等、海斗商品は増えてきた。
 事務室で暫く過ごす。館に次々に電話が掛かって来て在室の職員三人全員が同時に応対、あの場で更に掛かって来れば筆者が出ねばならないのか? BZの木村店長にココア絶賛を述べる。
 十五時過ぎに辞去。
 久方振りに粟野蒲鉾店に寄る。揚げ物ばかり三種、六枚。
 そしてここも実に久方振りの和田社長の店。また多方面に亙る話題で話し込んで十七時少し前に辞去。和田社長こそ萬画館最強の隠し展示だ。
 十七時十五分発の小牛田行に乗り、水沢帰着は十九時四十四分。帰途では列車運行の乱れは無し。

 今回の特別企画展は「009」についても「お宝」にしても過去に同題材、同趣旨の企画展を萬画館やふるさと記念館で見ているので企画自体の新味は無い。館内の見物客の少なさが少し気になったが、萬画館の客層には「会期初日」「一番乗り」より「無料開放」「ゲスト来館」の方が受けがいいので、一月九日の紺野直幸来館の際は賑わうだろう。
 海斗デビューから九ヶ月、主題歌初披露から五ヶ月。待望のCD発売は実にめでたい。関連商品の品揃えも、前々から筆者が勝手にライバル視しているJR東日本盛岡支社「新幹線トレインジャー」を上回っている。海斗の次の展開は何だろう、来年は「海斗」主人公・鳴海光真が登場するのか。そういえば筆者がよく利用する岩手県内のJR駅内売店にはトレインジャーの「こまち美里」の等身大(にしては少し小さい気がする)立て看板が立っている、海斗もそれを作って石巻駅その他市内の要所に配置してはどうか。
 海斗に限らず「構想」全般について何かと費用の問題を筆者も聞いているので、この際「海斗の証券化」を提案する。要するに一口何万円かで出資者を募って事業の資金を集めて、利益が出れば出資者に配当するという仕組み。最近は「不動産の証券化」がよく言われるし、先頃「新人アイドルの証券化」も売り出された。海斗を証券化すれば史上初の「証券化ヒーロー」だろう。責任の一端を負わされるのが嫌なので筆者は「構想」へのスタッフとしての参加は避け続けているが、「出資者」ならば大いに賛同する。
 それと勝手に鳴海光真の配役を考える。最近は映画「ゼブラーマン」「ULTRAMAN」のような「親父ヒーロー」が登場している、そこで鳴海役には萬画館の狩野、木村両氏や粟野蒲鉾店の若旦那はどうだろうか。そしてクラブアビシス人間体はハサミだけに和田社長。

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