「石森萬画館」第二十五回訪問記

平成十六年七月十八日(日)

 鉄道利用で九時十二分水沢発、十一時四十六分石巻着。今日も快晴石巻市。
 八幡家に行くのは久方振りのような気がする。紀代子女将にも暫く会っていない。ミニうな丼と茶わん蒸し。
 旧墨汁一滴のシャッターは下り、閉店告知の貼り紙すら無い。今も空しく残る「広げる会事務局」と「虎の穴」の看板。
 この日、恒例の「灯ろうまつり」開催。中瀬には多くの露店が立ち並び、既に大勢の人が出ている。風が強い。
 BLUE ZONEでコーヒーフロート一杯、スタンプラリー二巡目の押印を受ける。西側の窓から、中瀬で武道の稽古をしている人達が見える。
 中瀬に出る。三月二十日と同じ位置に舞台が設置されている。今日も「シージェッター海斗ショー」開催。K.S氏、和田社長、いつもの人々に会う。
 到着したばかりという「シージェッター海斗」主題歌が流れている。聞く限り、歌唱は石巻市出身の遠藤正明のようだ。何となく「ドラゴンボール」のような雰囲気の曲、歌詞は素直に悪の撃滅を主張している。
 マンガ灯籠設置。市内の児童園児の作品を公園の芝生の上に並べていくが折りからの強風で転がって行ってしまう。V字に折り曲げた太い針金で地面に固定する。成り行きで筆者も作業に参加するが筆者は決して関係者ではない。あくまでも一野次馬である。途中で逃げる。
 六十四メガのメモリーを装備したデジカメで中瀬の風景を撮影する。早くも創作灯籠に海斗登場。海斗を中心に1号2号、そして何故かスカイライダーが描かれた、何とも渋い組み合わせ。
 東和SP企画の人達が稽古をしている。出演者は前回とは違うようだ。
 宮城県選管に海斗を貸した以上「まんぼう」の有権者達は投票に行ったのだろうなと木村課長に問えば「勿論!」という答えが返って来る。しかし選挙の投票というものは人に言われてするのではなく、自分から進んで投票所に行くべきものだ。「投票日には投票しましょう」という呼びかけは「歩く時には両足を交互に動かしましょう」「死なないように呼吸をしましょう」と同じくらい当たり前のこと。言われなければ(或いは言われても)しないという方がおかしい。
 或る男性の六十五歳の誕生日の贈り物を館内墨汁一滴で選ぶが、良さそうなものが全く見当たらない。非喫煙者なので喫煙用品は駄目だし、服飾品も好みがある。酒飲みでもない。ああ、墨汁一滴には老人向けの品物が全く無いではないか。
 中瀬で二年振りに黒沢女史に会う。
 十八時半からショー。今回の出演者は全て東和SP企画。石森プロの幹部達出席、ショーの前に「まつり」の総合司会から小野寺章が紹介される。
 ショーには所謂「司会のおねえさん」登場。アニメ声で喋りはうまいが容貌は萬画館山本女史の圧勝だな。
 まず導入部の物語説明のやや長いナレーションが流れ、やがて川面に水上バイクに乗った戦闘員達と海斗が登場、水上戦を繰り広げる。直後海斗達は舞台に出現、今度は格闘戦。海斗が悪者達を撃退した後で司会が会場の幼児数人を舞台に上げて海斗のポーズを伝授。最後にまた悪者達が逆襲を図るが海斗はこれも退け、水上バイクで帰って行く。
 水上用と陸上用の二組の着ぐるみを使った立体的な構成。悪者・ヒメラニアン帝国の怪人クラブアビシスのデザインは「仮面ライダー剣」クリーチャーデザイン・韮沢靖。しかしその姿は筆者には「黒いカニ怪人」に見えて仕方ない。
 腹立たしい出来事。ショーの最中のポーズ伝授では「やってみたい人!」と会場の子供達に挙手させてその中から選んで登壇させるのだが、司会と海斗が向こうを向いている間に、自分の孫らしき三歳くらいの男児を勝手に舞台に上げる年配女性がいる。突然高い所に乗せられて、男児は突っ立ったまま何もせずきょとんとしているだけ。伝授の後で参加幼児にプレゼント(海斗ふりかけ)があり、司会者はその乱入幼児にも与えてはいたが、この年配女性の行為は理由を縷説るせつするまでもなく反則だ。実際、会場の他の子供から「欲しい!」と言う声も飛ぶし、筆者も「ずるいぞ!」と罵声を浴びせておく。大衆、しかも大勢の子供を前にしていい大人が反則行為、「年寄りのわがまま」とは実に醜い。
 ショーは二十分ほどか。ショー終了の後、事務室にいると友人のa1から連絡が入り、出迎える。
 二人でBLUE ZONEに移動。窓際の席で軽食を摂りつつ歓談。館内無料開放、店内も大混雑。a1曰く「無料だとこんなにも入るのか」。
 二階も一通り見ておく。やはりa1は特別企画展の歴代マシンに関心が向く。「RX」の怪人原画、「ガイナカマキリ」は原画にもそう書いてあるがテレビでは「ガイナカマキル」になった。テレビでの名前が公式だからその旨を注記すべきだろう。「BLACK」は「SPIRITS」には含まれないが「Black」原画が展示されているので展示の質、量は平山ライダーに見劣りしない。「龍騎」はマシンの紹介が全く無い。
 a1は二十時半頃辞去。
 強風止まず、結局打ち上げ花火は中止。事務室職員が照会電話に対応している、花火を楽しみにしていた向きも多いのだろう。
 前述の贈り物は結局タオル、ウェットティシュ、海斗ふりかけにする。贈って喜ばれる物より、迷惑がられない物。タオルなら柄が気に入らないから使えない、ということもあるまい。しかしこれだけでは誕生日の贈り物としてはあまりにも情けないので後日別途手配する。
 墨汁一滴、そして正面受付で押印を受けてスタンプラリー二巡目達成。福引はまたも外れ。尚、ふるさと記念館でもらった押印台紙は鋏を使わなくても手で切り離せるように切れ込みを入れてあるのが親切だ。
 暫く事務室で過ごしてから二十一時頃に逃げるように辞去、四十分の仙石線に乗って仙台市に向かう。

 立派な主題歌や悪者も出来て、これで海斗も一人前のヒーローになったと思う。他の地元ヒーローとは違うと標榜していても、今までのように萬画館女子職員と共に各地に出向いての握手会、マスコミ出演程度では国体や博覧会のマスコットキャラクターと変わらない。やはり敵がいてこそのヒーロー。ヒメラニアン帝国は本格的な造形で、前回のアカシオン大佐とは雲泥の差だ。これで少なくとも新幹線トレインジャーを凌駕したな、「ゆるキャラ」認定の心配もあるまい。尤も、「幻の悪者」になったアカシオン大佐は筆者の心の中で生き続ける。
 海斗は食品や凧、フリスビーの絵柄に使われているだけで、それ自身の商品化はまだ。取り敢えずCD‐Rでもいいから主題歌音盤を販売して欲しい。トレインジャー主題歌はテレビCMで流れており、CDも五百円で販売中。
 そしていつかは鳴海光真の登場、映像化が熱望される。五十万円くらいまでなら出資してもよい。全然足りないだろうが。
 改めて気づく、墨汁一滴商品の質の貧困さ。既に少子高齢化社会なのだからもっと大人向け、老人向けの商品を開発せよ。団体客も高齢者が少なくないではないか。禁煙が推進されている昨今、喫煙用品は時代に逆行している。しかし「構想」「まんぼう」関係者には男女問わず喫煙者が少なくないのだ。

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