「石森萬画館」第二十三回訪問記

平成十六年三月二十日(土)

 前年のうちから企画が進められていた萬画館オリジナルヒーロー「シージェッター海斗カイト」遂に登場。その初陣の見聞記。
 今まで、マシンで石巻市に行く時は必ず前日か当日が雨であった。今回はそのジンクスが外れたようではある。
 六時四十五分に出発、いつもの国道を南下する。風雨こそ無いものの曇天で肌寒く、平泉町の路傍の温度表示は氷点下一度を示す。
 特に渋滞等も無く走行自体は快調だがどうにも寒い。宮城県内、四十五号線に入る辺りでも気温五度。何しろ日が差さないのである。
 九時過ぎにマンガランド着。いつもの場所にマシンを置いて中瀬に向かうが全身が冷え切って痺れており、暫くは洒落でなしにうまく歩けない。よたよたと歩いて萬画館の三階に直行するがBLUE ZONEは十時から。一階の自販機で缶紅茶を買い、熱い缶で両手を温めてから開けて飲む。
 三階の廊下と一回の映像シアター入り口近辺で「ドラえもん」映画ポスター展、四月十五日まで。「ワンニャン時空伝」公開にちなむもの。長く続いているものである、四半世紀。大山のぶ代はテレビで「こんなに長く続くとは思わなかった」と言っているがそれではどれくらい続くと思っていたのだろう、或いは「もうそろそろ終わりか」と思ったことは無いのだろうか。
 九時半から正面玄関前で仮面ライダー555の握手、撮影会。番組が終了から二ケ月も経過してからのマンガランド初登場である。十人ほどしか集まらず、何とも寂しい会。テレビの子供番組が終了するとその関連玩具が安くなるが、着ぐるみの料金にもそのようなことがあるのかどうか。
 何をするでもなく、館の内外を徘徊する。この日はマンガッタンライナー運行開始1周年記念イベント開催、中瀬にはショーの舞台や露店が設置されている。既に少なからぬ人々が繰り出している。ただその様子を眺めるだけ。
 十二時から公園の舞台に555登場。司会はラジオ石巻の人と萬画館山本女史。参集した小学生達から555に対して「マスクを脱げ」「ベルトを外せ」と罵声が飛ぶ。後で周囲に訊くと、どうも石巻市というのはそういう土地柄らしい。
 BLUE ZONEで昼食を摂る。たらこスパゲティーとコーヒー。慌ただしく済ませる。
 十三時から海斗ショー。粗筋は、赤潮から生まれた怪人・アカシオン大佐と戦闘員達がこの日のイベントに乱入、山本女史を捕獲して海洋死滅作戦を実行しようとするがそこに海斗が出現、大佐以下を撃退してめでたしめでたし。十五分間程。宙明音楽に乗って戦いが繰り広げられる。
 海斗の中身は555と同じく、東北各地で「スーパーヒーローフェスティバル」の興行をしている(株)東和SP企画のプロだが、その他の出演者やスタッフは萬画館職員や有志。
 ショーの後、555も再登場して海斗と共に握手、撮影会。一人は既に番組終了、もう一人はテレビでも映画でもない地元ヒーローだが多くの人々が群がり、喜んで握手や撮影をしていく。更に海斗は単独で、川を背にしてマスコミの撮影に応じる。これが十三時半頃までか。
 地元出演者の「よさこい」。ふるさと記念館で使っていたのと同じ音源。
 館事務室で休憩。「虎の穴」の大久保店長来訪。
 暫く休憩の後、やっと二階に向かう。十五時頃。「Black」展示継続を確認する。
 第16回特別企画展「とっとこハム太郎美術館」この日から六月二十日(日)まで。
 当該作品は「ゴジラ」同時上映のアニメ映画しか見たことが無い。絵本や漫画の原画や手芸作品。原作者の紹介パネル等は一切無い。「アンパンマン」には及ばないようだがまずまずにぎわっている。
 特に感慨をいだくことも無く三十分ほどで退出。
 再び事務室。
 十六時頃に辞去。
 「虎の穴」。大久保店長と三浦嬢。缶コーヒー一本で二時間も話し込んで買い物はふるさと記念館の革製コースター一枚である。毎度毎度本当に申し訳ない。
 十八時頃に辞去して夕食を摂るべく八幡家へ。鰻のせいろ飯と茶碗蒸し。せいろが大きいので喰いでがある。
 十九時十五分に帰途に就く。疲れのせいか、途中何度も道を間違える。元々方向音痴な上に夜目も利かないので昼間の風景の記憶と夜の眼前の様子が一致しないのはしょっちゅうだが、それでも片道で何回も間違えるというのは尋常ではない。三月の夜更けはまだ寒く、二十一時過ぎ頃に遂に耐えられなくなって一関市のコンビニに飛び込んで休憩。体を温めてついでに軽食を買って再出発。やはり気温は氷点下、路傍の電光掲示板の「凍結注意」の文字に脅えつつ走るも路面は乾いていて、二十二時過ぎに帰着。

 往復とも寒い。寒さには強いつもりの筆者だが斯くも寒い思いをしたのは初めて、子供の頃の学校のスキー教室でもここまで寒がった記憶は無い。新幹線にすれば良かった。翌日出掛けた盛岡市は襟巻きが要らないくらい暖かくなったのに。
 マンガッタンライナー運行1周年なのに結局駅には行かず、中瀬近辺しか見聞しなかったのであった。
 とにもかくにも海斗である。写真は萬画館等のページに掲載されているので参照されたい。その姿は紛れも無く石森ヒーローである。いろいろな経緯を経てやっと日の目を見たヒーロー、今後うまく運用してマンガランドの隆盛に寄与して欲しいものだ。くれぐれも「みうらじゅん」の「ゆるキャラ」に認定されないように! 悪役あってのヒーローだから、是非ともついになる常任の悪役も作って欲しい。
 当日、会場では早くも「海斗の人形は売っていないのか」という客からの照会があったという。土産物としてソフビ人形は必須だろう、京本コレクションまでいけば尚、結構。三十分の短編映画を作って萬画館で上映、ビデオ限定販売というのはどうか。プロデューサー・吉川進、音楽・川村栄二、監督・雨宮慶太で。どこかで聞いたような露骨な人選だな。
 「海斗」の原案だという章太郎の未発表作「潜鋼騎せんこうきシャドル」。「原作者没後の章太郎特撮作品」について「章太郎はいつの間にそんなの考えていたんだ」「随分都合よく『遺稿』や『メモ』が見つかるものだな」と疑いの目を向ける人がいるが、筆者も章太郎画「シャドル」を関係者から見せてもらっているので、少なくとも「海斗」が「でっちあげ」ということは無い。寧ろ、その手の未発表稿、没原稿の類はどこの製作会社にも星の数ほどあると思う。
 漫画家には積極的にマスコミの前に姿を見せて活動する人と、殆ど自分の姿を見せない人がいる。章太郎は前者だったが河井は後者か。「ハム太郎」自体、筆者はさほど親しみも興味も無く、作風も好みではないので特に所感は無い。
 最近は萬画館事務室よりも「虎の穴」の方が居心地が良くなってきた。

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