「石森章太郎ふるさと記念館」第二十五回訪問記

平成十六年四月二十二日(木)

 以前から度々触れていた旧水沢県についての取材探訪、その一環として宮城県登米町の「みやぎの明治村」を訪ねた。今回の訪問記の大部分は登米町での見聞なのでその点は先に断っておく。

 十時少し前にマシンで出発。国道四号線を南下、途中前沢町で所用を済ませて更にまた南下して三百四十二号線に入り、中田町を通過する。実に温暖な日で風も無く、マシンでの遠出には最適な日和である。
 登米町内の十字路、ここで左折すれば登米大橋を渡って石巻行だが今回は右折。十一時半過ぎか。
 右折してすぐ、観光案内の看板を掲げる建物に飛び込んで観光地図を求める。(合)海老喜商店。味噌、醤油等の醸造製品や麺類等を並べている。女性店員に「みやぎの明治村」見学の旨を告げて道筋の説明を受ける。また、共に伊達一門の城下町である水沢市と登米町の歴史等について語り合う。土産物として蕎麦そば饂飩うどんを買う。
 尚、以下の登米町内訪問先でどこから来たと尋ねられると「水沢県水沢市」と告げる。
 海老喜からすぐ、水沢県庁記念館。今回の訪問の第一目的地。今まで本当にすぐ近くを通っていながら未到だったのだ。明治初期に四年間だけ存在した水沢県、その県庁の本庁はここに置かれた。
 受付で町内施設の共通券を買う。管内には県庁や当時の県内、後にこの建物に入った裁判所出張所の資料が展示されていて、裁判所時代の法廷の様子も再現されている。県勢資料の著名寺社欄に駒形神社や正法寺を見つけて嬉しくなる。
 水沢市出身の後藤新平伯爵、齋藤まこと子爵については「県庁勤務経験者」として大々的に紹介されている。但し、齋藤は登米の本庁にも半年ほど務めたようだが、後藤は水沢の出張所だけで本庁勤務はしていないようである。水沢県権県令ごんのけんれい・増田繁幸はんこうは現岩手県知事とは無関係だそうだ。「権県令」が「県知事」として紹介されているが、我が国で官職の上に付く「権」とは定員外の仮の地位を示す字だから、水沢県には正式の県令は置かれなかったのか。明治初期の歴史を読むと、中央官庁で正式の長官は欠員のままで次官級が業務を掌理した例が出て来る。
 小一時間程過ごしてから退出、次は県庁記念館の斜め向かいの春蘭亭。武家屋敷の建物を使った喫茶・休憩施設。茶菓子を供している。「春蘭アイス」を喰う。火の入っている囲炉裏端でアイスクリーム、妙な取り合わせだ。
 ここからは少しマシンを走らせて南下、警察資料館。明治二十二年から昭和四十三年まで登米署として使われた建物で、全国的にも警察資料の展示館は珍しいのだという。
 玄関を入ってすぐ右手にパトカー一台と白バイ二台が鎮座している。歴代署長の写真や、明治から現代に至る警察資料が展示されている。圧巻は一階奥の牢屋だ。中に入れないこともないがやはり気分のいいものではない、筆者は外から見るだけ。土産物に携帯ストラップを買う。
 次は北上して教育資料館。旧高等尋常小学校校舎で、前年のドコモ東北のテレビCMをきっかけに大人気となった建物である。平日の十四時頃だがこの日も団体客殺到、騒がしくてゆっくり見学するどころではない。そのCM効果を報ずる「河北新報」記事の切り抜きが売店に貼ってある。
 近代の教育資料や
両陛下、皇太子殿下の奉迎の際の様子が展示されている。やはり高齢者の団体客は展示品の教科書等を懐かしがる。勿論校庭の片隅には二宮尊徳像。
 そして最後は登米懐古館。丘の上に立つ、小さな展示館である。元日本鋼管社長で名誉町民の渡辺政人氏の寄贈品を展示している。藩主ゆかりの品や絵図、系図の展示があり、水沢市でいえば武家住宅資料館のような感じだ。売店で自分用に家紋入りの箸を買う。丸に橘。
 この時点で十五時四十分頃。また三百四十二号線に出て北上。途中、給油してからふるさと記念館に着く、十六時頃。即ち、「みやぎの明治村」と石森地区は二十分も掛からない。意外な日時の筆者の来訪に館や店の人達は驚く。
 蔵楽。この夏から出す予定という「ぶっかけうどん」の試食を供される。茹でた饂飩を丼に盛り、薬味を載せて汁を掛けてかきまぜてから喰う。麺好きの筆者、これも気に入る。空腹でそれだけでは足りないのできのこピラフを注文する。
 食事の後、十六時半頃に本館に入る。エントランスで友の会会費を納めて更新。開催中の第14回特別企画展は「石精神スピリッツ 三大トライアングル〜隠れた名作を追え!〜」四月十七日(土)から六月二十七日(日)まで。「仮面ライダー」「009」以外の名作の紹介という趣旨で、「幻魔大戦」「ギルガメッシュ」「ジュン」「太陽伝」の展示。
 例によって原画やパネル、アニメ上映。玩具類は無い。どれも筆者にはなじみの無い作品なので特に感慨は無い。「ジュン」の展示は仕掛けにこり過ぎていて肝心の作品が見づらいのが本末転倒である。
 平日の閉館間際、見物客は殆どいない。閑散とした館内。関係者によると企画展自体の評判、客の入りはまだよく判らないという。勝負は大型連休である。
 昨年度末で小野寺弘幸館長は退任して新年度から渡邊武光新館長が就任している。しかし今回は新旧両館長に会いそびれる。前館長は今も毎日、館に顔を出しているという。
 また蔵楽で歓談してから十七時半頃に辞去。

 ここ暫く気にしていた「みやぎの明治村」、やっと探訪できた。登米町、趣のあるいい町並みである。
 特別企画展は思い入れが無い作品群なので何とも言えないが、必ずしも世間一般に有名とは言えない作品の紹介という趣旨はいいと思う。

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