「石森萬画館」第二十二回訪問記

平成十六年二月二十一日(土)

 一関市での所用を済ませて一ノ関駅から東北本線上りに乗車したのは九時四十八分、そして石巻着は十一時三十五分。車窓から見る景色に雪は殆ど見当たらない、木陰や山陰にわずかに見えるのみ。
 温暖な石巻市。朝に水沢市を出る時には寒いからどうしても着込んでしまうが石巻市に着くと暑くて邪魔になる。
 例によってマンガロードを歩き、例によって八幡家に直行。ミニうな丼と茶碗蒸し。鰻と茶碗蒸しはここ以外の店では喰わない。
 久方振りに虎の穴を訪ねると大久保店長、三浦嬢とawano若旦那。若旦那との対面は本当に久方振りである。
 十三時頃から十五時頃まで居座って歓談して買ったのはキーホルダー一つ。悪い客だ。
 若旦那と二人で「ゼブラーマン」絶賛。店長と三浦嬢に熱心に鑑賞を勧める。
 実写版「セーラームーン」の噺をする時、筆者は必ず「音楽が大島ミチルだから見始めた」と言うが、この点に反応を示す人は周囲にいない。
 萬画館は二月一杯冬時間、十七時で閉館である。例によって二階から入館、BLUE ZONEでいつもの一杯。
 二階。何と「Black」原画はまだ展示中。この際、恒常展示でもよい。「おみやさん」が外されて「おかしなおかしなおかしなあの子」に入れ替えられている。
 第15回特別企画展「昭和の玉手箱」二月七日(土)から三月十四日(日)まで。最近の流行なのか、昭和三十年代の回顧展。
 往時を偲ぶ品々の展示、率直に言ってあまりにも雑多でまとまりが無い。予算不足ゆえの窮余の策ということがありありと解る。しかし、短期間でよくこれだけ集めたものだとも思う。
 石巻市の古い地図には銭湯や映画館がいくつも並ぶ。石巻郵便局は今の市役所の近くにある。今と場所が変わらないのは和田リハツ店と八幡家。
 ジンセンアップ、アース製薬、オロナミンC等の琺瑯ほうろう引きの看板。昆ちゃんのオロナミンCの看板のミラーマンの絵が嬉しい。アースの殺虫剤「ハイアース」の水原弘は「大鉄人17」ブレインの声である。何とか石森ネタにこじつける。
 畳敷きの一角のテレビでは昔のCMを映している。TBS「テレビ探偵団」で見た記憶があるものばかり。
 三十、四十年代の週刊誌が陳列してある。「少女週刊誌の女王さま」だと。
 乗用アクロバッターが展示してあるのは「昭和」としてはぎりぎりセーフだな。
 一時間ほどで退室。
 墨汁一滴は相変わらず見るだけ。本当に買う物が無い。
 墨汁一滴を見下ろす位置の手摺りに寄りかかって缶ジュースを飲んでいると事務方の狩野氏に見つかる。事務室に入る。
 事務方の多くは出払っていて、事務方で在館は狩野氏と宍戸女史のみ。氏から館経営の現状や今後の見通しについて聞く。
 十七時過ぎに辞去。
 和田社長の店を訪ねるとawano若旦那も居合わせる。ここでの鼎談が実に十九時半過ぎにまで及ぶ。話題は「構想」のみならず多岐に亙る。つくづく、「萬画館最強の隠し展示は和田社長」だと思う。
 二十時七分発の仙石線上りで仙台市に向かう。

 今回の特別企画展の出来は必ずしも褒められたものではない。どうしても雑多という印象は拭えない。しかし必ずしも退屈な展示というわけでもない、どうにも曰く言い難い。石巻市の地方史と戦後日本の生活史を一緒くたに取り上げたのは果たして成功だったのか。
 今、各地で昭和三十年代を回顧、賛美する展覧会が開かれているが、「LONG LONG AGO,SHOWA ERA」と言うことなのだろう。

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