「石森萬画館」第二十回訪問記

平成十五年十月十日(金)

 また仙台市で所用があり、この日の午後に済んだので十四時二十一分の仙石線普通列車に乗る。石巻駅には十五時四十八分着。
 仙台市も暑いが石巻市もまた然り。マンガロードを抜けて久方振りに和田社長の店を訪ねて暫し歓談。
 あまり長居せずに辞去して中瀬に向かう。
 いつもどおり二階から入館してBLUE ZONEに直行する。筆者が顔を見せればなじみの店員女史はこちらが食券を出す前に「ブラックコーヒー?」そのとおりである。平日の夕方、客は筆者一人。
 二階の自販機で共通券を買って企画に入る。第13回特別企画展「武蔵」十月四日(土)から十二月十四日(日)まで。剣豪・宮本武蔵を題材にした石森萬画やその他の漫画家の作品、吉川英治記念館収蔵品、映画ポスター、武蔵ゆかりの地の紹介等。漫画家個人の特集ではなく、或る題材に基づいて異なる漫画家や媒体の作品、資料を集めたという、過去萬画館では例の無い特別企画展である。
 冒頭から石森作品三つ、いずれも丸ごと展示。少々奇抜な展示方法を採っている。
 石森以外の原画展示は小島剛夕、黒鉄ヒロシ、モンキー・パンチの作品。黒鉄のが一番笑える。
 映画ポスターの圧巻は中村錦之介主演五部作。片岡千恵蔵等、他の役者の演じた作品のポスターもある。
 青梅市の吉川英治記念館から借りてきたのは朝日新聞連載「宮本武蔵」の自筆原稿や当時の掲載紙切り抜き。
 武蔵ゆかりの地の観光宣伝資料がどっさりと置いてある。諸国を巡り、墓所すら明らかでない武蔵だけに数多くの土地がネタに使っているようである。勿論、NHK大河ドラマ関する資料もある。
 出口近くに展示されているのが十月十一日より公開の映画「巌流島 GANRYUJIMA」のポスターと井上雄彦「バガボンド」の漫画本。
 何しろ夕方の到着で時間があまり無いので一巡して企画を出て、また常設も見ておく。「Black」はまだ展示中。いつ頃まで展示するのだろう、個人的には恒常的な展示でも構わない。
 平日の夕方だけに今回も館内は空いているが、日中は団体客でごった返したのだという。閉館時間間際、アテンダント嬢が道具を持って展示室内を拭いて回る。
 十八時で閉館。「墨汁一滴」や事務室でいつもの面々と会話。
 辞去したのは十九時前後だったか。八幡家に行く。紀代子女将在店。鮭茶漬けと茶碗蒸し。十九時半頃までいる。
 日帰り可能な小牛田行最終便は十九時五十五分発。帰着は二十二時三十四分。

 萬画館にふさわしいか等と疑問視する声もあったが、石森作品を中心に据えている以上、今回の特別企画展を萬画館から排除する理由は無いと思う。さまざまな角度からの展示で、宮本武蔵は歴史上の人物として名前を知っている程度の筆者でも大いに楽しめた。岩波文庫「五輪書」は持っているだけで未読なので今度読んでみよう。
 歴史好きとしてはまた石森萬画を中心として日本古代史や中国史の特別企画展も見てみたい。日本古代史に関しては宮城県には多賀城遺跡があるから、その辺りとうまく提携すれば面白い展示ができるのではないか。元々萬画館一階には「石巻市の歴史」コーナーがあるのだから、萬画館と歴史学習は相性が悪いということは無いと思う。
 BLUE ZONEでのブラックコーヒー一杯は外せないし、萬画館事務室や「虎の穴」でも飲み物を出されることがある。勿論、食事は八幡家でしたい。こうなると石巻駅隣接の「マンガッタンカフェ・えき」を利用する機会がなかなか無い。それでなくてもマンガランドのどこかに顔を出さないとそこから恨まれるというのに。

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