「石森萬画館」第十八回訪問記

平成十五年七月二十日(日)

 港町、夏の日差しと潮風がとことん似合わない「鋼鉄の黒騎士」、一年振りのマシンでの石巻入りである。
 曇天下、国道三百四十二号線、同四十五号線を南下。左折して市街地に入るのにまた道を一本間違えて全然知らない道に入り込み、気が付けば駅前のさくら野百貨店の近くに出てしまう。そのまま立町通りを抜けていつもの松栄にマシンを置く。十七時頃。
 この日、中瀬で「石巻元気まつり」「灯ろうまつり」開催。近辺祭り一色である。尚、本稿では祭の名前としては「灯ろう」、普通名詞としては「灯籠」を用いる。
 サイバーカフェ虎の穴を訪ねる。大久保店長と三浦店員在店。暫し歓談。
 ミル・マスカラスのマスクを見つけて「スカイ・ハイ」を口ずさむが、この歌は筆者にとっては寧ろ「鳥人間コンテスト」の主題歌だ。
 今更ながら、電車にはねられた万引き少年と、遂に閉店に至ってしまった被害店舗の噺。筆者は通報した店主を断固支持する、閉店とはあまりにも気の毒だ。ただ、今回の問題は相手が子供で且つ死んでしまったというのが事情をややこしくしている。これで万引き少年の親が店主を訴えたりしたら目も当てられなかったが、親は店に対して「申し訳ない」と謝罪の意を表しているとはいう。古代中国の政治家・商君、思想家・韓非子、そして始皇帝を尊敬し、自身も法家の徒を以て任ずる筆者だが、所詮法律は後始末であり、物事の根本的な解決にはならないと思う。
 「まんぼう」の板橋社長が来店して筆者に挨拶。「民芸の店いたばし」が虎の穴の向かいである。
 大久保店長と三浦店員は店頭にくじびきの準備をする。その風景をカメラに収める。
 十九時頃、中瀬に向かう。館には入らず、公園で写真撮影。
 やはり登場、ペットボトル仮面ライダーとサイクロン号。これも「構想」、灯ろうまつりの象徴だろう。しかしペットボトル作品に経年劣化は無いのだろうか。章太郎とアンパンマンの大きな灯籠も出品されている。
 去年は大雨で大惨事となった灯ろうまつり、今年は晴れはせぬが天気は持ちこたえる。石巻市も午前中は大雨だったという。十九時半、公園の照明消灯。持ち寄られた数千個の灯籠の光が浮かび上がる。そして打ち上げ花火。
 萬画館無料開放。常設の「Black」原画はまだ展示中。館内大混雑。時折、板橋社長の声で迷子の親の呼び出し放送が聞える。
 公園から萬画館二階への入り口で和田社長に会う。共にBLUE ZONEに赴く、ここも大入り。例によってブラックコーヒーと、今回はスパゲティーミートソース。売り切れ品目続出。ここでも東京都の常連女史に会う。
 第12回特別企画展「やなせたかしとアンパンマン展」六月二十八日(土)から九月十五日(月)まで、後に二十八日(日)まで延長。
 作者紹介の写真やパネルは昨夏のふるさと記念館のと同一だが、アクリル画や絵本原稿に重複は無いようだ。やはり大きなアクリル画の重厚さに圧倒される。こちらもまた親子連れでごった返し、静かに鑑賞するどころではない。大盛況である。
 「009展」の時にふるさと記念館に飾られていたサイボーグ戦士一団の人形が一階に来ている、やはり003の顔付きが変だ。
 事務室に避難、休憩。五月の仙台市での「出張萬画館」を訪問しながら駐在の担当職員に声を掛けなかったことを当人から非難される。その他、在室の職員達と会話。ワークショップ担当の二人を「熊とライオンの猛獣コンビ」と命名する。
 二十一時で閉館だがその後も事務室に居座る。客のいない静かな館内、墨汁一滴のレジで店員達が売上の勘定をする。めったに見られない光景だ。店員達に対して、萬画館独自商品の「仮面ライダー」「009」「ロボコン」「エッちゃん」四作品偏重に苦情を述べる。もっと他のヒーロー作品も商品化して欲しい。
 機械集計の数字を見せてもらうが本当にすごい大入りで、商品売上も良いようだ。
 二十二時少し前に辞去、帰途に就く。市街地を抜けて国道の北上を始めると青信号に恵まれて、途中津山町のコンビニに立ち寄る他はノンストップで走り続け、赤信号で停止するのは一関市の新幹線高架下。国道四十五号線の河北町、桃生町辺りは右手に切り立った崖が迫り、左手に北上川の深い深い闇が横たわり、街灯も無いので多少恐ろしげな景観である。だいぶ寒くて身を震わせつつ走り、四号線に入る頃に少し降られるが濡れるほどでもなく、十二時頃に帰着。

 二年前の開館初日は曇り、去年の一周年祭は快晴後雷雨、今年の二周年祭は大雨後曇り。筆者の雨男振りもさることながら、開館以来、周年記念祭でまともな天気だったためしが無い萬画館自体も「雨建物」なのだろうか。
 今回の特別企画展についての感想は昨夏のふるさと記念館と同様なので略す。作品人気はまだまだ継続している。
 これで夏休み時期には千客万来でまた入場制限かと思っていたら、二十三日からの大雨と二十六日の大地震。特に大地震の震源地は石巻市の隣の矢本町で、石巻市でも各方面に被害発生。本当にここ数年、石巻市は政局や事件、そして災害発生と天地人に亙ってろくな事が無い。河北新報のウェブページに石巻市が載る時は大抵悪いニュースである。大丈夫か。
 筆者の次の石巻市訪問は九月か十月だと思うが、それまでには落ち着いて欲しいものだ。

一覧に戻る

目次に戻る

I use "ルビふりマクロ".