「石森萬画館」第十回訪問記

平成十四年五月二十五日(土)

 前夜から当地は大雨、雷まで鳴り出す。当日早朝も少し降るもののやがて止み、晴れ上がる。六時三十五分、自動二輪で出発。本当は去る十一日の中田町もマシンで行きたかったのだが、雨で電車、バスにしていたのだ。去年六月の自動車学校入学以来丸々九ケ月を費やして今年三月に免許取得、四月にマシン購入。今回はマシンを駆っての初めての県外遠征。
 水沢市からすぐ国道四号線に乗って一関市まで南下、そこから左折して同三百四十二号線・通称一関街道に入り、更に南下を続ける。朝早ければ通行量は少ない。
 花泉町の山中のガソリンスタンドで給油、その他は休まずに走り続ける。路傍の交通安全標語立て看板「わき見運転しないでね/美人の多い花泉」本当か?
 七時五十分頃、県境を越えて中田町に入る。「ようこそ」の看板には仮面ライダーの絵。
 花泉町と登米町の市街地は時速三十キロメートル制限、その他は同四、五十キロメートルで走る。中田町の辺りから北上川と併走。
 中田町、登米町を通過、津山町で国道四十五号線に入り、桃生町、河北町、河南町を経て石巻市北部に入る。マンガロードとは石巻駅を挟んで反対側になる辺り、実に活気に満ちた賑やかな通り。今まで立町シャッター通りの衰退振りばかりが印象深かったので、中里、南中里の様子に驚く。
 道路に萬画館の案内標識がいくつも出ている、それに従って進み、石巻信金本店の辺りから内海橋の手前に出る。後は勝手知ったる土地、旧「墨汁一滴」隣の有料駐車場に駐車する。この時点で九時少し前だから所要時間二時間半足らず。快晴だが風は強い。
 石巻中央一郵便局のATMで資金調達、そして萬画館に向かう。
 この日、いずれも片岡鶴太郎出演の文化放送ラジオ「土曜日は鶴日和」とミヤギテレビ製作東北七県ネット「月刊元気一番“生”テレビ」のそれぞれ生中継が萬画館から行われる。ラジオは八時からの二時間、テレビは十時半からの一時間。そのテレビへの野次馬映り込みが今回の石巻訪問の目的。在来線利用ではテレビに間に合わないので晴れたら自分のマシン、雨なら新幹線で仙台経由と決めていて、幸い晴れなればマシンでの訪問である。
 開館間も無い館内、まだ客は少ない。中年の酔漢が大声で何故か吉幾三の「雪國」を熱唱している。どこにでもいるのだな、ああいう人は。
 暫くは館内の無料区域と隣の公園を徘徊する。三階のBLUE ZONEからラジオ生中継中。公園ではテレビのリハーサル中、そこに先程の酔漢が乱入してスタッフに引き離される。館スタッフの本郷女史も今日はテレビ担当。
 館内で女子小学生が「あたしンち」の母の歌を歌うのが聞える。
 音楽かCMでも流れている間か、鶴太郎が付き人らしき人と共に三階の廊下を歩き、壁面に貼られた絵等を見て、廊下に居合わせる子供達に笑顔で「小学生?」と声を掛ける。筆者は特に接触を図らず。
 十時、ラジオ終了。鶴太郎は降りて行く。皆がそれを追いかける。
 十時半、テレビ開始。レギュラー出演者は鶴太郎、内山信二、ミヤギテレビの岩瀬裕子。公園の鶴太郎達の真後ろに立って映り込みを狙う筆者。
 鶴太郎達館内へ、筆者も人波と共に追跡する。二階でサイクロン号に絶叫しながら乗る内山、あれは体重百二十キログラムまで大丈夫だそうな。彼は今年二十一歳、ぴったり「BLACK」世代のはずではある。
 再び鶴太郎達を追って公園に出る、次第に野次馬が増えて来る。相変わらず鶴太郎達の真後ろを確保する筆者。周囲には携帯電話で家族に連絡して映る位置の指示を受ける人が何人もいる。
 十一時半少し前、番組終了。野次馬がどっと押し寄せるのを番組スタッフが押し返す。鶴太郎は出演者の地元の女性達に「本当においしゅうございました」と丁寧に頭を下げてから、他の出演者と共に逃げるように自動車に乗り込んで走り去る。
 「墨汁一滴」で仮面ライダータペストリー等を買ってから退出。
 粟野蒲鉾店二号店で笹蒲鉾を買う。ドラグレッダーが飾ってある。
 八幡家に着くのは十二時少し前。紀代子女将は丁度筆者とすれ違いで萬画館だという。蒲焼き定食と茶蕎麦。十三時前には店を出ていると思う。
 旧「墨汁一滴」は最近サイバーカフェ「虎の穴」なる漫画喫茶に模様替えする。店内は漫画の他、石森プロジェクト関連商品や経営者の趣味だというプロレス関連商品が並ぶ。仮面ライダーワッペンだけ買う。
 和田社長を訪ねる。
 前回約束していた本を見せる、学研「小松崎茂の世界」「同Part2」と「アサヒグラフ」平成十年十一月六日号の「小松崎茂 少年の日の夢」。戦前から雑誌の挿絵や絵物語、模型の箱絵等で活躍し、先頃他界した画家・小松崎茂。東宝特撮愛好家にとっては、轟天号等多くの空想兵器のデザインでもなじみが深い。社長も小松崎画が好きだということで今回持参。
 ページを繰りつつ熱く語る社長。彼は絵物語よりも模型の箱絵等の方が好きだという、そして軍艦や戦車、飛行機の名前がすらすらと出て来る。相当な通のようだ。筆者もあの多少ゴテゴテとした感じもするが迫力に満ちた小松崎画は大好きである。
 今回のテレビ生中継のスタッフ用の弁当を八幡家が受注したそうで、和田社長の手になるラベルを見せてもらう。
 その他歓談の話題は当日のテレビ中継や今後の構想事業運営、インターネットについて等。
 向かいの粟野蒲鉾店本店に若旦那。
 十四時頃に辞去。駐車場で駐車券を機械が読み込まず、連絡用電話で警備会社を呼んでからやっとマシンを出す、十四時半頃。四十五号線に出ようとして水明の方に行ってしまってから引き返して四十五号線に乗り、再び給油して北上。一関市のコンビニで休み、水沢市帰着は十七時頃。復路も晴れで雨には当たらずに済む。早速「“生”テレビ」録画ビデオを再生し、映り込み成功を確認する。

 以上は筆者の行動。今回のテレビ番組の内容は下記のとおり。お題は「おもしろ町づくり」。

 実はこの前日、宮城県内では本当に未確認物体が目撃されて新聞報道もされ(観測気球説も唱えられたが結局正体不明、鶴太郎の「昨日はUFOがいたよ」とはこの事)、福島県の話題は実に時宜を得たものとなった。尚、番組中の鶴太郎と板橋社長との対談の中で「今日にも入場者三十万人を突破か」と言っていたら当日午後に突破と相成った。当分は同社長の事を「ファンキー板橋」と呼ぼう!
 内山の、萬楽堂のごまアイスに比べて粟野蒲鉾店二号店でのサイボール・ゴボウレンジャー試食の際の反応の歯切れの悪さよ。粟野若旦那が出なかったのが残念。内山は白いロボコン。
 館内の原画を見ての鶴太郎の感想はなかなか鋭い、彼自身も画家である。彼の指摘どおり、章太郎は驚異的な多作、猛スピードの執筆が伝えられている。
 それにしても番組の進行がちぐはぐ、鶴太郎が言葉に詰まったり、岩瀬がとちったり、そして強風の雑音が絶えず入ったりしてもうボロボロ。「アホの酒田」「そっけない岩瀬」

 ああ、ものの見事に野次馬映り込み成功。筆者と面識のある人達は番組を見てすぐ気づいたようだ。月曜日に職場でも「映ってたな」と言われた。
 天気に恵まれてマシンで快走できたが片道二時間超の運転はやはり疲れる、大体マシンを運転していては居眠りも読書も出来ぬ。何より市中心部はマシンでは走りづらい、慣れない人は中瀬に近づく、駐車場を探すのでも一苦労だろう。今後もなるべく電車で行くことにしよう。
 タペストリーは萬画館図録にも掲載されている、1号とBlackの原作絵を採用したもの。萬画館独自商品。特撮「BLACK」と萬画「Black」は別物ではあるが、特撮愛好家としても「Black」独自商品化は嬉しいものだ。現在、自室に掲げてある。大公執務室(下宿の四畳半とも言う)を飾るにふさわしい。この後で同じ柄のマウスパッドも出た。
 「虎の穴」については特にこれと言った印象は無い。筆者にとって旧「墨汁一滴」に代わる場所は八幡家、理容ワダ、粟野蒲鉾店(以上順不同)である、あの橋通りの建物に思い入れが無いわけではないが、そこに集う人々との交流こそ魅力だったのであり、物理的に建物を再利用しても中身は違うのだから筆者は別に嬉しくもない。

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