「石森萬画館」第八回訪問記

平成十四年三月七日(木)

 石巻市への隔週訪問は続く。会期が十日ほどと比較的短い企画展が続くとどうしてもこうなる。最早暗黒大公は石森プロジェクトの常連客というよりカモである。
 雨降りにて傘差して下宿を出る。九時十二分水沢発、乗車後間も無い一ノ関で既に晴れてしまい、十二時三分に好天の石巻に着く。
 駅前のロマン海遊21(石巻市観光物産情報センター)に入る。先般のスタンプラリーの時は押印のみで退出しているので今回は中の様子を見て回る。観光案内や地元産品販売。萬画館関連商品も売っている、たらこの菓子で「がんばれ!タラコン」だって。陽光を取り入れた明るい、小綺麗な建物ではある。
 マンガロードを歩いて八幡家。地鶏照り焼き丼。
 十三時少し前に店を出ると紀代子女将に出くわす、丁度出前から戻った所だと言う。少し立ち話。
 萬市場の奥の方に、旧「墨汁一滴」で使われていた卓と椅子が設置されている。来客の休憩用らしいが、萬画館にBLUE ZONEがあるのだから別に萬市場には無くてもいいのではないか。それこそ旧「墨汁一滴」の如く茶等が出るわけでもあるまい。
 平日なれば館内に客は多くない。今回は第6回企画展「プラトンへようこそ〜石森マインドに学ぶシリーズ〜」三月六日(水)から三月十七日(日)まで。「HOTEL」についての展覧会である。これで萬画館の企画展の回数はふるさと記念館の特別企画展の回数に追いつく。
 今までは二階の常設と企画の入り口は別だが、今回は企画のいつもの入り口は封鎖。常設を通過しないと企画に入れないようになっている。料金も今回は共通券のみである。
 常設にはまだ「龍騎」の展示は無い、今後追加されるか否かも知らず。二十代前半くらいと思われる女性四人組が「石森章太郎の子供たち」に見入り、「誰がために」や所謂不思議コメディーに「見てた」と反応を示す。また、白黒「009」戦闘中に物陰で化粧を直す003には「かわいい」と大受け。それにしてもこの「子供たち」には「人造人間キカイダー THE ANIMATION」は入っているのにテレ朝ライダーや「マシンマン」「バイクロッサー」「ボイスラッガー」が入っていないのが変だ。
 常設の一番最後の右手にホテルプラトンのカウンターがあり、左手から企画に入るようになっている。
 静かな企画展示室内、筆者の他は無人。入ってすぐに応接間の如き卓、椅子が置いてあり、卓の上にホテル業界誌と思われる物のコピーのファイルがある。石森とホテル経営者の対談等。「HOTEL」について、あちこちのホテルの経営者が「これはうちがモデルだ」と思ったそうな。また、作品の詳細な内容から「石森自身にホテル勤務の経験があるのではないか」とも言われるそうだが、勤務経験は無いという。その応接間の壁には日本ホテル経営学会からの感謝状も掲げられている。
 原画やパネルが主な展示内容。萬画の内容は、職種は違えどやはりお客相手の商売に携わる者として参考になる。お客の身になって考え、サービスを行う。ただ、筆者は「『お客様第一』とはお客を甘やかすことではない」という考えも持っているし、常に国営事業としての品位も保持せねばならない。
 石森の生涯や、萬画の技法解説、世界のホテルの展示もある。「宇宙鉄人キョウ−ダイン」だって、「キョーダイン」だろうが。
 前回訪問時に会話をした本郷女史が向こうから声を掛けて来る。この日はスーツ姿で新聞社の人を案内中。
 電源の入っていないパソコンがぽつんと置いてある。何か出し物らしいが故障中だという。
 一番最後に、萬画館が今回の企画にちなんで実施した「エピソード大募集」の投稿作品の展示。「HOTEL」にちなむ感想文、体験談等。石森愛好家の他、石巻市のホテル従業員からも寄せられている。筆者のネット上の知人の投稿もある、石巻市のホテルに泊まった際にそこの従業員がよくしてくれたそうだ。マメにお客の要望に応える従業員だ。
 三階のBLUE ZONEで卵サンドとココア、アイスティーを食す。窓際の席の北側に着く。窓の外を見れば真正面にNTTの鉄塔が立ちはだかり、左手、南の方に視線を移せば日和山が視界を遮る。天気の善し悪しに関わらず、ここの窓から見える景色は醜悪である。
 同じくライブラリーに横山隆一漫画館のチラシがある。故郷の高知県に四月開館だそうな。
 十五時半頃に駅に着く。待合室で読書や居眠りをして過ごし、十七時十一分の小牛田行で帰途に就く。

 今回の企画展は、恐らく今までで一番地味で静かな展示だったと思う。まだ第2回の小学生発表の方が派手。尤も、見応えが無かったということではない。今度機会を見て「HOTEL」を読んでみるか。

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