「石森萬画館」第五回訪問記

平成十四年一月二十六日(土)

 九時十二分の水沢発だが石巻着は十一時五十九分。十二月のダイヤ改正で、小牛田での二分待ちが四十分待ちになってしまったのである。これは大きい。
 現地晴れ。今回の目的はスタンプラリー。萬画館とマンガロードに面する商店等に常設の絵入りスタンプを配置して、全て回って集めた人には萬画館で非売品缶バッジを進呈という企画。どうにでも来訪客に商店街を歩かせて買い物をさせようという、実に商魂たくましい企画である。
 実はスタンプラリー加盟店をよく確認せずに石巻入りしている筆者、歩いていれば見つかるだろうといつもどおりマンガロードを歩き始める。立町通りに入ってすぐ、パン屋の萬楽堂にスタンプラリーの案内ポスターを見つける。ここでスタンプ帳を買い、押印。スタンプ帳はスタンプ設置場所で買える、但し石巻駅とペアーレ石巻を除く。尚、スタンプには設置場所の名前は入っていない。どの店がどのキャラクタースタンプかは回ってみてのお楽しみ。ついでに菓子パンを一つ買う、早速マンガランドの「思う壷」にはまる筆者。
 スタンプ帳に掲載の地図を見て石巻駅まで引き返して押印。
 次に駅から出て左手の石巻観光協会・ロマン海遊21。押印。
 駅前通りを南下、ポケットパークの手前にリーガルシューズ石巻店。押印。少し奥まったところにあるので探すのに手間取ってしまう。
 立町通りに入って先程の萬楽堂前を通過する。
 ロボコンモニュメント、誰の仕業か「合格祈願」絵馬がアンテナにくくりつけられている。「満点ロボコン」にふさわしい。五歳くらいの男児を連れた母親がその子をロボコンの前に立たせて写真を撮っている。「満点」なればこそ絵になる。
 次にペアーレ石巻。押印。
 ことぶき町通りを南下して電機屋のパナック・けいてい。押印。
 アイトピア通りのかめ七呉服店。同じく呉服店のまるみ屋。両店で押印。
 この時点で十三時頃。昼食にすべく八幡家に向かう。ここにはスタンプは無い。
 カウンターに食品玩具の鉄人28号やバビル2世、ガイアーが並んでいる。横山光輝。今回は「おかみさんセット」(鰻まぶし飯)と茶蕎麦そば。紀代子女将は仕込みで多忙らしく、出たり入ったり。
 一時間ほどで辞去。
 和田社長を訪ねる。スタンプは無い。相変わらず彼の語り口は熱い。タウン誌をもらう。筆者持参の都市地図を教材にいろいろ教えてもらう。本当に次々に話題が出て来る、歴史、地理。我が水沢市も北上川流域だけに、北上川の水運については筆者も最近関心を持っている。
 「快傑ハリマオ」主題歌の二番の歌詞ではあのように歌っているが、ハリマオは七つの海を駆け巡っていない。前々からの社長の疑問だそうな。「主役が象に踏まれて死んだ為に打ち切られた」という有名な噂も話題に上る、デマである。勝木敏之は後に「隠密剣士」にも出演している。
 以前も触れた石森著「大江戸相撲列伝」のでたらめについて。実は宮本徳蔵著「力士漂泊」にほぼ同様の谷風非難の記述がある、石森著の元ネタは多分これだろう。「力士漂泊」はやたら双葉山礼賛、そして裏付けの無い推論があちこちにある少し気味悪い本だが、宮本自身、月刊「大相撲」のアンケートでわけのわからぬ回答をしている人物である。
 ここに一時間半も滞在してしまう。十五時半頃に辞去、スタンプラリー再開。
 橋通り、旧「墨汁一滴」前のエッちゃん像はこれも誰の仕業か、襟巻きを着用している。去年は災難続きのエッちゃん像だが、中には粋なことをする人もいるものだ。
 民芸の店いたばしで南天の箸を買う。押印。
 萬市場。押印。品物が多少入れ替わっている。ブルーベリーの飴とわかめスープを買う。飴もわかめスープと同じく(有)兼宮商店の商品、飴は何種類かあるうちの一種類である。本当はふりかけを買いたいのだが見当たらず。
 粟野蒲鉾店。スタンプは無い。久方振りに若旦那に会う、若旦那自らレジを打つ。揚げ物と「カステラ蒲鉾」を買う。
 内海橋の手前を左折して北上、石巻信金本店のもう少し先に住吉公園がある。神社に隣接する小さな公園。記念碑がいくつもある、その中に明治三十年建立の川村孫兵衛記念碑。和文の記念碑は素通りするのに漢文だと自分の実力を試すべく喜んで読解してしまう。江戸時代に石巻地域の治水や港の整備に功績を挙げた川村孫兵衛、しかし彼をに比するのは少しおおげさではないか。禹とは古代中国の帝王で、正史に拠れば黄河治水の功績により帝舜から天下を譲られて即位し、夏王朝を開いた。今でも中国では治水の神様として祀られている。
 その公園の辺りの川面に「巻石まきいし」という代物が顔をのぞかせている。その石の辺りは水の流れが渦を巻いている、それが「石巻」という地名の由来になったという説があるそうな。言われてみれば渦を巻いているように見えないことも無い。
 中瀬の北端にも行ってみる。何も無い。
 やっとスタンプラリー終点、萬画館。既に十六時半を過ぎている。冬は入館は十六時半まで、閉館は十七時。但し、一階と三階の無料区域はまだ入れる。三階、そして一階で押印して全部集まる。一階のレジにスタンプ帳を提示して缶バッジとポスターをもらう。
 時間配分を誤って企画展は見られず、退出。十八時十八分の小牛田行で帰途に就く。

 好天の下、楽しいスタンプラリーであった。オイスタンプラリー以来、三年振りのスタンプラリー体験。
 店を探したり、訪問する先々の店の人と会話をしたりで、思いの外時間がかかってしまったが、それがまた楽しいものである。ただ、店によってスタンプラリーに対する取り組みの温度差があるように思われる。店先にスタンプとスタンプ台を出しっ放しにして「勝手に押してくれ」と言わんばかりの店もあれば、スタンプ帳のページが汚れないように、押印したページに挟む紙を用意していた親切な店もあった。スタンプラリーも商店街活性化の一環ならば、スタンプを店先に出しっ放しなんて論外だろう。親切な店ではやはり買い物をしたくなる。尤も、相手が呉服店ではおいそれとは買い物できないが。
 スタンプ帳は駅では売っていないので、駅を出たらまず左手の観光協会でスタンプ帳を買って押印し、駅に戻って押印してからリーガルシューズに向かう、というのが効率的だ。それとスタンプには日付が無いので、平日ならばリーガルシューズの次に立町郵便局、或いは萬市場の次に中央一郵便局に寄って、メモのページに風景印を押しておくのもいいだろう。いい記念になるはずである。
 兼宮の飴はおいしい。次回訪問時は他の色の飴も試してみるか。
 粟野の「カステラ蒲鉾」も美味だがかなり甘い。伊達巻きとはまた違う代物である。

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