「石森萬画館」第百十九回訪問記

平成三十年七月二十九日(土)

 今回も東北本線六時五十七分水沢発だが、一ノ関の次は小牛田で乗り換え、十時四分石巻着。小牛田ではあまり照り付けぬ薄曇り程度なのでこの天気が続けば良いと思っていたら石巻市ではずっと晴れ。且つ蒸し暑い。
 ニューゼに入っても最早筆者を知る者無し。
 元気いちばを覗いてみる。買い物はしない。
 萬画館一階で年間パスポートの更新手続き。パスポートを提出して料金を支払い、そのまま預けて外に出る。
 作田島神社の辺りは立入禁止の表示がされている。一時的な措置かどうかは知らない。
 二十分ほどで館内に戻り、パスポートを受け取るが裏面の有効期限が更新されていないので突き返し、また外に出る。
 正午頃、飯時なれば八幡家に向かうが予約で満席。そこで初めて元気いちば二階の食堂を利用する。自販機でとんかつ定食千二百円の食券を買い、受付に提出するとマッチ箱程度の大きさの呼び出しベルの機械を渡される。席で待っているとやがて機械が鳴り、商品を取りに行く。
 食事を済ませて館に戻るのが十二時四十分頃。やっと手続き完了のパスポートを受け取り、シアター前の行列に並ぶ。やがて入場が始まる。
 十三時から「石ノ森章太郎生誕80周年記念企画・『墨汁一滴 第4号』寄贈記念 大瀬克幸×早瀬マサト トークイベント 新旧アシスタントが語る!石ノ森章太郎 よもやまトーク」。章太郎が高校時代に参加していた肉筆同人誌「墨汁一滴」#4が先頃発見され、萬画館に寄贈されたのを記念しての催し物。
 発見及び寄贈者・大瀬氏は昭和四十二年の二月から十月まで、章太郎のチーフアシスタントを務めている間に話題の物件を譲られたと言う。本当は当時、クーラーの故障による水漏れで濡れてしまった為に廃棄するはずだった代物が約五十年を経て偶然発見される。上に積んであった原稿二十枚程は当時本当に廃棄してしまったと言う。
 大瀬氏自身は元々漫画には興味は無かったそうで、またアシスタント卒業後も漫画家にはなっていない(画才を活かす職業には就いた)。章太郎最後の弟子とされる早瀬より二十年程先輩に当たり、早瀬の知らない事もいろいろ知っている。
 対談の主な登場人物は章太郎とその家族の他に野口竜、永井豪。当時の仕事の壮絶さが語られる。章太郎の超人振りと、それについていかなくてはならないアシスタント達。いろいろ込み入った事情も出て来て、筆者もここで書いていいのかどうか判断がつかない。アシスタント希望者が多く、小野寺家の使用人のように雑用を命じられる事もあったと言う。
 両者の対談の合間に、客席最前列の有識者から見解が述べられたり、聴衆の一人が差し出す古本を手に思い出が語られたりする。また、当時の年表等と突き合わせて、当事者が勘違いをしているのではないかとされる件も指摘される。
 予定の十五時を少し過ぎて終了。
 第70回特別企画展「サンリオキャラクターズ かわいいのヒミツ展」七月十四日(土)から十月十四日(日)まで。
 九年前に開催されたハローキティ展でも他のサンリオキャラクターも紹介されていた。今回と比較できるほど前回を憶えていない。
 常設は最近になって一部を除いて撮影解禁。七月十八日(水)からの第39期原画展示テーマは「マンガの王様の萌芽」。前述の「墨汁一滴」#4の他、「模写絵本」「幽霊少女」「三つの珠」「金時さん」「にじの子」「秘境三千キロ」「にいちゃん戦車」「江美子STORY」「世の中まちがっとる」。「墨汁一滴」と「模写絵本」は著作権上問題のありそうな題材も掲載されている。
 十六時頃に辞去して石巻駅に向かうと電光掲示板は東北本線仙北町駅での人身事故による盛岡・一ノ関間の運休を告げている。再開は十七時頃の見込みだと。今年度の筆者は仙台駅内でのパンタグラフ発火や岩手県南での大雨で立て続けに列車の遅延や運休に見舞われており、またかとその時は思う。予定どおり十六時二十九分小牛田行に乗り込み、一ノ関も定刻どおり十八時四十分発で十九時三分水沢着。遅延せずに済む。

 対談ではいろいろ面白い噺を聞けた。それにしても昔の原画等管理の杜撰さである。水濡れで捨ててしまった上の二十枚には何が描いてあったのだろう。
 特別企画展については例によって論評を差し控える。カワイイは筆者の得意ではない。
 元気いちば二階の食堂の研究は今後の課題である。

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