「石森萬画館」第百十八回訪問記

平成三十年四月八日(土)

 東北本線六時五十七分水沢発、一ノ関で仙台行に乗り換えて更に塩釜で仙石東北ラインに乗り換え、石巻着は十時十六分。暑い石巻市。
 中瀬直行、作田島神社参拝。社殿再建は既報のとおりだが、ふと見やれば以前の石鳥居等の残骸はまだ片隅に置かれている。
 入館。
 第69回特別企画展「わたせせいぞうの世界展 ハートカクテルin石巻」四月二十一日(土)から七月一日(日)まで。「ハートカクテル」の作品の存在や絵柄は知っているが今まできちんと鑑賞した事は無い。
 連載漫画の原画や今回の為の描き下ろし、各地の情報誌の表紙、その他「わたせ」の連載記事等を紹介している。順路の最後に版画の販売注文受付コーナー。入り口付近に「わたせ」本人がいる。
 連載当時は改元前後。誌面からは実にバブル臭が漂う。当時はまだ携帯電話が普及していない。展示されているパネルによれば、「わたせ」は前田亘輝と「携帯電話が出現してから創作がしづらくなった」と話し合ったと言う。
 若い男女の恋愛模様の漫画だけに男一人で見ていいものかとは思ったが、幅広い年齢層が見に来ている。バブル当時のいい思いが今も忘れられない中高年男性の事をバブルオヤジと言う。
 常設は「ロマンス」と題して、「サイボーグ009(愛の氷河編)」「がんばれロボコン(ロボコン失恋の巻)」「気ンなるやつら(雨の中のふたりの巻)」「さるとびエッちゃん(気ンなるやつら)」「さんだらぼっち(恋のぼり)」を展示する。エッちゃんも恋する乙女だった。
 十一時五十二分の仙石線で仙台に向かう。

 「ハートカクテル」の物語からはどうしても時代を感じるが、絵柄自体は古臭くはないとも思う。
 本文中に引用した、携帯電話出現についての件が印象に残る。「待ち合わせ場所に相手が現れずすれ違い」「思いを込めて手紙をポストに入れて、その返事を心待ちにして郵便配達のバイクの音に心ときめかせる」「彼女の家に電話を架けたら親父が出て来た」全て携帯電話が解決してしまった。
 実はエッちゃんは専ら一キャラクターとして接していて萬画自体を読んだ事は今まで殆ど無かったと思う。ふと思い出したが章太郎の萬画作品を連載当時に読んだのは多分、讀賣水曜版の「エスパーエッちゃん」のみ。

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