「石森萬画館」第百十四回訪問記

平成二十九年八月二十六日(土)

 八月末の恒例、田口萌の劇団 球の萬画館公演。二日間の予定だが筆者が見に行けるのは初日のみである。
 慌ただしい旅程である。十時十三分水沢発、同三十六分一ノ関着、その三分後の三十九分一ノ関発ではいつもの南東北みなみとうほく切符を一ノ関駅で買っている時間は無く、初めから水沢駅で水沢・石巻往復切符購入。十一時二十六分小牛田着、同三十三分小牛田発、そして石巻着は十二時十二分。これくらいが、接続待ち時間が一番短い旅程だと思う。待ち時間を含めても二時間未満。まだ筆者の身体能力はそのような乗り換えにも対応できているがいずれそうもいかなくなる。
 急ぎ八幡家に走り、いつものかば焼き定食と茶わん蒸しを文字どおりかき込む。飯のお代わりをしている時間が無い。八幡家としては筆者がお代わりをすればするほど儲けが減るのでこの方がありがたいだろう。高価な鰻料理をかき込んで短時間で店を去るとは、最高の贅沢かとんでもない罰当たりか。  この日の球の一回目の公演は十三時十分から。既に満席に近いシアターに飛び込んで辛うじて座れる。最前列にはよく見る常連達。立ち見も数人。
 今回の「Re Birth」の演出は球所属の小出侑門、出演は十七歳高校生や二十歳大学生の女子研修生五人。もう一本は「アイスモンスター」本来は一時間四十五分の芝居を十五分に短縮しており、多分に長台詞で展開、状況説明を済ませている。
 芝居と芝居の間に一行の自己紹介等。現在、田口はワタナベエンターテインメントで講師をしていて、そこから若手五人をスカウトしたのだと言う。そしてまたBLACKネタを仕込んでいるようで、一行全員でBLACKの変身ポーズ。一公演につき三十分。
 今回も公演の回毎に一同が並んで観客を見送り、送り出す。筆者以外にも出演者と立ち話をしている人が何人もいる。田口の方から筆者に記念撮影を求めるので応じる。
 館外に出て南下し、作田嶋神社参拝。
 中瀬公園にて「Reborn‐Art Festival」開催中。内容はよく判らないがTOYOTAのテントがいくつも設営され、自動車も展示されている。TOYOTAと言えばかのテレビCMで石森両館とは因縁がある。
 一度中瀬を出る。復興マルシェの跡地に六月三十日に開店した「いしのまき元気いちば」。大きな道の駅、産直のような施設である。地元産品の他、石巻市を支援しているとて東京都調布市の産品の一角がある。角川大映の撮影所にちなむ映画の街。また水木プロの所在地でもあり、「ゲゲゲの鬼太郎」にも同市が舞台になっている作品がある。棚には深大寺そばのような食品の他、旧大映や水木しげる関係の品物も数多く並ぶ。筆者は観光案内を手に取り、購入したのは「陸軍中野学校」「ある殺し屋」「眠狂四郎炎情剣」のクリアファイル。市川雷蔵愛好家の知人に送付する為である。
 再び中瀬に入る。二回目は十五時十分から。今回も満席。
 出演者の中にアイドル志望で、自作曲のCD一枚百円を売っているのがいる。一枚購入する。殺陣の場面があった女優には志穂美悦子を目指せと言う。
 十六時頃に辞去。石巻駅のNEWDAYSで一割引きクーポンを行使して粟野商品や車内で喰らう軽食を買い、十六時二十九分乗車。十七時六分小牛田着。売店跡は今も空白のまま。三十七分発。十八時二十四分一ノ関着、四十分発、そして水沢着は十九時四分。帰路の所要時間は三十分以上多い。小牛田と一ノ関での待ち時間が往路の三倍である。

 恒例の田口一行だが毎回出演者や演目が違うので、一度見れば十分と言う事は無い。章太郎作品出演者で萬画館公式回数が多いのは田口ではないかと思う。これからも続けて欲しいし、本家たるふるさと記念館にもいつか来て欲しい。
 今回は五回の上演で合計百五十二人の観客。アイドル志望が売ったCDは二十五枚。いつか彼女が出世して、そのCDが所謂黒歴史、「あの大スターの知られざる過去」になればよい。テレビ番組で紹介されて本人が「キャーヤメテー」と叫ぶような。
 元気いちばの中の調布市商品には驚く。調布市は二十年程前、一度だけ訪れて水木ロードを歩いた事がある。今以て新宿と原宿、調布市と田園調布の区別がつかない田舎者である。「東京の中野」と言えば八王子市中野町。

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