「石森萬画館」第四回訪問記

平成十三年十一月十七日(土)

 萬画館開館以来初めての十一時十二分の石巻入り。出発時の水沢市同様、石巻市も雨上がりの様子。
 今回はまず「かっぽう八幡家やはたや」に向かう、旧「墨汁一滴」の裏手にある店。少し奥まった場所にあるが見つけづらいということはない。
 余談だが、今は「広げる会事務局」になっている建物なのにまだ「墨汁一滴」と呼んでしまう。大相撲の親方を年寄名ではなく現役時代の四股名で呼んでしまうような感覚だ。
 店に入る。阿部紀代子・代表取締役が筆者を迎える。
 前々から訪問記に登場している阿部女将、この店の四代目。マンガランドスタッフの間での通称は「紀代ちゃん」。筆者とは石巻市や中田町で何度も顔を合わせていて、当日は萬画館開館初日以来の再会。彼女は六月のNHK・BS2「“千人の力”コンテスト」に出演し、十一月一日付け「石巻かほく」で地元若手経済人として紹介されている。
 あまり大きくはないが落ち着いた、上品な感じの店。石森その他漫画家の絵等が飾られている。カウンターに着席。
 品書きを見てミニうな重・千五百円を頼む。茶を飲みつつ女将と会話。
 当然ながら話題はマンガランド構想が中心。いろいろと興味深い裏話、苦労話等を聞く。こうして地元、関係者ならではの話を聞くのが筆者のマンガランド訪問の楽しみの一つである。「千人の力」出演時のことや三年前のオイスタンプラリーについて、また岡田劇場について等、色々聞く。ペアーレ前の仮面ライダーモニュメント損傷を警察に通報したのは二度とも女将だそうな。
 石巻警察署長が構想に理解があり、その縁で駅前交番に「ロボット刑事」の絵が飾られていることを教えてもらう。
 当日の我々の会話のキーワード「思う壷」。筆者自ら曰く、こうやって事ある毎に隣県から石巻市を訪問していろいろ見て回ったり、買い物をしたりしている筆者はマンガランドの思う壷である。萬画館の駐車場不設置が世間で物議を醸しているが、わざと駐車場を作らないことで訪問客に商店街を歩かせて買い物等をしてもらおうというのがマンガランド側の狙いである。そして筆者はその狙いどおりに行動している。実にありがたい客である。そもそも筆者は自動車を持っていないのでいつも鉄道利用だが、自動車を持っていて、そして萬画館に駐車場があるとしてもマンガロードを自動車で通過してしまっては実にもったいない。歩いてモニュメント類の探索を楽しみ、そして地元商店等を利用してこそ意義がある。萬画館はあくまでもマンガランドの一部である。萬画館「だけ」楽しみたいなら自動車でマンガロードを素通りしてもいいだろうが、来石して萬画館しか見ないのは「木を見て森を見ず」である。
 そして印象に残った女将の言葉「マンガランドは始まったばかり」。そう、萬画館開館は終着点に非ず、全てはこれから始まるのである。
 やはり先般の筆者の田代島渡航は、ただ島内を自転車で一周しただけで肝心なものは何も見ていないのだ。
 カウンターに置いてある「いしのまきらいふ」「元気新聞」を読む。
 出て来るミニうな重、汁、漬け物、デザートのヨーグルト。実においしい。
 話題は構想にとどまらず、宮城、岩手両県の政治、歴史、文化や「クウガ」「アギト」等にも及ぶ。確かに最近色々なテレビ番組で見掛けるオダギリジョー。
 注文したのはミニうな重一つだけ、そして茶を飲むこと四杯。これで一時間半くらい居座る。再会を期して辞去。
 岡田劇場では十二月に「モスラ対ゴジラ」「三大怪獣地球最大の決戦」を上映。やるね岡田劇場!
 萬画館。前売券を出して企画展示室に入場。
 第3回企画展「マンガ・お宝大博覧会」。例の米国同時多発テロについて、各方面から提供された品物を競売に掛け、その収益金をニューヨーク市に贈ろうという企画。入札者は欲しい品物の番号、入札額等を入札用紙に書いて入札し、会期終了後に最高値から二番目の入札者が落札者に決定、という仕組み。当初は十二月三日(月)までだったのが展示は十六日(日)まで延長される、但し入札は三日まで。
 入り口近くに置かれているラジカセ、筆者の入場時に流れているのは「大鉄人17」の「わが名はブレイン」。これで筆者すっかり嬉しくなる。この他にも「仮面ライダースーパー1」「星雲仮面マシンマン」「人造人間キカイダー」等、石森映像作品の歌曲が流れる。一体誰が選曲したのだ、実に渋い。「BLACK」からは「BLACK ACTION」だけ。
 出品物は漫画原稿、漫画家サイン色紙、玩具、書籍、その他諸々。実に多岐に亙っている。また、石森やマンガジャパン会員以外の漫画家の品物も多数。本当に壮観の一言に尽きる。敢えて詳細は述べまい、言えるのはこの展示を見る為に石巻市を泊まりがけで訪問する価値は十分あるということ。特撮、アニメ、漫画、玩具、いずれの愛好家でも楽しめるのではないか。
 尤も、筆者が一番欲しいのは展示だけで入札対象外の、テレビ番組や映画、そしてLDの宣伝用の大きなポスター。その中でもテレビ番組「17」のは特に。他にも第二期ライダーや「超銀河伝説」の当時のポスターは世代人としては嬉しい展示。一番古いのは放送当時の「V3」か。割りと新しい作品なのに妙に保存状態が悪い「J」。
 品物の説明の札の付け間違いを見つけて会場の係員に通報しておく。後で落札者が「私が入札したのはこれではない」等と言わなければいいが。
 ラジカセ音楽が一巡するまで、一時間くらいか。展示室を何周もしてから意中の品物に入札して、退室。
 BLUE ZONEで軽く何か喰おうかと思うも混んでいるのでやめる。
 萬画館から出ると丁度十五時でからくり時計作動中。動くところを見るのは開館式典以来。よく見れば竜の上の方に原作版Blackがいるではないか、今まで気が付かぬとは不覚。
 萬市場、相変わらず岩手物産の製品が多い。前沢牛まで置いてある。「海豚いるかちゃんクッキー」を買う。
 粟野蒲鉾店本店を久方振りに訪ねる。揚げ蒲鉾十枚。そういえば若旦那にも暫く会っていない。
 和田社長を訪ねる。今日の行動や雑談。
 駅前交番の南側の壁に「ロボット刑事」の大きな絵が飾られている。石森画、帽子とコートを着用したK。警察にK、実にふさわしい。仮面ライダーG3も警察官だが、「ロボット刑事」の絵というのが実にマンガランドらしい。尚、筆者が一番好きな石森作品警察官は「燃えろ!!」のロボピー。大好きだもの、潘恵子。
 十七時十一分の小牛田行で帰途に就く。

 第3回企画展は本当にすごい展示内容である。よくも短期間でこれだけ集めたものだと思う。少しでも多くの収益金が集まることを祈念する。
 八幡家は実にいい店なのでマンガランド訪問の際は是非立ち寄ろう。肩の凝らない、気軽に入れる店である。もっと早く利用していればよかったな、次に行く時は何を喰おうか。
 駅前交番はマンガ交番。石巻駅で降りて、真正面の003像を見たら右手の方に向かってみよう、交番はすぐ見つかる。実に渋い趣である。交番に対抗して石巻駅が「秘密戦隊ゴレンジャー」機関車仮面の絵を飾ったりしたらヤだな。

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