「石森萬画館」第九十五回訪問記

平成二十七年五月三十日(土)

 大地震発生以降、一部区間の休止が続いていた仙石線がこの度全線復旧。また、仙石線と東北本線を接続する仙石東北ラインが開業する。その一方、二年間運行して来た石巻線マンガッタンライナーが運行を終了する(石巻線自体の廃止ではない)。
 当日朝に東北本線に水沢駅から乗るのでは間に合わないが一ノ関駅からなら間に合う。五時前にマシンで家を出て、三十分ほどで一ノ関駅に着く。マシンを駅前駐輪場に置き、「南東北フリーきっぷ」を買う。五時五十六分の始発岩沼行に乗り、七時三十一分仙台着。ホームでは「仙石東北ライン出発式」が済んだ後。まだ薬玉くすだまや看板がホームに残っており、宮城県のむすび丸と仙台駅のトキムネくんがいる。仙石東北ラインのハイブリッド車両も見える。
 仙石線ホームに向かう。仙石線利用は何年振りか自分でも判らぬ、少なくとも大地震発生後は初めてである。報道機関の姿も見かけるが、ホームには飾り付けも無く、特に混雑していると言うわけでもない。
 マンカッタンライナーが入って来る。これに乗り込み、八時十六分発。初代マンガッタンライナーの時と違い、仙台駅では特に式典も無く、普通に乗り込んで座れる。全く通常の車内である。その筋の愛好家と思しき人の姿も見かけず。
 仙石線の西端の数駅は地下で、やがて地上に出る。仙台市域を出て、今回復旧した区間に差し掛かると、沿線で列車に向かって手を振る人が増えて来る。矢本駅では大勢の人が駅に詰めかけて郷土芸能で祝う。
 頻繁に乗っていたわけでもない仙石線の以前の沿線風景は殆ど憶えていないので、新たな風景との比較は出来ない。ただ、今の沿線には造成工事中の場所が多いのは解る。
 終点が近付く、やはり沿線には多くの野次馬。九時四十二分、石巻着。大地震の後、初めての仙石線マンガッタンライナー到着。この後に式典があるのでホームは既に混雑している。駅や萬画館の関係者、石巻観光ボランティア協会、その筋の愛好家、タガレンジャー一行、コスプレ参加者。
 十時から出発セレモニー。水木一郎や地元出身遠藤正明、関係者によって挨拶、薬玉割り。挨拶の中で水木から「ゼーット!」の意味が説かれる。millionミリオンの更に上、zillionジリオンのZだと言う。また、水木は二年前の石巻線マンガッタンライナー運行開始の時の事にも言及する。
 今度は仙石線マンガッタンライナーがあおば通り駅に向けて出発する。野次馬にも白い手袋が配られ、一同その手袋を着用して、水木の指導と掛け声で「時間よし、信号よし、出発進行だゼーット!」十時二十四分、出発。皆で見送る。
 萬画館開館当時からの古参で、嘗ては003として催し物等に出演するも最近は復興マルシェの自転車番等をしていた女性従業員が、筆者の知る限り七、八年振りくらいで003の服(今回は青)を着て、しかも金髪のかつらまでかぶって、コスプレ参加者の引率をしている。「トシを考えろトシを」「放送事故だ」「引率の保護者か」と口を極めて罵倒しつつも集合写真を撮影する。
 駅前に多くの屋台が出ている。早朝出発で何も喰っていないので、石巻焼きそばと玉こん。
 暑い。
 駅前の空き地に「祝マンガッタンライナー/鋳銭場いせんばの歴史パネル展会ママ」と言う看板とテントが出ている。石巻駅の地名は鋳銭場と言い、嘗て仙台藩が幕府公認で銭貨を鋳造していた場所である。言わば仙台藩の造幣局。そのテントでは古銭の実物や、説明のパネルを展示している。一文銭を紐に通した一貫文の実物を手に取ってみる事もできる。案内係の人といろいろ会話をする。筆者は郵趣家であって貨幣収集は専門外だが、貨幣の歴史には興味がある。
 賑わう街。石巻立町局ATMに立ち寄る。市内各地の空き地や駐車場に屋台や演奏者が出ている。十一時半頃に八幡家に着き、いつものかば焼き定食と茶わん蒸し。紀代子女将に先程撮影したばかりの石巻駅の様子を見せる。
 中瀬に入る。外装工事の為に足場で囲まれた萬画館。
 時間に余裕があるので館内で海斗特別編を見る。
 外に出る。萬画館向かいの催し物会場は既に大勢の人出で、萬画館の芝生の上にも沢山の人が座っている。前の出演者が退場して、十三時十五分から水木一郎&遠藤正明スペシャルライブ。まず遠藤、「遊戯王」から二曲と、世界三大ヒーローとして「アバレンジャー」「エコガインダー」「海斗」。「戦士よ、立ち上がれ」の後、最後に「ガオガイガー」。観客の盛り上がりはいつものとおり。
 来場している讀賣新聞の鈴木美潮が紹介される。日本特撮党党首を名乗っているが彼女は特撮愛好家と言うよりは変身ヒーロー愛好家だろう。特撮作品でも、変身ヒーローの出て来ない怪獣映画等について彼女が語っているのを見聞きした記憶が無い。
 水木登場。遠藤と会話をした後、まず「マジンガーZ」。次いで章太郎作品メドレーとして、「リュウ」「嵐」「ハカイダー」「ロボット刑事」「イナズマン」二曲、「ロボコン」「アクマイザー」「ズバット」「17」「ガイスラッガー」「ボイスラッガー」。ここまでで一区切りで、続けて仮面ライダーメドレーとして「X」「ストロンガー」、「スカイ」正副主題歌。そして「戦え! シージェッター海斗」。
 水木から、作詞遠藤、作曲水木での海斗新曲の企画が進行中であり、昨夜もその打ち合わせをした事が告げられる。
 最後に「懐かしくってヒーロー」。主に水木が歌い、時折遠藤も歌う。
 終了は十五時頃か。潮が退くように観客がいなくなり、次に登壇した出演者は非常にやりにくいとぼやく。筆者もまた立ち去る。
 以下、暫時中瀬徘徊。いつもの参拝や館内。
 午前中は003の姿で駅ホームにいた従業員(前述の古参とは別の人)が午後は着替えて墨汁一滴のレジに立っている。重労働。
 企画を見てまたスタンプラリーの用紙を受け取る。
 墨汁一滴で開田画のコースター二つを買う。
 十五時四十分頃辞去。前回と同じ順番でスタンプラリー。終点のパナックけいていで尋ねればバルタン星人のバッジが一番人気だと言う。
 十六時二十九分の小牛田行の車両はMogami-gawa Line。一ノ関着は十八時四十分。急用発生で帰宅は二十一時頃。

 翌日は石巻線マンガッタンライナー最終便が団体列車として仙台駅から運行されるが、別の用事があるので筆者は不参加。ただその用事は仙台市だったので、仙台駅で十一時発の最終便の見送りだけはしておく。その後、東北本線での帰路で、小牛田運輸区に退役したばかりのマンガ車両が置いてあるのを目撃する。

 仙石線完全復旧で、個人的には一日で石巻市と仙台市の両方を気軽に回る事が再び可能になった。今までも不可能ではなかっただろうが、やはりバスの運行は信用が置けないし、自身の自動車酔いが恐ろしいのである。今後、仙石東北ラインのハイブリッド車両に乗るのを楽しみにしよう。
 石巻マンガランドとの十七年間の交流でさまざまな人々や事象と出会い、また別れて来た。旧構想関係者、まんぼう従業員、各種施設。そして今回、石巻線マンガッタンライナーとの別離。石巻線そのものが廃止されるわけではないが、運行終了は想像もしていなかったので、やはり一抹の寂寥を感じる。「石巻市に住んでいなくてよかった、何故なら石巻線マンガッタンライナーに乗って萬画館に行けるから」「石巻線マンガッタンライナーは私にとって自家用車同然」がこの二年間の口癖だった。北からの訪問者として、あのレッド&ブルーの車体を絶対に忘れない、勿論緑と黄も。今後も何かの機会に石巻線でもマンガランド関連企画を実施して欲しい。
 水木はマンガランドの準レギュラーである。何かと節目に当地を訪れて歌っている。海斗との関係も深くなったし、これからも来て欲しい。それとついでながら、「懐かしくって」はPART2も生で聴きたい。
 以前から「マジンガーZ」の主題歌は一アニメ作品の主題歌であるばかりでなく水木一郎の主題歌であり、またアニソン全体の象徴であると評して来たが、今やアニメから主題歌が殆ど独立している。「ゼーット!」は知っていても「マジンガーZ」は見た事が無いと言う人も多かろう。
 まんぼう女性従業員の003姿には年齢制限を設けるべきだ。

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