石巻「墨汁一滴」第一回訪問記

平成十年十一月二十一日(土)

 当日、JR石巻駅に降り立ったのは午後二時頃。小雪がちらついて寒々とした天気。目的は二つ、「墨汁一滴」訪問と石巻市内郵便局の「サイボーグ009」小型印スタンプラリー参加。しかしながら、事前に石巻市内の地図も参照せず、スタンプラリーについてもただこの日に実施されるという程度の情報だけでの石巻行であった。
 まず、駅前の市内案内図を見る。その中にすぐ「墨汁一滴」の文字を見つけ、目的地の大体の見当をつけて歩きだす。
 歩き始めて数分、立町通りの商店街のアーケードを歩いていると偶然スタンプラリーの第一会場を発見。郵便局の臨時出張所である。そこで記念台紙(九十円切手十枚貼付、九百円)を求め、小型印の押印を受ける。
 今般の絵入り葉書「009」発行にちなみ、石巻市内十局では九人のサイボーグ戦士にギルモアを加えた十種の記念小型印を各局に一つずつ配備した。スタンプラリーは、郵便局側が小型印を数種ずつ三ケ所の会場(通過点)に分散配置し、参加者はそれらを回って記念台紙に十種の小型印を集める、という趣向。そのスタンプラリーの題名が

●絵入りはがき『サイボーグ009』発売記念
石巻名物カキオイスター記念日付印スタンプ
オイスタンプラリー
         in石巻

…この感覚、「シンキのノーローン」の宣伝文句といい勝負だと思うのだが。
 記念台紙はA3の二つ折り。サイボーグ戦士達とギルモアの絵、石森作画の「いしのまき萬画絵図」、原作者や「マンガランド構想」、石巻市の紹介等が印刷された、なかなか立派な出来の美麗な代物である。ただ、今回小形印使用の十局の一覧のうち、石巻局の郵便番号が「986‐0814」になっているが、集配局は局所在地の住所とは別に局自身の独自の郵便番号を持っているので、同局の場合は下四桁は「8799」が正当。
 石巻市内を歩くのは初めての筆者、記念台紙に添えられた地図を見て更に係の人から道程の説明を受け、再び歩きだす。
 商工会議所の角を右に曲がってことぶき町通りに入り、さらに左に折れて第二会場。記念台紙を示して押印を受ける。そこでは焼いた牡蛎の無料提供。寒さに震えつつも焼きたての殻付き牡蛎を筆者も口にしてみる。また、牡蛎を焼いている脇では「マンガランド構想」推進の署名を求められ、これに応じる。
 更にてくてくと歩く。街灯に009の絵柄の旗。やがて右手に見えて来たのはスタンプラリー第三会場にして今回の目的地、持ち込みカフェ「墨汁一滴」。
 建物の外観は「墨汁一滴」ウェブページを参照して頂くとして、決して大きくはない建物である。中に入って記念台紙を示すと、店員から二階へ上がるように指示される。
 狭い階段を上って二階へ。左手奥に郵便局の係の人達が構えており、そこで最後の押印を受けて十種の小型印が揃う。景品として「009」ハンカチ一枚と「墨汁一滴」製の絵葉書一枚を貰う。
 ハンカチは緑、赤、橙の三色から選択するようになっており、筆者は緑を取る。どうやら一番人気は赤のようだった、サイボーグ戦士の制服に通じるからだろうか。絵柄は、中央に「009」、四隅にそれぞれ里中満智子「天上の虹」、ちばてつや「おれは、鉄兵」、モンキーパンチ「ルパン三世」、矢口高雄「釣りキチ三平」の絵を配した物。絵葉書は、009の絵と石森氏の書。「旗靡かず/風無し/揺らぐは/人の心なり/章太郎」。
 ここで係の人達や石巻局長と親しく歓談。筆者は今回の催し物について宣伝不足を指摘し、インターネットの活用を訴える。そしてここでもまた焼いた牡蛎を食す。
 窓側の一角では漫画家志望という高校生達数人が喫茶をしつつ何やら歓談中。
 室内の様子。「仮面ライダー」や「009」の大きな額絵、「3/10」等とエディションナンバーが打たれている。版画であろう。数十万円するという。御希望の方は係まで、との表示があるが、簡単に手が出せる値段に非ず。壁面には石巻市長や小野寺章、矢口高雄、里中満智子、いがらしゆみこ、モンキー・パンチ各氏のサインが直に書かれている。
 多くの漫画家達のサイン色紙の掲示あり。筆者が判読できた限りでは以下のとおり、順不同。本当は他にももっとある。
 伊万里すみ子、日野日出志、バロン吉元、永井豪、ビッグ錠、花小路小町、いがらしゆみこ、ちばてつや、里中満智子、一峰大二、水島新司、かわぐちかいじ、新谷かおる、東里桐子。
 また、略歴を載せた写真パネルが掲示されていたのは以下の面々、順不同。
 ちばてつや、モンキー・パンチ、矢口高雄、里中満智子。
 その他、「仮面ライダー」はいいとして何故か「オバQ」「怪物くん」「鬼太郎」「アトム」「バカボン」関連の人形が飾られている。そしてやたら雑誌「コミックアルファ」のポスターが目に付く。
 筆者の後の来訪者の様子を見ていると、どうも全国から愛好家が殺到、行列が切れ目なく、という様子はない。尤も、当日の天候のせいか、街でも人影はまばらだったのだが。押印係の人達に訊いたところでは、当日一番遠くからの来訪者は弘前から。その弘前の人とも歓談したが、彼は今回のスタンプラリー開催を知らずに偶然当地を訪れたという。 ひょっとしたら、スタンプラリー目掛けてやってきた中では筆者が最も遠方だったのだろうか。
 一階は喫茶店、売店。売品の品揃えは絵葉書、キーホルダー、Tシャツ、ハンカチ、タオル、メディコムトイのフィギュア、置き物、コレクションカード、漫画本等。石森関連だけでなく、他の漫画家の関連商品も少なからず置いてある。ただ、非営利の店という割りには高い品物が多い。筆者は「仮面ライダー」のキーホルダーを買う。
 カウンター前では「スカイライダー」ビデオ上映中。棚にビデオテープは「ライダーシリーズ」「009(カラー)」「童夢くん」「シュシュトリアン」等、LDは「キカイダー二部作」「新旧009」「嵐」「17」「ロボット刑事」「ZO」「ズバット」等が並んでおり、客の希望に応じて上映するという。
 店を退出したのは午後四時頃だったと思う。
 総じて、当然だが施設も事業も始まったばかりで発展はこれから、という印象を受けた。ショウジキなところ、石巻方面観光の一環で立ち寄るならともかく、この店だけの為に遠方からわざわざ泊まりがけで訪問するほどの施設に非ず。石森関連の貴重な資料を数多く展示、とかいうわけでもない。売店の品物も確かに独自色はあって「ここだけ」というものではあるけれど、まだまだ充実とは言い難い。いずれ、今後地元や我々愛好家が如何に支援していくかであろう。
 スタンプラリーは面白い企画であったと思う。小型印のうまい活用。今後も石巻市内郵便局には、いろいろな機会にふれて楽しい、地元ならではの企画をして欲しいものだ。

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