「石森章太郎ふるさと記念館」第八十九回訪問記

平成二十五年七月十三日(土)

 出発時点では雨ではないがやがて降り出す。雨では速度を落とさざるを得ず、ふるさと記念館まで一時間かかる。十六時過ぎの到着。エントランスに「今日はもう来ないと思っていただろう」と言うと向こうも肯定する。既に夕刻なれば人影もまばら。
 第44回特別企画展「EVANGELION100.0」十月六日(日)まで。二年前は「エヴァンゲリオン展」だったが今回のカナ表記は「ヱヴァンゲリヲン」。今まで大都市圏を巡回して来て最後がこの僻地。筆者は相変わらずそれらの作品を見ていない。
 企画の室内には仕切り板が立てられて一見、迷路のようになっている(館長を呼びに行く時は見付けるのが大変だと言う)。関連商品がぎっしりと隙間なく詰め込まれ、今まで開催された中では展示点数は多い方だろう。各方面への多彩な展開が今回の見物だが、やはり子供向けの商品はあまり見当たらない。ヱヴァの絵柄のシャツや靴を着用したり、エヴァンゲリオンごっこをしたりする幼児は見た事が無い。
 エントランスに流れていた音楽は「ふしぎの海のナディア」Ν-ノーチラス発進場面のようにも聞えたが、ヱヴァ音楽なのだろう。
 常設の「生家の秘密」故障中。
 待望の「蔵」再開。但し、厨房、カウンター部分は仕切り板で覆われて閉鎖中。建物自体はヱヴァンゲリヲンショップと言う看板を掲げ、蔵部分内で特別企画展関連商品を陳列、販売している。店員は見知らぬ人達である。何も買わぬ。飲食店機能は未再開なので、「一日過ごせばサバイバル」は当分続く。
 暖炉のそばに宮城県社会福祉協議会の広報誌「いきいきライフみやぎ」夏号の抜粋が置かれている。「おらほの記念館をサポート/来館者を温かくおもてなし」生家のボランティアガイド「さぶ」元会長で今は顧問の佐藤愉一氏の記事。活動内容や氏の思いが綴られている。記事中に、萬画館について「地元には何もなく、みんな石巻に持っていかれるとの思いがありました」と言う一節がある。
 庭の紫陽花が鮮やかである。
 雨脚が強くなり、一時は雨樋から滝の如く水がほとばしり出る。暫く出発を控えるが、閉館時刻の十八時頃に出発。雨具を着ていても十九時半頃の帰宅時には下着まで水が浸入している。

 特別企画展については例によって論評を差し控える。
 先日の友の会総会でも話が出たが、今回の佐藤愉一氏の記事にもある石巻市への対抗意識、生誕地石森地区の誇り。登米市民の怒りを買った昨年のTOYOTAのテレビCМのように、今でも石巻市は隙あらば持って行こうとする。何度でも言う、映画を見に通っていたとしても、晩年に住む「つもり」だったとしても、「章太郎の生誕地」は石巻市ではなく、現在の登米市である。隙を見せないよう、ふるさと記念館関係者は不断の努力をしなければならない。

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