「石森章太郎ふるさと記念館」第八十四回訪問記

平成二十五年一月二十七日(日)

 八時二十五分、定刻どおり水沢で乗車するが、窓口で往復切符を買う際に「仙台・一ノ関間での人身事故発生による遅れ、ここでは詳細は不明」を告げられる。果たして一ノ関発小牛田行は八時五十五分発のはずが九時過ぎの発で、石越には十六分ではなく二十分過ぎの着。市民バスは十九分発なのですぐ駅前バス停に走るも、既に発車したかどうかは定かではない。結局、その市民バスも遅れて来るので何とか間に合う。全く綱渡りの乗り継ぎ。
 天気は良い。石越駅前から十数人が乗り込み、市民バスとしては大いに賑わう。
 石越町内にローソンが開店している。
筆者は独り石森仲町で下車、石森局ATMに立ち寄ってから館に向かう。
 工事中にて正面の門からは入れず、その脇から入る。本館に入るとすぐSEI氏がいる。やがて盛岡組とも会う。恒例の章太郎メモリアルデー、そして竹宮惠子トーク&サイン会。エントランスには演壇は既に設置されているが客席はまだである。
 生家に向かう。本館と蔵の中間にテントが張られ、友の会の人達が玉こんにゃくと汁物を提供している。友の会幹部から筆者が呼び止められるので、SEI氏、盛岡組と共に頂戴する。当地にしては珍しく大雪が積もっており、寒い時に温かい食品はありがたい。
 生家。この日から二月二十四日(日)まで「ペン画家 阿部浩”心の風景”展」を開催中。仙台市の教員兼ペン画家の風景画の展示。宮城県を中心に、一関市や群馬県の風景を題材にしている。中にはこの生家を描いたものもある。皆で鑑賞する。そして二階に上がる。
 旧幼稚園内ではマンガ教室や凧作り。今回の餅バイキングは屋内で提供。各々、搗き立ての餅を腹一杯食する。
 外で追加の餅搗き。SEI氏と盛岡組は交代で杵を執り、非力な筆者は写真撮影に徹する。
 福島県の知人に会う、昨秋の萬画館再開の日以来。いつもの各常連氏も来ている。
 十三時半から竹宮惠子トークショー。その前に会場である本館エントランスに向かう。館の人達が客席用の椅子を運んで来るので、居合わせた常連達が自主的に設置を手伝う。
 初対面の人から暗黒大公さんですかと声を掛けられる。以前からの読者だと言う。
 開会の辞は館の畠山氏。友の会の小野寺会長の挨拶、布施市長の祝辞。市長からは、四月からのJRとのディスティネーションキャンペーン実施、それまでに蔵を復旧したいと言う発言がある。市長も子供の頃は「漫画を読むと馬鹿になる」と言われたと言う。そして防衛大臣小野寺五典から祝電。
 聞き手の工藤稜入場。続いて竹宮惠子。来場していた中年女性が入場する竹宮に泣きながら取りすがって暫く手を離さない、熱狂的ファンであろう。南の方の出身の竹宮は当地の雪氷に驚いたと言う。
 工藤と竹宮の一問一答方式で進む。章太郎作品との出会い、章太郎著「マンガ家入門」、高校修学旅行での章太郎宅訪問等、漫画界入りの経緯が語られる。
 竹宮は「ちばてつや」の影響を受けて本当は少年漫画家になりたかったが、諦めたと言う。この後も、少年、少年漫画に対する思いが随所に出て来る。
 「地球へ…」のソルジャー・ブルーと009島村ジョーの相似については初めから意識していたとの事。竹宮はカリスマの無いジョミーの方が良いと言う。
 「風と木の詩」についてや、手塚治虫と章太郎の作風の比較論も話題になる。
 トキワ荘を目指したと言う大泉サロン、萩原望都との共同生活。そして故・佐藤史生の思い出。作品以外で人とつながるのを極端に嫌い、対談の企画も断ったと言う佐藤。ふるさと記念館での個展開催には竹宮も驚いたと言う。
 今回展示されている原画ダッシュの特性や研究。京都精華大では「漫画の解る司書」を育てると言う。今や一般図書館に普通に漫画が置かれている時代である。大学での人材育成の話も出る。
 最後に質疑応答。探究心、好奇心が大事な事、竹宮自身が少年が好きなので男性主人公が多い事、漫画の技法について等が語られる。
 一時間でトークショー終了。館から贈り物贈呈の後、竹宮と工藤は休憩の為に退場。椅子を片付けてサイン会の準備。
 やがてサイン会開始。まず百人分サインをして、それから記念撮影と言う段取りは前回と同様。
 工藤がエントランスに出て来て、一般客と談笑している。
 記念撮影の後に会期中応募を受け付けていたサイン色紙プレゼントの抽籤会。応募券の入った箱五つが代わる代わる持ち込まれ、竹宮が引く。当籤者がこの場にいれば直接交付、いなければ後で送付との事だが、当籤者は一人も名乗り出ず。
 最後に、予告に無かったプレゼントじゃんけん大会。勝者に原画ダッシュプレゼント。筆者は賞品獲得どころかじゃんけん自体、一勝もできず。
 小野寺弘幸氏夫妻来館。幸子おっかさんに会うのは地震発生の後は今回が初めて。
 最後に企画をもう一巡見てから、盛岡組の自動車に便乗して石越駅で降ろしてもらう。駅の待合室に、ふるさと記念館の袋を持った人が二人いて、暫し対話する。一人は上りに乗って先に帰る。もう一人と筆者は十八時二分の下りに乗り、一ノ関で別れる。水沢着は同五十五分。

 工藤の適切な進行により、興味深い噺をいろいろ聴けた。竹宮の少年漫画に寄せる情熱。また、大学での人材教育にも関心を持った。
 それにしてもわずかな休憩時間を挟んで次々に行事をこなして、竹宮は強靭だと思う。
 最早、伝説と化した観のある佐藤史生。最初で最後の個展はそんなにすごい事だったのか。
 生家のペン画展も見応えがあった。記念館施設は今後も地元芸術家の展示の場として機能して欲しい。
 今年もまた我が「帝國」の読者から声を掛けられる。読者の存在は大きな励み。今後もよろしく。

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