「石森章太郎ふるさと記念館」第六十回訪問記

平成二十二年一月三十一日(日)

 前日は手持ちの佐々木剛出演作品を鑑賞する。LD「仮面ライダースペシャル2」、DVD「仮面ライダーTHE MOVIE BOX」「東映ヒーロー THE MOVIE BOX」。要するに2号ライダーと「宇宙鉄人キョーダイン」である。
 七時六分水沢発上り、一ノ関を経て石越着は八時二十二分着。小さな暖房器具が一つあるだけの寒々とした待合室で九時十九分のバスを待っていると熊谷副館長が現れる。九時十四分の下りに乗って来る後述催し物の関係者を迎えに来たと言う。やがて現れる関係者達、仙台からsuicaで乗車するものの石越の改札はsuica未導入で窓口精算。
 熊谷副館長運転の館公用車に便乗して館に向かう。到着後は生家に直行して挨拶。この日は小野寺おっかさんと、章太郎の小学校での恩師が駐在。暫く過ごしてから「めだか」にも挨拶し、それから本館に入る。この日は章太郎メモリアルデー。恒例の餅搗きや凧作り等。
 第33回特別企画展「佐藤史生展」十二月十九日(土)から二月十四日(日)まで。「郷土が生んだ漫画家シリーズ」第3弾である。
 少女漫画の作家なれば筆者は全く知らぬ。展示の冒頭に本人の挨拶文と、同業者からの祝辞色紙が掲示される。原画の他、本人の写真、仕事場の再現、掲載誌等が展示されている。一とおり目を通す。
 萬画館の常連氏とばったり出会い、以後、氏と行動を共にする。
 「めだか」でカレーを喰う。
 再び生家。生家の前で客が中を窺っていれば、筆者は無料だから見て行くべしと中に招き入れ、いつもの調子で案内する。この日案内するのは県外からの中年夫婦と県内からの夫婦男児の二組。男児はゴーオンゴールドのジャンパーを着ている。ゴーオン男児の父はまさに変身ブーム世代で、ここを訪れた喜びを熱く語る。
 また企画や常設を見る。記念館ウェブの掲示板には以前から時折、企画展の他所開催の希望が書き込まれているが、今回はそれがいつもよりも多い。そして関係者によれば、東北地方以外、遠方からの来館者も少なくないのだと言う。
 事務室で熊谷副館長や女子職員達に雑誌「宇宙船」の特集「想い出のライダーヒロイン」を見せる。筆者は前々から赤ジューシャの館制服採用を主張している。しかし昭和の特撮ヒロインの愛らしい事よ。
 十三時半から本館エントランスで今年のメモリアルデーのスペシャルゲスト、佐々木剛トークショー。
 まず熊谷副館長、続いて友の会小野寺会長、登米市の佐藤教育長挨拶。教育長は自説の「仮面ライダーはイナゴ」説を力説する。あの顔はバッタではなくイナゴであり、子供時代に中田町に遊びに来ていた小野寺丈もイナゴ等の当地の自然に接しているはずだと。
 トークショーの司会は佐々木の三つ目のファンクラブ・弐剛会の渡邊尚志氏が務める。そして佐々木入場。自ら、ヒーロー当時の姿からの変貌を「驚いたでしょう」と言う。
 渡邊氏がテレビ番組「仮面ライダー」の企画から佐々木登用までの流れを述べ、佐々木は当時の事情について語る。佐々木の口からいろいろと危険なネタも飛び出して、渡邊氏が制止するほど。筆者も敢えて伏せる。佐々木と章太郎は実はあまり会ったことが無いのだと言う。また、「キョーダイン」についての思い出は無いとの事。
 佐々木の生い立ち、芸能界入り、栄光と挫折、そして復活。芸能界復帰については石橋正次の援助を受けたと言う。
 やがて話題は舞台「改造人間哀歌」に移り、その宣伝が続く。
 佐々木もまた平成ライダー批判。ライダー同士の戦いに苦言を呈し、更に「先生存命なら許さないだろう」と、現シリーズへの最大級の非難をぶつける。
 今後の佐々木の活動予定に触れて、十五時頃にトークショー終了。会場を片付けて、公演DVD等、関連商品購入者限定のサイン会開始。筆者はパンフレットを一冊入手する。渡邊氏は佐々木のサイン会は遅筆だと告げる、確かにさらさらと書き上げるのではなく筆ペンで一画ずつゆっくりと刻み付けるように書くので時間はかかりそうである。その間に「めだか」で油麩そばを喰ったり、また展示室や映像シアターの「小川のメダカ」を見たりする。「小川のメダカ」では中田町は昔の自然を失った都会として描かれていて、少年時代の小野寺丈が自然を満喫したと言う証言と矛盾する。
 十七時近くになってやっと待ち行列が終わりに近付く。最後に筆者が色紙にサインを受け、記念撮影。
 暫し事務室にいる。実にサイン会に二時間を費やした佐々木、事務室内に腰掛けて休憩。関係者達も引き上げて来る。
 十七時四十五分頃に館を出て、常連氏の自動車で駅まで送ってもらう。十八時二分の下りに余裕を持って間に合い、五十二分着。

 ネット上で検索してみると、記念館ウェブの掲示板以外でも、佐藤史生展の開催に驚いている人、見に行って感激している人、遠くで見に行けなくて残念がる人の記事が沢山出て来る。今までに見ない反響の大きさ。手っ取り早く大量集客を図るなら「アンパンマン」に限るが、今回の特別企画展のような評判こそふるさと記念館にふさわしい。固よりファンでもなく、見ても特に所感の無い筆者は世間に対して申し訳ないと思うべきなのか。
 今回の佐々木トークショーの実態は舞台公演の宣伝と行商である。特にトークショー後半は宣伝が長過ぎて多少退屈した。大都市圏の人々が石森両館をなかなか見に行けないように、地方在住者は舞台公演に触れる機会はあまりない。
 佐々木のトークの内容自体は定説に対する異議やかなり危険な裏話満載で、とてもここには書けない。やはり催し物はインターネットの記事を読んで行ったつもりになるのではなく、直接行くべきである。石森両館に気軽に行ける場所に住んでいて本当に良かったと思う。地方在住で不便な思いをする事は多々あるが(「シンケンジャーVSゴーオンジャー」も岩手県に来るのは二月)、石森両館については「BLACK」研究家、特撮愛好家として実に幸運である。
 藤岡、佐々木、宮内はテレ朝ライダーを非難する。しかし第一期、第二期ウルトラの主役達は最新作を非難するどころか嬉々として出演している。この違いは何か。
 シュガー佐藤、鎌田洋次、そして今回の佐藤史生で「郷土が生んだ漫画家シリーズ」は打ち止め。しかし世界的な大家のが未開催であるよ。

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