「石森章太郎ふるさと記念館」第六回訪問記

平成十三年二月十日(土)

 朝九時、ゴーグルグリーンと水沢駅に集合。十二分発の上り列車に乗り、石越着は十時八分。現地も晴天、温暖だがそれ故に融けかけた雪で足元がぬかるんでいる。十五分発の宮交登米バス、石森経由佐沼行に乗車。全く同時刻に若柳経由佐沼行というバスもあるので要注意。
 石森仲町で下車。
 記念館の西側の或る民家の前に何故か「ゴレンジャー」原作絵(粟野蒲鉾店の「ゴボウレンジャー」と同じ絵)の看板が立て掛けてある。一体何だったのだろう。
 去る一月二十五日に記念館の門前に昔懐かしい丸ポスト設置。実際に郵便物を投函できるし、その郵便物には受持集配局である石森局の消印が押される。少し売店を見てから本館に入る。
 今回の見学目的は「矢口高雄30年の軌跡」の「PART2 平成の絵師・矢口高雄の世界」。大成、円熟期の矢口作品の展示紹介。当初は二月十八日までの予定で、我々も会期末近くぎりぎりの見学のつもりでいたら、後で四月一日までの会期延長が発表される。
 エントランスでの入場券購入時のくじ引き、当たったのは筆者は「茶屋でのジュース一杯」だったがゴーグルグリーンは何と石森カレンダー! 彼はもう今年の運を使い果たしたな。
 企画展示室に入る。今回も美しく大きな絵が多数展示される。「三平」愛好家のゴーグルグリーンが「この絵は何々の場面」と解説する。
 まず今年の矢口カレンダーの原画と完成品(印刷物)の比較展示。原画に比べて印刷物は若干色彩が濃い目に印刷されているようだ。躍動感あふれる精緻な作品群である。
 原画の他、矢口画が採用されたポスターや広告類(製薬会社の商品や地方自治体の環境保全、家電会社のビデオカメラ等)も展示される。羽後銀行(現・北都銀行、矢口の嘗ての勤務先)の「釣りキチ三平預金通帳」のポスターあり、羽後銀行が他行との合併で北都銀行になったのが平成五年だから、かなり前のはずである。通帳の名義は「つりきち 三平様」。三平の姓名は「三平三平みひらさんぺい」、字面だけ見るとわけが分からぬ。
 ショーケースの中に関連商品。日本アニメーション作品のDVDや「三平」ラベルの日本酒や洋酒、ジャケットが矢口画のカラオケカセットテープ等。そのカセットテープのジャケットの原画も展示されている。FM‐TOWNS用の未開封CD‐ROMには筆者大受け、あまりにも懐かしかったものだから。「マルチメディア」という言葉が今の「IT」のように流行った頃だったか。
 今回の展示で一番感銘を受けたのはカレンダーの絵のうちの一枚「幻の飛翔」。蒼天をときの群れが飛んで行く図。文字どおり鴇色の鴇と空の色の対比が実に美しい。現在は鴇の群れが大空に舞う様は幻想でしかないが、佐渡の繁殖事業がうまくいけば、将来この絵のような光景が本当に見られるだろうか。
 一通り鑑賞して企画展示室を出る。エントランスにはPART1の時とは入れ替えで他の漫画家達からの祝賀色紙。今回は安彦良和や山根青鬼、望月三起也、一峰大二等。来館者への色紙プレゼントには山根赤鬼のがあって、今回の矢口展には両「鬼」が参加した格好。
 去る一月二十八日の石森章太郎命日に合わせて、墨汁一滴in石森と小野寺電気の両ウェブページで募集した「先生宛のメッセージ」が掲示されている。
 今回の特別企画展はPART1、2両方の入場者にプレゼントあり。我々二人も貰う。実は館の係員氏が我々の姿を憶えていた。係員氏と暫し談笑。
 常設展示室の本棚、「Black」原作萬画は六巻本と三巻本の二種あり。小学館てれびくんデラックス愛蔵版「仮面ライダー超全集」は「1号・2号・V3・ライダーマン」と「BLACK・RX」の二冊、去年の再版本。「クウガ」のはまだ無い。
 当日も家族連れが多く、幼児から高齢者まで多くの人が訪れている。車椅子の老婦人、常設展示室入り口のガラスの床面の上を車椅子で通っても大丈夫かしらと心配するのに係員氏が答えて曰く「五百キロまで大丈夫ですよ」。
 茶屋にて食事。筆者は先程の籤をペプシコーラに引き換え、「佐武市サブレ」を買い、蛸焼きとピザを食す。いつもはCDラジカセから音楽が流れているのだがこの日はそれが無い。
 記念館テレホンカード二種を買う、絵柄はスカイライダーの絵、バイクと飛行の二種。ゴーグルグリーンは石森・矢口カレンダー専用額を購入。
 店の品揃え、「アギト」関連はヘルメットやプロテクターが入荷。ストロンガー人形は品切れのまま。
 十四時頃退出。
 「生家」は工事中、発注者は中田町長。小野寺家の私的改修ではなさそうだ。以前ここにあった四角ポストは撤去済み。「生家」の戸口の貼り紙によると、形式上はポストが「生家」前から記念館前に移動したということだ。
 小野寺電気に寄ってみると小野寺幸朗氏は屋根の上で雪下ろし中。店を出て下から屋根の上の幸朗氏に手を振る。
 伊勢岡神明社にいると幸朗氏がやって来る、挨拶できてよかった。
 バス出発まで少し間があるので歩く。石森仲町バス停は目立たなくて判りにくい、よく見落とす。晴れてはいるが風の強い日。路傍の自動販売機はどれも泥だらけ。
 今堂から乗車、十四時四十分過ぎ。石越発の下り列車は十五時十二分。水沢には十六時二十四分着。
 今回の企画展示も貴重な原画を沢山見られてよかった。原画の一枚毎が結構大きいので、細部までじっくりと鑑賞できる。前述のとおり会期が一ケ月半も延びたので、未見の方は是非見学すべし。三月末の春休み時期の見学が可能になった。
 筆者は五度目、ゴーグルグリーンは三度目の来館で遂に館の係員氏に顔を憶えられて、石巻市のみならず中田町でも愈々いよいよ「常連」になってきた。宮城県での「石森プロジェクト」を取材してきて、改めて人の出会いの素晴らしさを感じている。
 度々触れているがこの記念館はいつ見学しても家族連れ見学者が多い、大変結構なことである。幼少時に石森作品に親しんだであろう親達が子供達を連れて来ているのが目立つが、高齢者の姿も少なくない。決して一部愛好家、研究家の溜まり場等にはなっていない。「ふるさと記念館」とはよく名付けたもの。
 門前の丸ポスト、門の古風なたたずまいとよく合致している。石森局がすぐ近くなので、局で切手を、売店で絵葉書を求めて、館内で旅の便りをしたためて丸ポストに投函というのも趣があるだろう。筆者も次の訪問時は誰かに絵葉書を出すか。

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