「石森章太郎ふるさと記念館」第五十四回訪問記

平成二十一年一月二十五日(日)

 前の晩はDVDで映画「8人ライダーVS銀河王」鑑賞。公開当時は見ておらず、初めて見たのは十年程前にレンタルビデオで。強いのか馬鹿なんだかよく判らぬ銀河王。釣りをしたり野球選手になったりそして今回は宇宙勤務と多忙な章太郎。全く変身を解かず声も違う七人ライダーだが全員マシンに乗っている分、「RX」の十人ライダーよりはマシ。やはり弱いぞ再生怪人軍団。基地炎上場面のあの這うような業火はやはりCGではなく本物の火炎にしか無い迫力がある。名台詞「日本を象徴する、あの富士山が我々を守ったんだ」。
 珍しく新番組「仮面ライダーディケイド」を見てから出掛ける。水沢から十時九分の下り列車に乗り、十一時十五分石越着。使えるバスの便はもう無いのでタクシー利用。運転手に行き先を告げると、運転手は今日は既にもう何往復も記念館に客を運んでいるが何かあるのかと問うて来るので催し物と筆者の常連振りを一通り説明する。
 現地到着。恒例章太郎メモリアルデー。南側駐車場で餅き、四切れ喰う。関係者各位に挨拶。温暖な日。
 敷地内、売店兼軽食の建物「めだか」に入り章太郎実弟にして本館の元館長・小野寺弘幸氏に挨拶。
 一度敷地を出てすぐ近くの生家に向かう。生家に入る時に小柄な男性とすれ違う、中に入ってから駐在の係の人達から「今出て行ったのが今日のゲスト」と知らされる。座敷にも上がってみるがここでは特に何か開催中ではないようである。
 また「めだか」に戻って休憩。そこで熊谷副館長から先程すれ違ったゲスト・中村ブンに引き合わされる。中村に挨拶して昨夜の映画鑑賞の旨を告げる。中村は「銀河王」出演者。ゲストのある日は「めだか」の二階が控室として利用されている。
 油麩そばを食す。
 本館。第29回特別企画展「鎌田洋次展」十二月二十日(土)から二月二十二日(日)まで。郷土が生んだマンガ家シリーズ第2弾。これも筆者は今まで知らなかった漫画家である。
 誰かのアシスタントの経験は無く、現在スポーツ漫画を多数描いていると言う。サッカーや野球の他、競輪、スキー、登山のような珍しい題材の作品もある。見入る。
 館の庭で萬画館の板橋社長と会い、今度の土曜日の訪問予定を告げる。
 十三時半の少し前から本館エントランスで催し物開始。題目は「中村ブン トーク&ミニコンサート『ありがとう石森先生』」。
 中村ブンは俳優、ギター奏者、シンガーソングライター。「柔道一直線」でデビュー。三十年前に出した歌「かあさんの下駄」が最近また注目を集めているのだと言う。
 司会は熊谷副館長。友の会小野寺会長、登米市の佐藤教育長から挨拶。
 共にギターを持って中村と相方の箱守寿夫(またの名を筑波山がまの助)入場。喋りは中村で、中村歌唱の時に箱守もギターを演奏する。前日に現地入りして生家等を見て回ったと言う。中村は「かあさんの下駄」の人気再燃を「三丁目の夕日」や「がばいばあちゃん」の風潮の上に位置づける。
 中村の語る章太郎との出会い、その後の交流。中村は章太郎に大いに気に入られ、中村の出したシングル四枚のうち三枚は章太郎がジャケットを描いて、レコード等を出せたのも章太郎のおかげだと言う。三千人を前にしてのNHK歌謡コンサートよりも本日の方が緊張すると話す。
 歌唱の曲目は下記のとおり。

 中村の今までの人生、少年院慰問で出会った少女、少年野球への思い、これも恩人のフランキー堺の事等を語り、また歌う。この日は仙台市の荒巻少年野球クラブが来場しており、その子供達を起立整列させて「雷監督」の合いの手を仕込む。本当に章太郎は声を荒らげたりしない、自分に厳しい人で、その為にストレスを溜め込んで早逝したのではないかと中村は言う。
 喋りや歌の途中、中村本人が感極まって涙声になることもあり、また観客の中にも泣いている人がいる。後で聞けば館職員も泣いていたと言う。
 企画の入り口脇に台が設けられて、「プレイコミック」に掲載された章太郎「Knight and n day」#5「かあさんの下駄」のページが置いてある。中村の歌を章太郎が漫画化したもの。筆者は丁度その台のそばの席に座っているので、中村が当該曲を歌っている時に漫画を手に取って読む。
 サイン入りポスターじゃんけんで三名にプレゼント。
 十五時十分頃に終了。
 持参した「銀河王」DVDのケース内側に中村のサインをもらう。中村は自分から「羅門ブン」と書き添える、即ち役名を憶えていたのだ。この名前でサインしたのは初めてとの事。そして中村、箱守と並んで記念撮影。「銀河王」撮影時の話を多少聞く。
 再び「めだか」に入店してカレーを喰う。カウンターに立つ小野寺弘幸氏が「おやっさん」なら、西條女史以下女子従業員達は山本リンダ、島田陽子、高見エミリーか。
 企画もまた見ておく。
 16時半頃に辞去。記念館の近所の神社・伊勢岡神明社参拝後にその向かいの石森郵便局前からタクシーに乗るが運賃は往路と同じ、もっと歩くべきだったか。十七時十五分に石越から下りに乗車、一ノ関で五十分待ちで十八時五十三分水沢着。石越から一つ次の便、十八時二分に乗っても着の時刻は同じ。

 公共交通機関利用の遠来の客はバスの時間に合わなければタクシーを使わざるを得ない、今まで何度も指摘している事。萬画館はタクシー会社と提携しているが、登米市栗原市のタクシー会社もふるさと記念館の催し物の日を把握しておいてその日は重点的に石越駅に車を配備するくらいの事はしてもいいと思う。
 中村ブンの噺は雰囲気が湿っぽくなる部分もあったが章太郎への感謝と敬意が満ち満ちていて、これもまた章太郎の遺徳の一端であろう。世界初「羅門ブンのサイン」は家宝である。催し物では「銀河王」についての噺は出なかったが後でサインをもらう時に聞けたので良かった。

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