「石森章太郎ふるさと記念館」第三十四回訪問記

平成十八年一月二十八日(土)

 八時二十六分水沢発の上り電車、一関乗り換えを経て石越到着は九時二十三分。改札を出ると様子が違う、売店が消滅している。
 石越郵便局ATMで資金調達。バス時刻まで少し間がある、既に無人の「くりはら田園鉄道」石越駅のホームに入ってみる。鉄道自体、十九年三月の廃止が決まっている。ホームには「細倉()方面乗降口」と表示してあるが、単線でここが始発(終着)駅なのだから方面も何もあるまい。改めて見ると、如何にも田舎の鉄道の雰囲気を残している。尚、切符の自販機も無く、そのまま乗車して下車時に運賃を払う、バス同様の方式。定期券や回数券は隣の床屋で売っている。
 一人、四十七分の市民バスに乗る。筆者の後から乗車する地元客は運転手とは顔なじみらしい。乗降の度に運転手が帳簿に記録をしている。バス停の表示も車内放送もまだ「石越町役場前」のままだが、最早わざわざ改めるつもりも無いのか。車内放送は「お得な回数券」の販売を告げているが、百円バスなのだから当然そんなものもう販売していない。
 十時過ぎに記念館前で下車して「生家」に直行。入り口の前に立つと小野寺おっかさんが戸の鍵を開ける。
 恒例の光のページェント写真展、一月二十一日(土)から二月六日(月)まで。県内外から寄せられた作品群。
 近隣の市から来た老紳士と幼稚園児の孫の男児が中を見て行く。無邪気に「仮面ライダー大好き」と言う男児に対して旧作世代人が「お前が今見ているのなんか仮面ライダーではない」等と言ってはいけない。
 小一時間ほどしてから蔵楽入店。西條、千葉両女史。軽くハンバーグランチと花うどん。昼飯時、そこそこ客は入っている。
 明日から放送開始「仮面ライダーカブト」の商品は昨日入荷したという。「THE FIRST」の「ソフビ魂」二種も販売中。人形を手に店員相手にシリーズの歴史について講釈。
 十二時頃にやっと本館入館。第5回自主企画展「『みっちゃんの夢展』〜伊藤美智子(登米市出身)銅版画創造の世界〜」一月二十一日(土)から二月十九日(日)まで。登米市出身の銅版画家(本業は学童保育)の作品展、入場無料。
 企画の室内の壁面に作品等が掛けられているだけ、今までで一番地味で手の掛かっていない展示。「高校生マンガ展」ももう少し派手である。銅版画は筆者も高校の美術の授業で取り組んだことがある。また、アルフレッド・デューラーの名前だけは知っている。
 単色、多色いろいろ展示されているが、青や緑の単色のが好きだ。実に細かいところまで彫り込まれている。同じ原板でも刷色の違いでまた印象が変わる。当人は赤の色彩が好きだそうだ、だから「I LOVE 9条」等と書いてある作品があるのか。
 作家当人も来場している。彼女との問答は次のとおり。

 「一枚の原板から何枚くらい刷れるのか」「二十枚くらい刷れる」
 「彫るのに使うニードルは彫刻刀のように何種類も使い分けるのか」「使うのは一本のみ」

 押し寄せるというほどではないが客は入っている。作家当人の地元の知人が多数来ているようだ。
 エントランスの梁の上に「響鬼」の人形数体が新たに飾られている。柱には「カブト」の番組ポスター。各方面からの年賀状も展示されている。今年は「仮面ライダー生誕35周年」、「カブト」はその記念番組だが職員に訊いた限りではここでは関連企画の予定は無いらしい。
 常設では引き続き「ロボコン」「チョビン」原画展示中。何故か常設入り口の入場券刻印機に布が掛けられて停止中。
 晴れてはいるが風が強い。雪は少ない、路面は殆んど乾いている。館の庭の池には氷が張っている。
 再び蔵楽、ざるそば。そして知人への贈物用にコースターを一つ。食事と品物、二千二百七十円。
 十四時二十一分のバスで石越駅に向かう。十五時一分の下り電車は三分ほど遅れ、水沢着は十五時五十分、雪模様。

 銅版画というとデューラーや、十九世紀のヨーロッパの博物図鑑の図版を思い浮かべていたが、伊藤作品は硬さの無い、素朴な味わいの作品。今回のような、地元出身作家の作品展も面白いと思う。
 石越駅の売店消滅で不便になった、セブンイレブンは駅から少し離れている。くれぐれも駅自体の無人化だけは避けて欲しい、無人駅では停車時に電車の前の車両の扉しか開かないので乗降に不便だ。

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