「石森章太郎ふるさと記念館」第二十三回訪問記

平成十六年一月二十五日(日)

 当日執行の水沢市議会議員補欠選挙の投票は金曜日のうちに済ませておく。選挙権を行使しない奴には政談の資格は無い。
 新番組「仮面ライダー剣」は留守録にして八時二十六分の上り列車に乗り、石越着は九時二十五分。晴天で風も穏やか、積雪は水沢市に比べればずっと少ない。
 駅前バス停には共に「石森経由」で違う行き先のバスが二台並んでいるので、運転手氏にふるさと記念館に行く旨を告げて佐沼行に乗る。乗り違えに注意。
 がら空きの車内でふるさと記念館について運転手氏と会話。「どこから来たの」と、やはり一目で旅人と判るらしい。
 石森仲町で下車。車内放送では以前は「いしもりなかまち」と言っていたのが今回は「いしのもりなかまち」になっている。
 蔵楽に入る。いつもの人々に挨拶。まずはコーヒー一杯、ここでもブラック。
 存命なら章太郎六十六歳の誕生日、第3回章太郎メモリアルデー。
 十時から隣の旧石森幼稚園で「親子凧作り」と「マンガ教室」。「教室」の講師陣は東北高校マンガ部の面々。小中学生の机の間を回って指導していく。熱心に質問をする小学生がいる。筆者は例によってその様子を見て回るだけだ。
 老人達の一団は地区の老人会。記念館で招待したという。
 十一時から南側駐車場で果報餅配布。
 蔵楽できのこピラフ。店内では隣接する岩手県花泉町在住の工藤春男氏の水墨画展開催中。前回の鉄道写真のうち御召列車のは隅の方にまだ飾ってある。既に「剣」の新商品を売っている、やはり地元はこうでなくてはならぬ。
 生家の芳名帳に中国大陸からの人の記帳を見つける。
 旧幼稚園講堂に移動する。十二時半から矢口高雄特別講演「石森章太郎と私」。場内ほぼ満席、最後列に近い辺りに着席する。
 式次第の来賓名簿には九十人掲載。町役場、町議会、学校、郵便局、農協等、官民の地元顔役が殆ど揃っているようである。
 開会の挨拶は友の会の佐藤会長。続いて、町長と町議会議長の祝辞。三浦町長の祝辞の中で、「遠来の常連」五人の名前が紹介される。東京、埼玉、茨城、山形、岩手。千葉議長は章太郎と同い年、学年は議長が一つ下だと言う。言われて気づいた、筆者と章太郎は共に寅年。
 講演。開口一番「漫画家の講演会にしては聴衆の年齢が高い」と言って笑わせる。矢口と章太郎は同年代というところから噺が始まり、少年時代に「雑誌投稿の東の横綱」小野寺章太郎に抱いていた思い、銀行勤務を経ての漫画家転身、漫画の地位向上に於ける功績者達、晩年の章太郎との交流、等が語られる。尚、少年時代の「西の横綱」は「確か松本零士だったか」とのこと。
 特に印象深いのは漫画低俗、小説高尚論に対しての反駁。曰く、そもそも絵画は情景描写、小説は心理描写というように機能が全く違うのだから優劣等無い、その両者を組み合わせた漫画のどこが低俗かと。熱弁を振るう。
 また、「神様」手塚と「王様」章太郎が漫画の世界を広げ、高めるのに力を注ぎ、藤子・F・不二雄が子供達の為に「入り口を守った」として、各人の功績を称える。筆者はこれを聴いて、故・山本直純が小沢征爾に語ったという言葉「お前は頂上を目指せ、俺は裾野を広げる」を思い出す。
 一時間と少しで終了。
 十四時からの凧挙げを見物する。丁度いい風が吹いて高く揚がっている。雪の田圃、青空、色とりどりの凧、向こうには山々。日本の風景だ。
 三度みたび蔵楽、今度は「磯そば」とハンバーグカレー、新しい献立である。前者はかけ蕎麦にとろろ昆布と青海苔が乗っている物、だしが効いていて大変うまい。ハンバーグカレーは同じ皿にライスカレーとハンバーグとキャベツが盛り付けられた物。筆者は大の和食党であるからハンバーグ、カレー、ラーメンは大好きである。結構な分量があるので満腹。キートン山田のつもりで「余は満足である」と叫ぶ。
 企画の小島功展ももう一回見ておく。小学生も頻繁に出入りしているが大丈夫か。
 今年もエントランスに著名人からの年賀状が飾ってある。役者のうち、藤岡弘、のが見当たらない。
 十五時三十二分のバスで石越駅に向かう。帰りも朝と同じ運転手、今日の様子や感想を語る。駅には五十分頃に着き、十六時丁度の下りに乗って帰りの車内ではひたすら眠りを貪る。

 今年も天気に恵まれて盛況。
 矢口の講演からは、章太郎に対する限りない敬意と彼自身の漫画についての情熱がひしひしと伝わって来た。実に内容の濃い講演だった。
 来年は章太郎門下生の講演を聴きたい。矢口や「ちばてつや」のような同年代漫画家の講演等は度々聴いているが後輩は里中満智子しか聴いたことが無いので、「すがやみつる」「永井豪」辺りの「とっておきの秘話」を希望する。
 ところで、前回訪問記で触れた「水沢市の神社の絵馬」と「中田町の神社の石碑」の件。メモリアルデーには大勢の人が集まると思い、その絵馬と石碑の写真を持参して佐藤会長や近所の人に見せたところ大反響で全員が高い関心を示し、いろいろ情報を教えてもらうことができた。もう少し調査してまとめて、然るべき所で発表しようと思う。

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