前夜は雨で天候が思わしくない。日が改まっても曇天で降り出しそうな空模様。十時半頃、マシンで出発。給油等、寄り道をしてから国道四号線を南下する。路傍の気温表示電光掲示板は十二、三度を指す。
いつも混む平泉町中尊寺近辺を難無く通過、花泉町に入ると行き交う自動車も無い。雨に当たらぬまま十二時半頃に現地着。いつもより遅い出発、到着である。
まず蔵楽に入る。在店の幸朗氏曰く、筆者がなかなか到着しないので小野寺館長と「
エントランス受付で「ファイナルベント」と言って友の会会員証を提示して入場券を受け取る。「ここの職員はコスプレはしないのか」「石巻に対抗して『555』のスマートレディの格好をしたらどうだ」と提案する。いいと思うのだがね。
この日から七月十三日までの第11回特別企画展「THE009大展覧会」。説明は不要だろう、御大の代表作の展示である。筆者自身は「誰がために」世代人だが、幼少の頃から旧作劇場版二本もテレビ鑑賞の機会が度々あって楽しんで来た、折しもブラックゴースト大首領の声を演じた山内雅人がこの週に亡くなっている。「超銀河伝説」はただ無駄に長いだけの作品だと思う。先般のテレ東版はBSジャパンでの放送がテレ朝「ドラえもん」の裏だった為に、たまたま休暇等で在室の時に数本を見たに過ぎない。
今回の展示は原画を全面に押し出す。掲載誌や単行本はあるが、玩具や文房具類は一切無い。この辺りは昨夏の萬画館での「時代を超えたヒーローたち」との差別化になっている。一番初めの連載の原稿から、病床にあってファンクラブ会報の為に描いた物までが前期、中期、後期に分類されて並ぶ。登場人物の服装や顔付きの変遷が興味深い。有名な「きみはどこに落ちたい?」も勿論ある。また、萬画原稿の他に、ソノシートジャケット原画や単品の絵画も数多く展示されている。東北郵政局絵入り葉書に採用された作品等は見覚えがある。
ガラスケースの一つに、原稿が平積みにされて収められている。膨大な原稿量を示す演出だろうが、実に、非常に、大変、何とも、あまりにももったいない「展示」の仕方である。
展示室の入り口と一番奥に、サイボーグ戦士九人の大きな人形が置かれている。人形で場所を占めるよりも、一枚でも多くの原画を見せて欲しい。
アニメ関連の展示も設けられている。二台のテレビセットが置かれ、一台では「怪獣戦争」本編と「超銀河伝説」予告編を、もう一台ではテレ東版のDVDを上映中。「超銀河伝説」のセル画とテレ東版の設定資料、紺野直幸紹介パネルはあるものの昭和の両テレビシリーズの展示が無い。
放送時間帯が時間帯だけに、愛好家はともかく世間一般のテレ東版の知名度は「ゼロ、ゼロ、無いン」状態の宮城県。思いの外、企画の参観者は多くない。筆者と同時に室内にいるのはせいぜい五、六人。静かに鑑賞できるが代表作の展示の割りにはひっそりとしていて
企画を出て常設奥のライブラリーで「快傑ハリマオ」を読む。
館を出て生家に赴く。ボランティアの案内係の女性二人と記念館職員一人が駐在している。案内係の女性達と暫し歓談。やはりふるさと記念館の問題は交通の便の悪さである、自家用車にしても公共交通機関にしても不便極まりない。そして石巻市との接続の難である。手許に地図のある方は宮城県を開いて欲しい、大雑把に、隣接する中田町と石越町をA地点、石巻市をB地点、小牛田町をC地点として三角形ABCを描くと、A地点の中田町とB地点の石巻市の間を自動車で直行すれば三十キロメートルほど。しかし公共交通機関の場合は両地点間の直通便は無く、鉄道で石越駅からC地点小牛田駅を経由するしか無いので、三角形の二辺、六十キロメートル近くを通ることになって大変遠回りなのである。中田町に近いのは自家用車なら石巻市、鉄道なら水沢市である。
また企画に入り、鑑賞してからまた出る。
エントランスの暖炉に火は入っていない。「小川のメダカ」が受賞したのは東京国際アニメフェア2003東京アニメワード、アニメ作品部門優秀作品賞。アニメワードではない。受賞の旨の資料が置いてある。
蔵楽でブルーベリーヨーグルトとケーキセットを喰い、れんこんうどんを買う。蔵の中では風景写真を展示中。A4一枚刷りの「蔵楽通信」は毎月順調に発行されている、ウェブページにも少しは手を回して欲しい。
そしてまた企画に入る。飽きない。
午前中から曇天だが現地到着後に雨模様となる。持参の雨具をエントランスで着込んで、十五時半頃に辞去。しかしさほど強い雨でもなくいつの間にか上がり、帰途も順調に走って十七時頃に帰着。
今回の企画展は「009」愛好家にとっては必見、垂涎物だろう、スマートブレイン社の村上社長の言を借りるなら「
この際、アニメ関係は一切取り上げないで萬画関係だけで構成してもよかったと思う。そもそも斯くも交通の不便な場所に遠方からわざわざ見に来る人はそれなりの思い入れのある愛好家だろう。萬画館は石巻観光の一環、ついでの人も多かろうが、ふるさと記念館はここ目がけてでないと行きづらい場所である。それだけに来訪客もせっかく苦労して訪れるのなら、一般向けの薄味の展示よりも愛好家好みの濃い展示をこそ喜ぶのではないか。勿論、萬画館は薄味で十分という意味ではない。
I use "ルビふりマクロ".