「石森章太郎ふるさと記念館」第十五回訪問記

平成十四年七月二十日(土)

 雨天の下、八時少し前にマシンで出発。国道四号線を南下するうちに一関市内で晴れ上がってしまい、雨具を脱ぐ。
 九時過ぎに到着。この日から「やなせたかしとアンパンマン展」、九月二十九日(日)まで。
 エントランスに七夕の笹飾りが設置してある。来館者が備え付けの短冊に願い事を書いて自由にくくりつけられるようになっている。旧暦の七夕まで飾るという。
 常設入り口の両脇にショーケースが置かれ、鈴木淳氏という人物から寄贈された石森ヒーローの人形類が収められている。
 小野寺館長や佐藤会長、小野寺幸朗氏に挨拶。
 企画に入室。まずやなせからの挨拶文が右手に、彼の人生を示す写真が左手に掲示されている。
 室内に流れる「アンパンマン」音楽、一角のテレビではアニメを上映中。
 数々の絵とやなせの詩文で「アンパンマン」の誕生、発展を紹介する部分が興味深い。「アンパンマン」の母体となった作品のこと、ばいきんまん、しょくぱんまん等の主要登場人物、世間の評判、その他。絵本の登場から二十九年、テレビアニメ化から十四年。登場人物は八百に及び、キャラクター図鑑は第六巻まで出ているという。ウルトラ怪獣に十分匹敵する分量だろう。印象深いのが、ばいきんまんがいてこそアンパンマンの正義が引き立つ、というやなせの言。実に至言である、「BLACK」愛好家なら「名悪役あってこその正義の味方」ということは十分理解できると思う。初代ゴジラの如き善悪を超越した絶対者ならともかく、「正義」という相対的な価値観を標榜するなら対立する「悪」がいないことには話にならない。ばいきんまんは実に魅力的な悪役である。大好きだ。はひふへほー。
 絵本の原画やアニメのセル画も数多く展示されている。また、キャンバスに描かれた大きな絵画作品群も見応えがある。のどかな風景の中のアンパンマン達。しかしその中で「ゴミ怪獣ダストデーモン」と「ベアリングロボの襲撃」の重苦しさは異彩を放っている。ショーケースの中には関連書籍等。
 来館者は当然ながら幼児を連れた家族客ばかり。室内撮影禁止なのに多くの親が平気で作品の前に子供を立たせて写真を撮っている。大体博物館、美術館、展覧会というものは撮影禁止が当たり前だろうに、この若い親達は何を考えているのか。記念館側も、堂々と撮影機材を首に掛けたり手に持ったりしている入場者には積極的に注意すべきではないか。あまりにも作法がなっていない客が多いので気分を害する。
 既に大入り状態の館内だが十時頃、さっと室内から人気ひとけが引く。エントランスに着ぐるみのアンパンマン、ばいきんまん、ドキン登場。熱い中御苦労!
 本当に家族客ばかりで、独り者はいささか居心地が悪い日。どこからか高齢者の団体が来館、館長自ら説明する。
 もう何度も見ている常設にも一応入る。
 茶屋で「はっと」を喰う。この近辺の郷土料理。以前岩手県一戸町で喰った「ひっつみ」にも似ているが、「ひっつみ」よりも団子が薄い。胡椒が添えてあるが七味唐辛子の方が合うと思う。
 (有)菅原菓子舗の「ささやきパイ」を買う。
 それにしても暑い。夏なんか嫌いだ。生家にも顔を出す、やはり畳の部屋は落ち着く。座敷に「アンパンマン」の大きなジグソーパズルが置いてある。
 エントランスでフレーベル館「アンパンマンの世界 やなせたかし作品集」を買う。子供の絵本ではなく、大人向けの絵画作品集。本文に振り仮名は無い。
 とにかく丁度二年前の開館初日以来と思われるような客の入り。「ウェブページでの入場券プレゼントには一週間で六百通の応募」(幸朗氏談)、「毎日三十件以上の問い合わせがある」(本宮副館長談)とのことで、前評判からして上々だったらしい。
 十一時半頃に辞去して石巻市に向かう。続きは次項。

 とにかく若い親と幼児で大混雑の特別企画展であった。多種多様な「アンパンマン」世界の展開が見られて大変興味深かった。今回来館した若年、低年齢層の人々が石森章太郎自体に興味を持って、今後も来館するようになればいいとは思う。
 前述のとおり若い親達の作法はどうにかして欲しい、悪い客はしっかり取り締まるべき。

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