マンガジャパン展参観記
(「石森章太郎ふるさと記念館」第一回訪問記)

平成十一年十月三十日(土)

 水澤から十時六分発の東北本線上りに乗り込み、一関で乗り換えて宮城県の石越には一時間ほどで着く。盛岡行と同じくらいの所要時間。鄙びた駅前でうろうろしたりバス停で読書をしたりして一時間余りを過ごし、佐沼行十二時二十分の宮交登米バスに乗る。乗客も少なければすいすいと走り、二十分ほどしてから石森仲町いしもりなかまちで下車。「石森」は中田町の地名としては「いしのもり」と読むが、バス停は何故か「いしもり」である。
 少し歩くとすぐ見つかる「石森章太郎ふるさと記念館」建設現場。表通りに蔵が立ち、その裏手で工事中。平成十二年七月開館予定。
 晴天の下、「ふるさと記念館」ウェブページから印刷した地図を参照しつつ歩く。石巻市以上に「章太郎色」が見られない、全く「石森章太郎の故郷」という感じがしない町並み。たまに商店の店先に「マンガジャパン展」のポスターを見掛け、道筋にのぼりが立っているのを見るのみ。
 途中、(有)菅原菓子舗に立ち寄り、新商品「佐武市サブレ」を求めてついでに道を訊く。
 更に県道を行く。道筋にバス停は見当たらぬ。交通量自体もあまり多くないようだ。時々現れる幟を頼りに歩き続ける。
 歩くこと二、三十分でJAみやぎ登米なかだ営農センターグリーンナックに到着。マンガジャパン展、同時開催石森章太郎原画展。十月二十三日から十一月七日までの開催である。全国を巡業して中田町が最後。
 事前に入手しておいた入場券を出し、アンケートの紙等を貰う。
 玄関脇に「ふるさと記念館」及びその周辺の整備計画の図と身長百七十センチメートルほどの009像。像は白い服だったから旧作映画版か。それにしても石巻駅前も石巻「墨汁一滴」もここも009像。他の石森作品の像も欲しい。
 一角にはテレビセット、かの悪名高き「超銀河伝説」ビデオ上映中。
 真正面に関連商品販売コーナー。書籍、人形、テレホンカード(例の「シンキのノーローン」のもあり)、絵葉書等。展示自体は二階である。買い物は後回しにして階段を上る。
 ストーリー漫画家中心に結成された集団・マンガジャパンの会員達の作品の数々の展示。しかしながら筆者は特撮やアニメーションの愛好家ではあるものの必ずしも漫画、萬画には興味は無い。以下、「仮面ライダー」や石森関連の展示を中心に叙述する。
 石巻「墨汁一滴」でも見掛けたリトグラフ。「009」「仮面ライダー」「キカイダー」等。
 ショーケースの中に1号ライダーのヘルメット新旧二つ。新の方には関係者のサイン。筆者が読み取れたのは順不同で藤岡弘、河原崎洋夫、大島康嗣、長石多可男、岡田勝。旧の方には石森のサイン。二つのヘルメットの脇には講談社の大島写真集が開いて置いてある。
 また、別のショーケースには祭りの屋台でよく売られている「仮面ライダー」の面。新1号、RX、X、BLACK、J、V3、スカイ、ZO。
 更にまた別のショーケースには中国語版の石森単行本。「侏羅紀少年」「天地双龍」「小露宝」「机械刑事」「変身忍者」。さあ、それぞれの日本語原題は何か考えてみよう!
 またまた別のショーケースには地元所蔵の石森ゆかりの品。折りに触れて郷土の人達の為にいろいろ筆を執っていたようだ。Tシャツに書かれたBLACKの絵、1989年の日付あり。また、1980年の日付のあるスカイライダーの絵の色紙もある。これと同じショーケースにも中国語版の単行本。「幪面超人」「幪面超人強人」「秘密戦隊五勇士」。
 町内の神社・伊勢岡神明社に奉納する絵馬、これもマンガジャパン会員によるものだが過半数が日付に西暦使用。神社に納めるのだから元号を使えばいいのに。
 一階で買い物。箱入りの「佐武市サブレ」を土産に、また竹宮惠子「地球へ…」の絵葉書や「石森章太郎新世紀展」図録を買う。「地球へ…」アニメ映画は大好きな作品である、原作漫画は勿論未読。
 会場にいたのは一時間余りか。
 再び仲町バス停近辺へ。伊勢岡神明社に参拝。境内の日清戦争出征者の碑と、土地の政治家・二木北湖の碑を見る。前者の碑の撰文も二木。二つの碑とも漢文である。
 また、すぐ近くに石森郵便局。絵入り葉書「仮面ライダー」発売の際は小型印使用局となっている。小さな集配局、土曜日の午後なれば通常窓口業務は休み。
 石越方面経由のバスが来るまで二時間余り。ここで筆者石越駅に向けて歩き始めてしまう。幼時から五キロメートルや十キロメートル歩くのは平気な筆者、バス停をたどりつつ西へ西へと歩む。途中一ケ所だけ迷って別の道に入り込んでしまうもすぐ気づいてバス道に戻る。
 石越駅着は十七時十五分頃、所要時間は二時間くらいだろうか。すっかり暗くなっている。駅内で腹ごしらえし、十八時過ぎの下りに乗り込み、水澤着は十九時半頃。
 石森を訪れての所感。石巻市以上に発展途上である。グリーンナックに展示されていた図のとおりになれば「ふるさと記念館」一帯はがらりと様相が変わる、あまりにも激変するようなので筆者は戸惑いを感じているのである。
 尚、石森仲町バス停を通過するバスは二、三時間に一本しかないので注意が必要。石越駅前には常時タクシーは待機している。
 「佐武市サブレ」水澤帰着後に喰ったが大変おいしい。友人のa1やゴーグルグリーンにも喰わせて好評。固より煎餅、クッキー等の類には目の無い筆者ではあるが、この菓子は本当に気に入る。
 恐らく次の石森訪問は来夏の「ふるさと記念館」開館時だろう。その時に石森がどんな変貌を遂げているか楽しみではある。
 マンガジャパン展の展示品ではBLACKのTシャツとスカイライダーの色紙が世代人として嬉しかった。

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