番外「横手市増田まんが美術館」訪問記

平成二十八年七月十七日(土)

 開催十日前に告知された声優・関智一の来館。午前中の声優体験と午後の「関智一トークライブwith萬画館&美術館の絆物語」のうち、後者に参加する事にする。後者は当日先着百名。
 例によって人出の予想が付かぬ。ふるさと記念館ならばそれなりのゲストが来れば早くから列ができるのは経験済みだが、奥羽山脈の向こう、新幹線の駅からも遠く離れているまんが美術館。差し当たり、九時からの整理券配布に間に合えばいいか程度の考えで七時二十分にマシンで出発。曇天が胆沢町内を走行中に小雨、霧雨になり、雨具を着込む。胆沢町の山道では霧が出て、渓谷の底の方は霧がたまって見えない。その霧を見下ろし、まるで空を飛んでいるような気分で走る。山越えの後、東成瀬村内では雨脚が強くなり、まるで弾丸に当たっているよう。
 八時四十分頃着。広い駐車場には既に数多くの自動車が置いてあり、まんが美術館玄関前には長蛇の列。女性の比率が高い。その行列の中に、ふるさと記念館でよく会う新潟県の古本収集家氏と、久方振りに会う盛岡組二人。早くも盛況なので焦る、目測で筆者の順番は七、八十番台か。
 予定の九時より少し早く開場。筆者の受領した整理券は七十六番。
 関の意向でアンケート用紙が配布される。記入後に入れたジェラルミンの箱は選挙の投票箱にも見える。
 筆者と盛岡組は古本収集家氏からまたいろいろ見せてもらう。
 そして四人で企画展を見る。互いにいろいろ語り合いながら。前回訪問時に誤記を指摘したスタンプラリー台紙はシールで修正ではなく新しく刷り直している。しかも新しい方の紙質はインクの吸いが良い。職員の一人が筆者を見付けて「先日はありがとうございました」と礼を言う。
 よく見るとテレ朝ライダーの紹介パネルには放送開始時期だけ書いてあって終了時期が無いものがある。パネルを作った時は放送中最新作でも終了後に作り直しはしていないのだろう。
 更に盛岡組とは常設も見て回る。
 十一時半頃か、昼食の為に一度館外に出て、筆者も盛岡組の自動車に便乗する。既に雨は上がっている。盛岡組は特に昼食の場所を決めていないと言うので、十文字の味一番に案内すべく出発すると間も無く、路上を歩行中の別の盛岡組二人と遭遇。遅れて到着したと言う。彼等も乗り込んで、総勢五人になる。別々に出発して現地で集合する、気分はバトルフィーバーJ#1。
 道の駅十文字の駐車場に自動車を置いて味一番に入店、店舗中央のテーブル一つを囲む。筆者は例によって二品、この日はチャーシュー麺と焼きそば。盛岡組四人は一品ずつ、チャーシュー麺一人と中華そば三人。先に筆者の焼きそばが来て、平らげる頃に皆の中華そば類も来る。
 食事の後、道の駅で買い物。石巻市の上品の郷のような大きな施設で大変な賑わい。筆者はヨーグルトにかけるフルーツソース二種「さくらんぼナポレオン」と「さくらんぼ&ミント」を買う。
 晴れて暑い。コンビニエンスストアに立ち寄ってから、十三時半のトークライブに間に合うように館に戻る。
 整理券の番号順に着席するので我々五人は分散する。何故か筆者の左隣二人分が空席で、整理券を受領したのに帰ってしまったのか。定員百人を増員したようで、後から来た盛岡組も百人には間に合わないが後列で入場できる。改めて見渡せばやはりその筋のお姐さん方が多い。女児を連れて来た母親も少なくないが男児はあまり見かけない。
 トークライブは関智一の他、まんが美術館の大石卓、萬画館の木村仁の両氏が登壇。大石氏が進行しつつ三人で語る。
 今回の催し物実現の経緯や近況、この湯沢高校出身で大石氏の同級生の「おおひなたごう」の事等。また、早瀬マサトや村枝賢一との人脈。早くもいろいろ場内爆笑のネタが繰り出される。まんが美術館をホテルと間違えて入って来る人がいると言う。大石氏は数年前、関からの「新潟にも行きたい」と言うメールを暴露。秋田県と新潟県の取り違え、新潟県は東北地方ですらない。関が以前個人的に登米市のふるさと記念館に行って「キカイダーの声優」を名乗るも、当時の館長は「ああそうですか」程度の反応だったとの事で、一体誰が館長だった時の事だ。
 前回訪問時は未完成だった村枝漫画「風の絆」は完成品展示中。大石氏が石巻市で木村氏に会っている時に被災、その時の様子を描く。ページを映写幕に投影して当事者が解説していく。「実物よりだいぶ美化している」と言う木村氏。萬画館の関係者は実物があのとおりだから漫画化すれば自然に美化になるだろう。改めて五年前の悲惨な、緊迫した様子が語られる。石巻市には小野寺丈も支援に来ていたそうで、本当に「RX」のガイナニンポーの時のようになったのだと言う。丈の役は佐原航空の料理人五郎ちゃん、当該回では炊き出しの場面あり。本当は五年前に両館合同で仮面ライダー展を開催する予定がまんが美術館だけでもと言う事で単独開催になった。
 どう言うわけか三人の噺は終始、大石、木村両氏をBLに見立てる基調で進んでその筋のお姐さん方は黄色い声を上げて大喜びだが、既に各人ともボーイと言うような年齢ではない。母親が大笑いしてその隣の女児は解らないでいる、と言う場面をしばしば見掛ける。筆者もよく解らぬ。
 両館のスタンプラリーを達成すると景品で「風の絆」の本がもらえるが、この時点で本は未完成。既に両館達成者は出ているが、後で送付すると言う。
 以前、萬画館での村枝、関トークショーでも実施されたイラスト対決。出されたお題について三人が即興、二分以内で絵を描いて会場の拍手の多さで優劣を決定する。今回のお題は「釣りキチ三平」の鮎川魚紳、仮面ライダーアマゾン、「妖怪ウォッチ」のウィスパー。いずれも関の勝ち。
 萬画館のアニメ「消えた赤ずきんちゃん」の一部分、一分五十秒分を関がその場で独りで演じてみせる。
 先程のアンケートに基づいて関が質問に回答し、リクエストに応えて演技をする。
 関の来秋は二度目で、前泊は初めてだと言う。
 「仮面ライダーゴースト」の話題。関はいくつもの英雄眼魂の声を独りで演じ分けている。ネットでは「うるさすぎる」と評されていると言う。世間ではアドリブと思われているエジソンも実はそう言う演出。
 関主演「ボイスラッガー」の名乗りのポーズ。当時は「章太郎の遺作にして最新作」と言われた作品。
 夏の映画への出演は「この時点では無い」と言明する関。
 関は往年のウルトラ兄弟のようにヒーローが集まる作品が好きで、近年では「ディケイド」が好きだと言う。また、「ディケイド」で倉田てつを本人が出演、変身したのが嬉しかったと語る。
 十六時までの予定が十六時半まで。最後に退場する入場者一人ずつと関が握手。
 会場を出て、エントランスで盛岡組と暫し立ち話。そして十六時五十五分頃に別れを告げ、再会を期して辞去。帰りはほんの少し霧雨に当たるがまた雨具を着用するほどでもない。少し寄り道してから帰宅。

 図らずも盛岡組と合流して楽しい時間を過ごせた。自分の好きな店に知人を案内するのが楽しみなので、味一番で食事できたのは実に良かった。食事後の車内で好評の声も聞いた。

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