番外「横手市増田まんが美術館」訪問記

平成二十八年七月九日(土)

 五年振りのマシンでの山越えではある。
 七時五十分頃、雨具を着てマシンで出発。出発してすぐに給油する。国道三百九十七号線をひたすら西進する。この時点では雨は小降り。
 行き交う自動車もあまり無い山道を走る。県境を越えてからの九連続カーブは本当に嫌だ。時折、トンネルやスノーシェードに入ると雨をしのげる。
 やがて山道を抜け、宿泊施設や郵便ポスト、飲料自販機等が見えてくれば後は平地である。三百四十二号線に入って西進を続ける。雨は止まぬ。
 九時二十分頃到着。駐車場の自動車はまばら。入館してみても行列はできていない。九時半の会場を待つ。
 その九時半になっても調整中だとかで五分以上待たされる。そして入場。筆者が一番乗り、そして小一時間くらいは貸し切り状態である。
 仮面ライダー生誕45周年記念「仮面ライダー 栄光と絆展」七月九日(土)から八月二十八日(日)まで。萬画館との共同企画。本当は五年前の四十周年の時に共同開催の予定だったのが、例の大地震で流れてしまった。時を経て今夏やっと共同開催実現。
 木戸銭を払うと入場券、記念の絵葉書、まんが美術館と萬画館共用のスタンプラリー台紙を渡される。スタンプラリー台紙は一枚で「まんが美術館と萬画館」と「石巻市内六ヶ所」の二とおりのスタンプラリーに使える。忘れないうちにと、すぐに据え付けのスタンプを押すが、台紙の説明文に目を通してみたら石巻市の景品の缶バッジの会期後半の種類の中に「BRACK」。目を疑うが確かに「R」。台紙の奥付には萬画館が書いてあるが、一応ここの受付に通報して「シールでも貼って直せ」と言っておく。萬画館と仮面ライダーの記念の年に致命的な誤記。
 独り静かに見学する。1号2号萬画のパネル、昭和ライダーの原画。「BLACK」も「Black」もある。章太郎本人生前の作品群である。
 二台のテレビセットで、昭和と平成それぞれの主題歌集ビデオを流している。昭和は「1号」藤浩一版から「ZX」を経て「RX」まで。平成は「クウガ」から「ゴースト」まで、ノンクレジット。途中で主題歌が変わった作品は一部、流していない曲もある。
 歴代作品紹介の写真パネルはテレビシリーズの他に「真」「ZO」「J」の他に「THE FIRST」がある。「THE NEXT」と「アマゾンズ」、その他最近のネット配信作品の展示は一切無い。
 クウガ、キバ、ウィザードの立像があるがそれぞれのフォームの名称までは記憶していない。そして暫く萬画館前に置かれていたトライサイクロンがこちらに来ている。
 漫画家等からの仮面ライダー四十周年祝賀の色紙数十枚。その中に村上克司によるシャドームーンがある。黒ペン一本で描かれたと思われるがこれが実によい。
 矢口高雄と章太郎の交流を描いた漫画も展示されている。最晩年に秋田県に湯治に来ている章太郎。章太郎は矢口を見くびっていたのを見直したのだと言う。また矢口の自伝漫画「9で割れ!」の内容は、以前中田町でのパーティーで矢口本人が話したのを聴いている。筆者も銭勘定が仕事なのでよく解る。
 末尾に萬画館被災と復興の様子の紹介。写真パネルに紀代子女将の姿も見える。村枝賢一の描きおろし萬画は最初の数ページのみの展示で、完成次第こちらに展示されると言う。
 三十分あれば一巡できる。
 その筋の愛好家と思しき客は筆者の他には全く見掛けず、幼児児童を連れた家族連れ数組を見るのみ。客の入りは極めて悪い。
 一時間ほどしてから展示室を出て、ついでに常設を見る。
 以前は食事もできた館内だが今は業者が交代して土産物の販売のみ。萬画館商品を数多く並べている。仮面ライダー人形の中にはシャドームーンはあるが何故かBLACKが無い。知人用に菓子、自分用に蕎麦、共に地元産品を買う。
 雨が上がっている。曇天の下、十一半頃に出発する。その間にまた小雨が降って来るが雨具を着用するほどでもなし。国道十三号線沿いの道の駅十文字、その北側の食堂・味一番に入る。筆者の顔を記憶している店主佐藤氏。この日はこの時点まで何も喰っていないので横手焼きそばと中華そばを注文すると佐藤氏曰く「大変いい注文です」。そしてサービスとして中華そばにメンマ大盛り。どうして筆者のメンマ好きを知っていたのだ。両方ともすぐ平らげる。暫し雑談。やはり水沢市よりも水沢競馬場の方が有名なのである。筆者が仮面ライダーシリーズ四十五周年を話すと佐藤氏は「(この店より)一年先輩」だと言う。
 外に出れば雨は本降り。再び雨具を着て十二時十五分、帰途に就く。雨は往路よりも激しく降る。曲がりくねった山道を抜けて胆沢町のダムのそばを通過し、民家のある平地に出ると「あともう少し」と安堵するが油断は禁物である。降雨のまま十三時四十五分に帰着。その直後に晴れ上がる。

 特別企画展は市販商品等の展示は無く、本当にテレビと萬画の作品そのものに絞った展示。シリーズ全体を見渡すにはいい。過去にも特別企画展会期初日に訪れた事はあるが、元々、ここはその筋の愛好家が初日から列をなすような場所ではない。以前、大ウルトラマン博で初日に桜井浩子が来た時ですら、初日開場を待ち構えていたのは筆者の他は無料券を持った子供ばかりだった。
 章太郎と矢口の関係を示す漫画の展示はここにふさわしい。今回の村枝のように、完成次第追加するとて未完成作品の一部分だけ展示すると言う手法は初めて見た。
 横手市で萬画館の不手際を発見する事になろうとは全くの予想外で、且つ実に情けない。あまりにも程度の低い誤記、これではまるで雑誌「宇宙船」である。「まんぼう」は仮面ライダーシリーズを昨日今日扱い始めたわけではないだろう。

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