番外「横手市増田町まんが美術館」訪問記

平成二十三年七月十七日(日)

 平成十四年に初めて訪問した秋田県増田町まんが美術館は十七年に市町村合併により横手市増田まんが美術館になった。初訪問の後も以後数回訪れているが、今回は章太郎に極めて関係が深い特別企画展を見に行ったので訪問記を発表する。
 九時過ぎ頃、晴天の下マシンで出発。すぐ国道三百九十七号線に乗り、水沢市内で給油。西進を続け、時折ネタがあるとマシンを止めて写真を撮る。この時期は国道を走っていると二輪の旅人の一団をよく見掛ける。筆者を追い抜いて行く。
 十時過ぎに胆沢ダム工事現場の展望台に立ち寄ると、先程筆者を追い抜いた一団が休憩している。工事用ダンプトラックの巨大なタイヤが屋外に展示してある。
 再び走る。近年通った際は岩手・宮城内陸地震の影響や国道付け替え工事でかなり走りづらかったが今は殆ど片付いたようで、気分良く走れる。特に滞ったりはしない。気温は三十度を超えているが山道のトンネル内は涼しい。
 県境を越えて秋田県東成瀬村に入る。更に西進を続け、やがて国道三百四十二号線に接続する。右手にまんが美術館が見えて来るが立ち寄る場所があるので走り続ける。
 国道十三号線に入り、北上。道の駅十文字を過ぎ、十一時過ぎ頃に横手やきそばの店・味一番に到着する。昨年十月、みちのくマンガロード周遊の際に立ち寄って気に入ったので再訪である。やきそば大盛り、六百円。
 またマシンに跨り、まんが美術館まで引き返す。田圃の中に聳え立つ洋館風の異様な建物である。正午頃入館。
 夏の特別企画展「仮面ライダーメモリアル展」七月十六日(土)から九月十一日(日)まで。本来は萬画館との共同開催であったが、萬画館被災により「復興支援企画」としての開催である。秋田県は特に大地震の被害は受けていない。
 受付で料金を払って展示会場のコンベンションホールに入る、この展示会場は萬画館企画展示室よりも広い。関係者の挨拶文や序説等の後に章太郎原画が続く、萬画「Black」表紙絵もある。序説は仮面ライダーシリーズがテレビ番組のキャラクター商品展開、メディアミックスの元祖である事を誇らしく述べる。「1号2号」から「オーズ」まで、バンダイビジュアル三部作を含むシリーズ全作品の紹介パネル。秋田県出身の渡部秀や、新番組「フォーゼ」については特に見当たらない。
 舞台の上には向かって左にディケイド、右にW(サイクロンジョーカー)の実物大人形が立つ。中央に据えられているのは萬画館正面に置かれていた仮面ライダーの顔出し看板。数ヶ所が破損し、泥汚れの跡がある。筆者が沿岸被災物件の実物を見たのは初めて。
 その舞台の向かい側に、萬画館常設の歴代仮面ライダーマスクが出張展示され、またその脇のテレビセットでは「石森章太郎の子供キャラクターたちの仮面ライダー部分抜粋が上映されている。既報のとおり萬画館の二階から上は無事で、マスクも損傷は受けていない。
 展示の後半は村枝賢一「仮面ライダーSPIRITS」の原画。単行本一巻毎の粗筋、さわりを紹介している。
 後半のところどころに置かれたガラスケースの中には関連商品。ベルト等の玩具、書籍、カルビーのカード等。Zブリンガーの玩具、てれびくんデラックス愛蔵版、小学館SQ文庫のようなZO、J関連商品も目立つ。昭和年代の児童誌の表紙が実に懐かしい、同時代のテレビまんが、加藤志村のヒゲダンス、そしてタケちゃんマン。「Black」初掲載の週刊少年サンデーもある。
 出口では仮面ライダー商品や萬画館商品を売っている。
 前日に見たエヴァンゲリオン展よりも客層は幅広く、家族連れ中心に文字どおり老若男女が集っている。昭和作品もよく知っている幼児、オーズ主題歌を歌う幼児。「どれも同じに見える」とショウジキな事を言う祖母。
 何巡か見て、十四時過ぎにコンベンションホールを出る。館内の売店兼飲食店「みたか」ででブルーベリーソフトクリームと紅茶を食す。
 ロビーに萬画館復興支援の募金箱が設置されている。まんが美術館は萬画館への支援に熱心で、既にチャリティーサイン会は実施済み、これからも開催予定がある。ふるさと記念館に対しては特に支援している様子は無い。
 十五時少し前くらいに帰途に就く。出発時にマシンの走行距離計の下三桁が丁度100だったので、自宅までのキロメートル数を計る。所要時間一時間半ほどで七十キロメートルの道程。帰りも晴天で、まんが美術館往復で全く雨に降られなかったのは今回が初めて。

 テレビシリーズの誕生と今までの歴史に加えて村枝の世界、と言ったところか。分量としては章太郎よりも村枝原画の方が多い。シリーズ各作品毎の掘り下げが不足しているが、幅広い客層が楽しめる展示だろう。懐かしの児童誌のみならず平成の出版物もあるのが良い。総じて、夏休みの家族連れで見るには最適である。
 確かに仮面ライダーシリーズは多角的展開の元祖かも知れない。しかし当時は例の「カード目当ての子供がスナックを捨ててしまう」現象を招いたと言う汚点がある。メディアミックスには「詳しくはウェブで」等のような手法が情報格差を生んでいると言う批判があるし、何より「結末は映画館で」で世間からボロクソに叩かれたのは他ならぬ仮面ライダーシリーズである。
 被災した萬画館の収蔵品は東京都に疎開中と聞いていたがまさか秋田県で見られるとは思わず、しかも被災物件まで。まんが美術館に対しては萬画館の分も健闘を祈ると言う外ない。

I use "ルビふりマクロ".

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