宮城県美術館「手塚治虫 × 石ノ森章太郎 マンガのちから」参観記

平成二十六年五月三十一日(土)

 前年の東京都立近代美術館を振り出しに各地を巡回した展覧会が章太郎の出身地・宮城県にもやって来る。但し、登米市でも石巻市でもなく仙台市。石森両館が協力している展覧会でもあるので訪問記に加える。
 六時二十九分水沢発東北本線上り、一ノ関には五十三分着。ここで七時十分発の新幹線に乗り換えて仙台には四十三分着。既に暑い仙台市。ここから会場まで三十分ほど歩く。仙台市中心部は歩きなれているが県美術館は二度目。
 館の敷地に入る。開館を待つ人が数人いるが徹夜組ではなさそうで、行列にはなっていない。やがてふるさと記念館関係者がやって来るので挨拶する。彼等は先に入館するが筆者は外で盛岡組の到着を待つ。
 やがて盛岡組も姿を現す。合流して入館し、受付を済ませて客席に着く。
 エントランスにて九時から開会式、会期は七月三十一日(日)まで。手塚、石森両プロダクションの関係者等が挨拶。テープカットの後、一般入場開始。展示室は二階。
 手塚と石森の誕生から、年代順に世相と絡めて展示されている。石森両館の収蔵品も多々展示されている、章太郎幼少時の習作等は筆者は何度も見ている。原画のみならず、映像作品の展示も充実している。特に章太郎については変身ヒーロー諸作品で一角を占めている。昨年のNHK・BSプレミアム「ニッポンマンガ創世記」でも紹介された「仮面ライダー」題名検討案のメモには「ホッパーキング」「グラスホッパー」等、「ホッパー」の字が目立つ。世紀王専用マシンや「カブト」の地獄兄弟の名は由緒正しい物か。
 今回の筆者にとって最大の目玉は宮城県が初展示の「BLACK」「RX」についての章太郎のメモ。両番組の入れ替わりの頃に関係者に提示した物だと言う。放送当時は「こんなの(以下略)」と異端、邪道呼ばわりされた「RX」が今や「先生存命中の正統作品」とされているのは筆者常々指摘しているが、このようなメモの存在は「RX正統論」に或る程度の根拠を与えるだろう。このメモについてだけでも長時間語れるが同行者がいるのでそうも行かぬ。
 トキワ荘の三分の二の模型。廊下を歩いて通れる程の大きな物である。
 他の漫画家から寄せられた作品も展示されているが異彩を放つのは水木しげる。描き下ろしだろうか、ニページの漫画で存命中の手塚と石森の徹夜自慢を描き、だから両名は早死にしたとする。揶揄なのか惜しんでいるのか。神様と王様の生き方に異議を申し立てる妖怪。手塚と石森は水木より年下である。また、早熟の天才・石森が既に売れっ子だった昭和三十年代、水木は極貧に苦しんでいた。
 展示室を出れば売店。各人品定め、筆者は章太郎画スカイライダーのチケットケースと絵葉書。ふと気が付けば十二時半、即ち一巡で三時間も鑑賞していた事になる。
 一階に下り、美術館常設の売店も見てみる。
 暑い。天気が良過ぎる。盛岡組の自動車に筆者も同乗して東に向かって出発。暫くして仙台市中央卸売市場に着き、ここの食堂で昼食。筆者は天丼。筆者は小三か小四の学校遠足で着た記憶があるので三十数年振り。尚、仙台駅より東側は宮城県在住時の筆者の主な行動範囲ではない。
 食事後は自動車は西進。クリスロードの近くの駐車場に置く。盛岡市や秋田市に比べて料金の高さに驚く盛岡組。
 クリスロードの「東北ろっけんパーク」。公式ウェブによれば「中心部商店街の振興と、東北の観光や産業の復興をバックアップする施設」。中を見て回る。また、隣の喫茶店で休憩。筆者はブルーベリーヨーグルトスムージーを一気に啜って頭痛を催す。
 再び「東北ろっけんパーク」。盛岡組の目当て、宮城県岩出山町の「てる政宗」が来ている。筆者は今年、石巻市で見ているが盛岡組は初めて。暫し交流。その異様な姿に通行人も足を止める。
 徒歩で仙台駅前に移動。盛岡組は菓子の買い物。ここで盛岡組と別れ、仙台駅内の粟野蒲鉾店で買い物してから十六時二分の東北本線下りに乗り、国府多賀城駅に向かう。

 昨年、我が「帝國」の都内読者から都立現代美術館に誘われていたが結局見に行けず、やっと宮城県で鑑賞を果たす。やはり規模が大きい展覧会なので、百貨店の催事場や市立級の建物での開催は無理だ。県立級でないと収まらない。
 質、量共に大変見応えがあるが、特に「BLACK」愛好家は必見である。このメモの他にも「BLACK」展示はある。図録に載っていない、宮城県会場にて初展示の物件が複数あるので、是非現地で見るべし。

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