その十一 「原点」とは何か

 テレ朝ライダーについてよく使われる言葉「原点回帰」。「スカイ」「BLACK」もそう評される。テレ朝ライダーのプロデューサーはインタビュー等で毎年のようにこの言葉を繰り返したが、「こんなの仮面ライダーではない」という反発も根強い。
 しかしそもそも「仮面ライダー」の「原点」とは何なのだろう。テレビの「1号2号」だと言う人もいれば「旧1号」に限る人もいるし、設定上直系の後継者である「V3」まで含める人もいる。原作萬画を挙げる意見もある。最近は、往年の主演俳優を「原点」として崇める動きもある。或いはまた「スカルマン」のような先行作品が「原点」として取り上げられることもある。「月光仮面」が全てのテレビヒーローの「原点」なら、「仮面ライダー」の「原点」ということにもなる。そして「BLACK」が東映グループの作品紹介で「平成ライダーの原典(原文のまま)」とされるに至っている。
 結局、「原点」の定義がばらばらだから、同じ作品について「歓迎すべき原点回帰」「こんなの(以下略)」と意見が分かれる。各人が違う定義の「原点」を根拠に議論をしてもかみ合うはずが無い、実に無意味だ。「仮面ライダーらしさ」論もこの「原点」論と同根である。
 ただ、或る人が初めて印象づけられた「仮面ライダー」がその人にとっての「原点」になるのは間違いないだろう。だからこそ、嘗て「BLACK」も「こんなの(以下略)」と貶されたのに、成長した「BLACK」世代人がテレ朝ライダーを「こんなの(以下略)」と馬鹿にするわけだ。
 「原点」論が陥りがちな、旧作と比べて云々という論評を筆者がしないのは従前どおりである。

(平成十六年七月二十四日)

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