#37「想い出は夕張の空」
昭和六十三年六月二十六日放送 脚本・宮下隼一 監督・蔦林淳望
登場怪人・ケラ怪人、コウモリ怪人
粗筋
知人の圭子の結婚式参列の為に北海道夕張市を訪れた光太郎、杏子、克美。克美はそこでゴルゴムに誘拐される。光太郎、杏子、圭子の許に克美発見の報が入り、三人は東京に急行、収容先を訪ねるも克美は脱走済み。圭子は克美を発見、しかし克美は様子がおかしい。倉庫に囚われる圭子、光太郎がこれを救出せんとするとケラ怪人と克美が光太郎を襲う。杏子が倉庫の扉を開け、そして天井に穴が空いて光が差し込み、ケラ怪人は退却。
克美は圭子を引きずって圭子の勤務先の幼稚園に出現、そこから園児達を乗せたバスで逃亡。光太郎はバスを追跡、やがて発見。建物の中で克美は子供達に襲いかからんとしていた。ケラ怪人に応戦して光太郎は変身、そこにゴルゴム大幹部四人総登場。BLACKはケラ怪人が光に弱いことを想起してキングストーンフラッシュを放ち、大幹部達は退却、克美は正気に戻る。ケラ怪人を白日の下に引きずり出したBLACKはこれを斃す。
暗黒大公曰く
今回からオープニングでも「大怪人」表示。そして信彦は回想場面でしか出て来ないのに「秋月信彦/シャドームーン」。堀内孝人がシャドームーン人間体たる信彦を演じたのは数えるほどしか無い。
出た、「BLACK」随一の爆笑人物、「バリバリ夕張」中田鉄治市長! 冒頭のパーティー場面だけの登場。今回の白眉は小指を立てながらの「バリバリ夕張のバリバリカップルの前途を祝してカンパーイ!」そう言う市長こそ、かなりバリバリである。彼の更なる活躍を見たい方は劇場版第二作を御覧あれ。
同市長は昭和五十四年以来六期二十四年間在職し、平成十五年の統一地方選挙には出馬せずに引退。引退後間も無い同年九月十日、七十七歳で死去。「BLACK」や「ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭」で特撮に縁のある市長であった。
そして平成十八年六月、同市長時代の市の赤字隠し、財政破綻が発覚。ネット上では「夕張市財政破綻はゴルゴムの仕業」等と揶揄されるに至る。筆者もニュース番組等で夕張市の現在の様子等を何度も見たが、「死んだ人の悪口」を忌避する日本人の国民性か、テレビには生前の同市長の映像は滅多に出て来ないし、所謂ワンマンだったと言う彼個人を糾弾する声もあまり聞かない。岐阜県庁裏金問題での前知事、内閣府タウンミーティングやらせ質問問題での当時の担当者への世間の風当たりを見れば、もし同市長が存命なら退任後でも批判の矢面に立たされたであろう事は想像に難くない。よその自治体のことをどうこう言うつもりは無いが、「達人は自分の死期をも選べる」とは、実に同市長の為の言葉だ。
さて。
知人の結婚式に参列するというのに普段着のままの光太郎。礼服を持っていないはずはない、「怪人パーティー」で着ているのだから。
新郎の健一は高橋利道。
新郎新婦の姿を見て信彦を思い出し、一人で泣いている克美。実にネクラ女の真骨頂。めでたい婚礼の席で、離れ離れになってしまった自分の男を思い出して泣くなんて、とことん暗い、ヤな女だ。それでまた回想場面がすごい、二人で笑いながら駆けていくのはいいとしても両手つないでぐるぐる回るというのが。アニメで似たような場面を見たことがあるような気もするが、実写で見せられるとすごいぞ。
東京に出現した克美、目張りが入って怖い顔。「来てくれると思ったわ圭子、嬉しいわ」口調が変である。そして「さ、一緒に南光太郎の息の音を止めてやりましょ」本当に怖い。
シャドームーン曰く「私はシャドームーン、過去は無い」信彦であることを否定しているが、作戦は信彦ならではとしか言いようがない。本当に信彦としての意識のままで今回の作戦を発案、遂行しているのならもう本当にろくでなしである、自分を深く愛している克美を道具にしたのだから。しかも克美に自分の声で喋らせるとはあまりにも悪趣味だ。これが「お前達の事は今まで以上に思っている」と表明した男の行動なのだろうか。このシャドームーンの言動の不統一や不可解さを「シリーズ構成のまずさ」の一言で片付けたくはないのだが、前後で重大な矛盾を発生させていることは事実だ。今回の脚本家は「復活三部作」とは別人である。
大怪人になってもやはり、三人揃って出陣しても全く役に立たない。所詮前回は人間相手の大暴れであり、今回は質、量共に申し分ない人質を取りながら(克美も人質の内だろう)次期創世王の目の前であの始末である。「苦しいか仮面ライダー、今すぐ楽にしてやるぞお」一気にまくし立てるダロムはよい。
園児達を前にした光太郎の変身、どう考えても見られている。克美がBLACKの姿を見たのは今回が初めて。石ノ森萬画館二階常設のビデオ上映「石ノ森章太郎の子供たち」の「BLACK」紹介でこの変身場面が使われている。「壁に付着した紫の泡」が決め手だ。
この週から映画の券プレゼントの告知、ナレーションは倉田に非ず。
「復活三部作」の直後に「バリバリ夕張」「幼稚園バス」で物語の緊張感、悲壮感が一気に緩む。この後暫くは物語の本筋からは外れる、どうでもいいような回が続くので諸氏覚悟せよ。
クレジット
オープニング
仮面ライダーBLACK
吉川 進
堀 長文
(東映)
プロデューサー
井口 亮
山田尚良
(毎日放送)
原作 石ノ森章太郎
少年サンデー
てれびくん
連載 コロコロコミック
小学館学習雑誌
テレビランド
脚本 宮下隼一
音楽 川村栄二
主題歌
「仮面ライダー 「LONG LONG AGO,
・
BLACK」 20TH CENTURY」
作詩 阿木燿子
作曲 宇崎竜童
編曲 川村栄二
歌 倉田てつを 歌 坂井紀雄
(コロムビアレコードCK‐797)
南 光太郎
仮面ライダーBLACK
倉田てつを
秋月信彦
シャドームーン
堀内孝人
秋月杏子
井上明美
紀田克美
田口あゆみ
東城美帆
中田 悠
吉田真弓
玉井千鶴
松尾昌代
岡元次郎
北村隆幸
飯田規子
岩田時男
庄司浩和
(ジャパン・アクション・クラブ)
アクション監督
金田 治
村上 潤
(ジャパン・アクション・クラブ)
ナレーター 小林清志
ダロムの声 飯塚昭三
大怪人ビシュム
好井ひとみ
大怪人ダロム
山本貴浩
大怪人バラオム
高橋利道
夕張市長
中田鉄治
(特別出演)
監督
蔦林淳望
エンディング
撮 影 松村文雄
照 明 中川勇雄
美 術 井上 明
造 型 前澤 範
録 音 太田克己
編 集 菅野順吉
選 曲 茶畑三男
効 果 大泉音映
製作担当 寺崎英世
進行主任 竹内洪太
助監督 岩原直樹
計 測 岡部正治
記 録 富田幸子
製作デスク 岩永恭一郎
装 置 東映美術センター
操 演 国米修市
美 粧 サン・メイク
衣 裳 東京衣裳
装 飾 大晃商会
資料担当 小佐野 聡
(石森プロ)
キャラクター製作 レインボー造型企画
イラスト 野口竜
プロデューサー補 高寺成紀
合 成 チャンネル16
現 像 東映化学
オートバイ協力
S SUZUKI
ビデオ合成 東通ECGシステム
峰沢和夫 近藤弘志
前岡良徹 鈴木康夫
(株)特撮研究所
操 演 鈴木 昶
尾上克郎
撮 影 高橋政千
照 明 加藤純弘
美 術 佛田 洋
特撮監督
矢島信男
撮影協力
夕 張 市
ゆうばり
石炭の歴史村
ANA/全日空
札幌不二ホテル
△東映
製 作
毎日放送
使用音楽一覧
場面 | 番号または歌曲名 | 音楽メニュー |
克美の回想、副題 | V2 | 勇者は行く |
怪しい風と地鳴り | MCT3 |
ケラ怪人出現 | M20 | 世紀王脱走 |
変身 | V0 | ヒーロー登場 |
克美誘拐さる | ME2 |
札幌へ向かう光太郎 | V3 | 追跡 |
東京へ向かう三人 | V6 | マシン激闘 |
克美捜索 | V6 | マシン激闘 |
克美暴走 | M20 | 世紀王脱走 |
囚われの圭子 | M34 | おぞましき姿 |
光太郎を襲う克美 | M15 | 怪人出現 |
ケラ怪人と克美退却 | V1弦のみ |
光太郎の怒り | M40 | 挑戦 |
光太郎と杏子 | M47a |
バスを乗っ取る克美 | V1 | 変身! |
倉庫に入る光太郎 | M8 | 闇の視線 |
園児達に迫る克美 | V8イントロのみ | 絶体絶命! |
光太郎対ケラ怪人 | M34 | おぞましき姿 |
変身 | 「変身!ライダーブラック」 |
シャドームーン出現 | M22 | 大いなる悪の力 |
BLACK対ゴルゴム | V8 | 絶体絶命 |
大逆転 | 「仮面ライダーBLACK」 |
勝利、救出 | M9 | 凱歌 |
シャドームーン | M13 |
克美からの手紙、楽しき日々 | 「ブラックホール・メッセージ」 インストゥルメンタル |
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I use "ルビふりマクロ".