#36「愛と死の宣戦布告」
昭和六十三年六月十九日放送 脚本・杉村升 監督・蔦林淳望
(登場怪人・トゲウオ怪人、ケラ怪人、クワガタ怪人、ムカデ怪人、ツノザメ怪人、ネズミ怪人)
粗筋
神殿内、怪人達に訓示を与えるシャドームーン。大神官達は愈々衰弱し、最早、口もきけなくなっている。
杏子と克美は何故か旧秋月邸に来てしまう。果たしてそこにいたのはシャドームーン。シャドームーンは信彦として二人に語りかける。ふらふらとシャドームーンについて行きそうになる克美、それを引き留めてきっぱりとゴルゴムを拒否する杏子。
再び神殿内、衰弱しきった大神官達が変貌を始め、やがて三人は大怪人として生まれ変わる。シャドームーンは大怪人達に人類への宣戦布告を命じる。
大怪人達は国会議事堂に乱入、続いて街に出現して大暴れ。光太郎は現場に駆けつけ、変身するも一対三の不利な戦いを強いられる。やがて杏子と克美も到着。克美は泣きながらシャドームーンに行動中止を懇願。大怪人達は挨拶程度の戦いで退却。
暗黒大公曰く
いよいよ三部作の最後。今回だけ前の二回と監督が違う。
今回の登場怪人は神殿内で蠢いているだけで戦線には出て来ないので全員括弧で括った。
気丈な杏子と気弱な克美、芸風の違いがはっきり出た今回。キャピトラで杏子から事情を聞いた克美、すっかり落ち込んでしまっている。そして何より旧秋月邸での様子、杏子は気をしっかり持ってシャドームーンに対しているが克美はもう放心状態、あすこに杏子が一緒にいなかったらシャドームーンについて行ってしまったであろう。信彦の肉親たる杏子よりも克美の方が精神的に打撃を受けているようだ。「お兄ちゃんの馬鹿!」が痛烈に響く。
それにしても奇怪なのはその秋月邸でのシャドームーンの言動である。杏子と克美に対する語りかけは声こそ違えど信彦そのもの。信彦は改造手術で記憶を消されたのではなかったのか。シャドームーンは一度記憶を消された上で、作戦遂行上の知識として信彦の記憶を与えられたのではないかという説もあるが、改造手術担当者であったダロムは最早シャドームーンに何かを「与える」ような立場ではないし、シャドームーンは復活直後にゴルゴムの全権を直接掌握している以上、この時点で創世王が作戦に関与するとは考えにくい(事実、この後暫くの間、シャドームーンは創世王の命令の取り次ぎ役ではなく、次期創世王として主体的にゴルゴムを指揮している)。而して彼に失われた記憶を戻す人物は見当たらないし、既に信彦であることを忘れている本人が昔の記憶が欲しいと言い出すとも思われない。しかしながら、秋月邸での言動は信彦そのものなのである。この辺り非常にややこしいので、是非諸氏の見解を求めるものである。実はこれもこの番組のシリーズ構成のまずさであろうかと考えてもいるのだが、筆者は。
大怪人誕生の場面も不可解。石を失った大神官達、特に何かをした、されたわけでもなく、床に這いつくばっていただけなのが、突然大怪人に変貌を遂げる。創世王なりシャドームーンなりが苦しむ大神官達に新たなる力でも注入する場面でもあればすっきりしたところだ。唸るダロム、吼えるバラオム、飛び回るビシュム。「怪人共の頂点に立つ大怪人」即ち、今までは大神官という役職が創世王の命令を取り次いで怪人達を指揮していたが、今後は次期創世王シャドームーンが直接指揮を執るから元大神官達は筆頭怪人として実動部隊に加われ、ということだろうか。
三葉虫のダロム、剣歯虎のバラオム、翼竜のビシュム。当時の筆者、その姿を見てかなり落胆したようだ、あの神秘的で荘厳だった大神官達が怪人にされてしまったと。当時の日記を見ると、ダロムをエジプタス、バラオムを「チェンジマン」のブーバ、ビシュムを市川猿之助(スーパー歌舞伎)と評している。また、ビシュムの顔、あの美貌だけは不変で良かったとも記している。そしてその大怪人達、直接肉弾戦を行うように、そしてビシュムは旋風を巻き起こすようになったが、ダロムの念力、バラオムの光線、ビシュムの光球も従前どおり使用。
大怪人達の宣戦布告は筆者の大好きな場面である。国会議事堂乱入はともかく、あの市街地での大暴れはすごい。実に大掛かりな撮影である。過去、倉庫の中とか山奥とか、人目につかないところでの戦いが多かった「BLACK」だが、今回は白昼堂々と、まるで「戦隊」並の市街戦。もう闇の世界での暗躍に非ずして人類に対する堂々たる宣戦布告である。きちんと警官隊が出動してそして蹴散らされるのがよい。逃げようとする乗用車をバラオムが受け止めて押し戻してしまうのも迫力がある。傷つき恐れおののく民衆の間を闊歩する大怪人達、そしてBLACKは民衆に避難を促しつつ戦う。阿鼻叫喚の場と化した街、実に壮絶な場面だ。我々一般民衆の目で見た、ゴルゴムの直接的な恐怖がよく表現されていると思う。
その場面で「BLACK ACTION」三番まで使用、ただし歌詞は「例によって」それぞれ前半のゴルゴム部分のみ。やはり「ゴルゴムの歌」というのが無いから斯かる使用で代用か。宙明節、イントロのギターが力強い。
そしてまた今回の飯塚師匠の演技が実に力強い。「現れたな南光太郎!」本当に憎々しげである。やはり悪役、悪役声優とはこうでなくてはならぬ。ビシュムの「諦めるのね」も色っぽくて良い。
そして今回の筆者最大のお気に入り場面。ビシュムの起こした旋風で看板が落下、泣いていた幼児を直撃せんとするも克美が飛び出して間一髪で救い出す。そして克美の悲痛な叫び! 「やめて信彦さん! これがあなたの言う新しい世界なの? こんな小さな子を傷めつけるなんて、嫌っ! 信彦さんは間違ってる!」そしてこの場面に流れるV1aが実によく状況に合致していていいのだ、あの曲の悲壮さが最大限に生かされた使用例であると高く評価する。「BLACK」全体の中でも大好きな場面の一つ。今回のライダーパンチ、ライダーキックは涙無しには見られぬ。今こうしてLDを参照しつつ執筆していても涙が溢れてくる。克美の叫びの直後に神殿のシャドームーンの姿が映る、彼の耳にも克美の叫びは届いているものと思われるが、果たしてシャドームーンがその時に何を考えていたか、どう思っていたのかは判らない。
しかし今回の光太郎の変身、どう考えたって大衆の面前で見られているよな。
今回のオープニングでは三人共「大神官」。次回からは「大怪人」だ。しかしこの「大神宮」今まで十余年、全然気付かなかった。
以上、「復活三部作」を紹介した。この三部作、LD二枚にまたがってしまって、鑑賞途中で入れ替えねばならないのが面倒、残念だ。まあ、他の巻にまたがって、続きを見るのに二ケ月待たされるよりはマシだけれど(筆者所蔵のLDでは「大鉄人17」で斯かる事態が発生した)。
クレジット
オープニング
仮面ライダーBLACK
吉川 進
堀 長文
(東映)
プロデューサー
井口 亮
山田尚良
(毎日放送)
原作 石ノ森章太郎
少年サンデー
てれびくん
連載 コロコロコミック
小学館学習雑誌
テレビランド
脚本 杉村 升
音楽 川村栄二
主題歌
「仮面ライダー 「LONG LONG AGO,
・
BLACK」 20TH CENTURY」
作詩 阿木燿子
作曲 宇崎竜童
編曲 川村栄二
歌 倉田てつを 歌 坂井紀雄
(コロムビアレコードCK‐797)
南 光太郎
仮面ライダーBLACK
倉田てつを
秋月信彦
シャドームーン
堀内孝人
秋月杏子
井上明美
紀田克美
田口あゆみ
相原巨典
石田純子
岡元次郎
北村隆幸
山本貴浩
飯田規子
岩田時男
(ジャパン・アクション・クラブ)
アクション監督
金田 治
村上 潤
(ジャパン・アクション・クラブ)
ナレーター 小林清志
ダロムの声 飯塚昭三
大神官ビシュム
好井ひとみ
大神官ダロム
庄司浩和
大神官バラオム
高橋利道
監督
蔦林淳望
エンディング
撮 影 松村文雄
照 明 中川勇雄
美 術 井上 明
造 型 前澤 範
録 音 太田克己
編 集 菅野順吉
選 曲 茶畑三男
効 果 大泉音映
製作担当 寺崎英世
進行主任 竹内洪太
助監督 岩原直樹
計 測 岡部正治
記 録 富田幸子
製作デスク 岩永恭一郎
装 置 東映美術センター
操 演 国米修市
美 粧 サン・メイク
衣 裳 東京衣裳
装 飾 大晃商会
資料担当 小佐野 聡
(石森プロ)
キャラクター製作 レインボー造型企画
イラスト 野口竜
プロデューサー補 高寺成紀
合 成 チャンネル16
現 像 東映化学
オートバイ協力
S SUZUKI
ビデオ合成 東通ECGシステム
峰沢和夫 近藤弘志
前岡良徹 鈴木康夫
(株)特撮研究所
操 演 鈴木 昶
尾上克郎
撮 影 高橋政千
照 明 加藤純弘
美 術 佛田 洋
特撮監督
矢島信男
△東映
製 作
毎日放送
使用音楽一覧
場面 | 番号または歌曲名 | 音楽メニュー |
前回の粗筋 | V6 | マシン激闘 |
シャドームーン | MD |
光太郎の苦悩、副題 | M48b別 | サブタイトル |
シャドームーンの訓示 | M3 | 張りつめる空気 |
キャピトラにて | V2 | 勇者は行く |
対決を迫るシャドームーン | M22 | 大いなる悪の力 |
光太郎の叫び、旧秋月邸に来てしまったキャピトラ組 | M19 | 偽りの魂 |
シャドームーンの説教 | M13 |
神殿のシャドームーン | M40 | 挑戦 |
生まれ変わる大神官達 | M34 | おぞましき姿 |
大怪人誕生 | M23 | 毒牙! |
国会議事堂に大怪人乱入 | M20 | 世紀王脱走 |
大怪人市街戦 | 「BLACK ACTION」 |
光太郎戦場に到着 | M2 | シティ・チェイス |
光太郎対大怪人 | M34(uptempo) | 迫りくる怪人 |
変身 | 「仮面ライダーBLACK」歌入り |
戦闘 | 「仮面ライダーBLACK」インストゥルメンタル |
落下する看板 | M15 |
落下する看板 | M41 | チャンス到来 |
克美の叫び、BLACK必殺技 | V1aT2 | 燃える想い |
退却する大怪人達 | 「ブラックホール・メッセージ」インストゥルメンタル |
一覧に戻る
次回
I use "ルビふりマクロ".