#35「対決!二人の王子」
昭和六十三年六月十二日放送 脚本・杉村升 監督・小西通雄
粗筋
崖から転落したBLACKと杏子は辛うじて一命を取り留める。隠れた洞窟内で光太郎は杏子に事情の全てを打ち明ける。
剣聖はBLACKをおびき出すべく、街の暴走族、不良少年達を暴徒化する。暴徒の追撃を躱しつつキャピトラにたどり着く光太郎と杏子。光太郎は再び出陣、変身して剣聖と対決するが、すぐ地鳴り発生。それはシャドームーン復活に伴う現象。
遂に復活したシャドームーン、サタンサーベルを剣聖から奪還。剣聖はライダーパンチ、ライダーキックの直撃を受けて退却。街の暴徒は正気に戻る。
帰還した剣聖の前に立ちはだかるシャドームーン、剣聖はその一刀の下に斃れる。圧倒的なシャドームーンの力を目撃して戦慄する大神官達。シャドームーンはゴルゴムの指揮権掌握を宣言し、また突然路上に出現して光太郎に剣聖の死と自らの復活を告げて去る。
暗黒大公曰く
さあ愈々シャドームーン大復活の回である。
次回予告にはあった「山奥の橋の上を走る光太郎と杏子」の場面は今回の本編では使われていない。
今回から堀内孝人の役柄は「秋月信彦/シャドームーン」。この「シャドームーン」の文字だけでもう狂喜していた当時の筆者!
シャドームーンの声は堀内に非ずして寺杣昌紀(後に一時期「てらそま昌紀」、その後また「寺杣」に復し、現在「てらそま まさき」)。しかしながらオープニングには「シャドームーンの声」の表示は無い。本当にとことん声優には冷たいこの番組、毎週の一般怪人ならともかく、主人公と渡り合う、或いはもう一人の主人公とも言えるシャドームーンの声の役者を表示しないのだから。「BLACK」での総出演時間は、恐らく堀内よりも寺杣の方が長いだろう。それなのに名前非表示である。当時の筆者は寺杣の事は知らず、「RX」終盤頃に発売された小学館「超全集」で初めて寺杣の名を知った。尚、東映ビデオソフトの箱には「■シャドームーン(声)/寺杣昌紀」の表示がある。後に寺杣は「特救指令ソルブレイン」「特捜エクシードラフト」「ブルースワット」「真・仮面ライダー序章」に声や顔出しで出演、特に「ソルブレイン」では、ソルブレイン本部のコンピューター・クロスの声と犯罪者・高岡隆一本人の二役を演じた。舞台の他、ナショナル劇場「大岡越前」に同心・夏目甚八役でレギュラー出演、「仮面ライダーアギト」#18、#19に鑑査官・司龍二役でゲスト出演。更に「仮面ライダー電王」ではキンタロスの声を演じてCDも出した。幅広く活躍中である。
さて。
決してやせ形ではない井上明美、今回の冒頭での転落場面での下から見た顔、特に顎の部分を見るとよく解る。尤も、あの丸顔と逞しい眉毛が魅力でもあるが。
海岸の岩場の上に転落した二人だが、そうなると前回ラストでの「ドボーン」は一体何だったんだ? 何とかBLACKを岩陰に引きずって行って剣聖の捜索の目から隠す杏子。設定に拠ればBLACKの体重は八十七キロ、女子高生(正確には杏子は「元」だが)が動かせる重さかどうか。気絶したBLACKはいつの間にか光太郎の姿になっている、これで杏子はBLACKの正体を確認するわけだが。
剣聖が岩場を走りながら光球に変身して飛び去る場面が好きだ。
V1aに乗って山中を逃亡、そして洞窟にたどり着く二人。杏子が磔にされていた場所、海岸、そして洞窟の位置関係がどうも不思議だ。負傷し、洞窟内で苦悶の表情を浮かべる光太郎。
なかなか復活しないシャドームーン、大神官達の体に変調が出始める。まずビシュムが倒れ込む。焦る大神官達。
再び洞窟内、この場面の杏子の顔の美しさよ。ここで話を切り出す光太郎、制止する杏子。「やめて、そんな話聞きたくない」そして杏子も、以前からBLACKの正体を悟っていたと語る。「でも、でも、私には、昔とちっとも変わらない光太郎さん、それでいいでしょ? 何があっても、光太郎さんは、いつもそばにいてくれた、それが嬉しくて、それだけで幸せで、だから、だから…」ここで画面は楽しき日々の回想に切り替わる、音楽は「L L A,」の二番のサビ。草原でボール遊びをして遊ぶ光太郎と信彦、後から笑いながら駆けて来る杏子と克美。そして四人で缶飲料で「カンパーイ」と。この頃が四人の一番幸福で、光り輝いていた時に違いない。「許せない、そんな皆の幸せを、ゴルゴムは奪い取ったんだ!」改めて怒りを表明する光太郎、そして信彦のことに言及。「解るだろう、君のお兄さんと戦う羽目になるかも知れないんだ!」「やめて、そんなの嫌、嫌よ!」「僕だって嫌だ! でも…」「光太郎さん…!」もう杏子には泣くしかない、光太郎はそんな彼女をどうすることもできない、ただ抱き締めるだけだ。「銀河鉄道999」の星野鉄郎みたいに、復讐の鬼と化して何が何でも宿敵を斃してやる、と燃える主人公もあるが、光太郎についてはゴルゴムは斃したいもののその後継者たるシャドームーン、信彦とは戦いたくないという複雑な心境がある。ここが「BLACK」の深さだ。
街。剣聖はサタンクロスで暴徒集団を作り出す。赤い服を着ているのが岡元次郎。「とうとう俺達の時代が来たぞ、やっちまえ!」何が「俺達の時代」だか。そして大暴れ。「もっとやれ、暴れろ、もっとだ!」
さてもなかなか出て来ないシャドームーン。大神官達の顔は醜く崩れ、爛れている。「苦しい…」ビシュムの悲鳴! そしてバラオムの問い、「お答え下さい、創世王様、天、海、地の石で本当にシャドームーンが蘇るのですか!」
暴徒集団はキャピトラをも襲撃。克美がもう少し早く戸締まりをすれば店内まで荒らされずにすんだのに。「どこにいるの光太郎さん、助けて光太郎さん!」決して彼女は気丈な方ではない。
街に駆けつける光太郎と杏子、何時どこから調達したのだか、杏子は橙色のシャツとジーパン着用。キャピトラに到着、光太郎に泣きついてしまう克美。彼女の人生の中で過去最悪の恐怖体験だったに違いない。
そしてBLACKと剣聖の対決、これが最終対決となる。サタンクロスで攻めまくる剣聖、しかしすぐに地鳴り発生。
その頃神殿では遂にシャドームーン大復活。額の部分を点滅させ、がちゃこん、がちゃこんと足音を響かせながら白煙の中から出現した白銀の体。ダロム「シャ、シャドームーン様!」今までは呼び捨てにしたり、「もうすぐ会わせてやるぞ」とか言ったりしていたのに、ここから敬語使用となる。「シャドームーン」と字幕が入るが、前述のとおり、筆者は人物名や武器名、技名を字幕表示するのは目障りで嫌いだ。しかしマンモス怪人の時に始まった怪人名表示、シャドームーンには適用されたが剣聖復活の時には無かった。剣聖の時は副題自体が「剣聖ビルゲニア!!」だからそれで兼用か。「BLACK」では「シャドームーン」が副題に入った事は無い。
早速サタンサーベルを奪還するシャドームーン、戦場の剣聖はこれを大神官達の仕業だと思う。その隙にライダーパンチ、ライダーキックを打ち込むBLACK、直撃を受けた剣聖は捨て台詞を残して退却。しかし剣聖の言うとおり、BLACKはこれで勝ったと思ってはいけない、実にどさくさまぎれの勝利である。
それにしても世紀王の必殺技連打直撃を受けて、一般怪人ならここで爆発しているところだが退却するだけの余力がある剣聖、やはり準世紀王と呼ぶべき力の持ち主として評価せねばならない。BLACKの必殺技をビルテクターで受けていれば、ぶっ飛ばされまではしないのは#18、#28での様子を見れば解ることだ。#19では剣聖はビルテクターを左手から出しているが今回はどうして出さなかったのか、実はビルテクターは常時携帯していてすぐ取り出せるようにしてあるのが、この時はサタンサーベル使用の為に神殿に置いてきたのかも知れない。
剣聖の術が解ける場面、こちらに向かって走って逃げて来る笑顔の女性。よくいるんだよな、怪獣等に襲われて笑いながら逃げる人。
神殿に帰還した剣聖、怒りの声で「どこだ、大神官!」もう「大神官様」とは言わない。ふと見やれば哀れな醜態を晒している大神官達、ざまあ見ろと言わんばかりに笑みを浮かべる剣聖だがそこに「ふふふふ…」と笑いつつ出現するシャドームーン、その手にはサタンサーベル。それに気付いた剣聖、「サタンサーベル、その剣は俺の物だ、返せ!」シャドームーン答えて曰く「ふふふふ…この剣は私の為に用意されたものだ、取れるものなら取ってみるがいい。」余裕の笑いである。しかしあくまでも抵抗する剣聖、ビルセイバーとビルテクターを構える。M33の流れる中、緊張感に満ちた格調高い対峙。一度切り結び、「おのれえ、シャドームーン!」飛びかかるも今度はビルセイバーを弾き飛ばされ、そしてビルテクターごと斬られてしまう。「俺は利用されたに過ぎなかったのか、創世王様!」悲痛な叫びを残して斃れ、消滅する剣聖。復活の時も、サタンサーベルを入手しての絶頂期も、そして最期もV7aである。彼、やはり世紀王にいいように使い捨てられたとしか言いようが無い。
「所詮キングストーンを持たぬ者に、創世王の座など叶わぬ夢だったのだ。」確かにそれもそうだが、一時は「創世王のみに与えられる」サタンサーベルを使いこなしていた実力者である、その期間は正真正銘、世紀王を凌いでいたであろう。事実、素手の世紀王は遂に最後まで剣聖を斃せなかった。キングストーンを持つ上にサタンサーベルをも得たシャドームーンは準創世王みたいなものであって、これでは如何に剣聖と雖もひとたまりもないだろう。あくまでも剣聖を斃したのはシャドームーンに非ずして創世王というのが筆者の考えである。
今回のシャドームーン、もう一人の世紀王の事をブラックサンとは言わずに終始仮面ライダー、仮面ライダーBLACKと言っている。
ラスト、突然光太郎の前に出現するシャドームーン。「信彦、そんな名前は忘れたな」例の改造手術が完成しているならば信彦としての記憶は無いはずだが、これが後でややこしい話になってくる。
クレジット
オープニング
仮面ライダーBLACK
吉川 進
堀 長文
(東映)
プロデューサー
井口 亮
山田尚良
(毎日放送)
原作 石ノ森章太郎
少年サンデー
てれびくん
連載 コロコロコミック
小学館学習雑誌
テレビランド
脚本 杉村 升
音楽 川村栄二
主題歌
「仮面ライダー 「LONG LONG AGO,
・
BLACK」 20TH CENTURY」
作詩 阿木燿子
作曲 宇崎竜童
編曲 川村栄二
歌 倉田てつを 歌 坂井紀雄
(コロムビアレコードCK‐797)
南 光太郎
仮面ライダーBLACK
倉田てつを
秋月信彦
シャドームーン
堀内孝人
秋月杏子
井上明美
紀田克美
田口あゆみ
岡元次郎
北村隆幸
山本貴浩
末永貴久
渡辺 実
(ジャパン・アクション・クラブ)
アクション監督
金田 治
村上 潤
(ジャパン・アクション・クラブ)
ナレーター 小林清志
ダロムの声 飯塚昭三
大神宮ダロム
庄司浩和
大神宮バラオム
高橋利道
剣聖ビルゲニア
吉田 淳
大神官ビシュム
好井ひとみ
監督
小西通雄
エンディング
撮 影 工藤矩雄
照 明 嶋田宜代士
美 術 野本幸男
造 型 前澤 範
録 音 太田克己
編 集 菅野順吉
選 曲 茶畑三男
効 果 大泉音映
製作担当 寺崎英世
進行主任 桐山 勝
助監督 息 邦夫
計 測 斉藤 健
記 録 栗原節子
製作デスク 岩永恭一郎
装 置 東映美術センター
操 演 神尾悦郎
美 粧 サン・メイク
衣 裳 東京衣裳
装 飾 大晃商会
資料担当 小佐野 聡
(石森プロ)
キャラクター製作 レインボー造型企画
イラスト 野口竜
プロデューサー補 高寺成紀
合 成 チャンネル16
現 像 東映化学
オートバイ協力
S SUZUKI
ビデオ合成 東通ECGシステム
峰沢和夫 近藤弘志
前岡良徹 鈴木康夫
(株)特撮研究所
操 演 鈴木 昶
尾上克郎
撮 影 高橋政千
照 明 加藤純弘
美 術 佛田 洋
特撮監督
矢島信男
△東映
製 作
毎日放送
使用音楽一覧
場面 | 番号または歌曲名 | 音楽メニュー |
前回の粗筋 | M21 | バトルホッパー |
海岸 | M22 | 大いなる悪の力 |
光太郎と杏子の逃避行 | V1a | 燃える想い |
洞窟内の二人 | M32T2 | 孤独 |
回想、光太郎の怒り、杏子の哀しみ | 「LONG LONG AGO,20TH CENTURY」 |
剣聖、街に出現 | M45 | 怪人出撃 |
暴徒出現 | M6 | 悪魔の追撃 |
暴徒大暴れ | M23 | 毒牙! |
苦しむ大神官達 | V9T2 |
荒らされるキャピトラ、暴れる暴徒達 | M20 | 世紀王脱走 |
荒廃したキャピトラ | M40 | 挑戦 |
出撃する光太郎 | M6 | 悪魔の追撃 |
剣聖対光太郎 | 「仮面ライダーBLACK」 インストゥルメンタルのイントロ部分と歌入り |
シャドームーン復活 | MD |
歩むシャドームーン | MCT3 |
シャドームーン正面像 | M48b別 | サブタイトル |
行動を起こすシャドームーン | M33T2 |
飛び去るサタンサーベル | M7 | 敵の気配 |
BLACKの反撃 | V0 | ヒーロー登場 |
正気に戻る人々 | M9 |
剣聖対シャドームーン | M33T2 |
剣聖消滅 | V7a | 邪悪の神殿 |
シャドームーンのつぶやき、訓示 | M13 |
光太郎の前に出現したシャドームーン | M22 | 大いなる悪の力 |
光太郎の決意 | 「ブラックホール・メッセージ」 イントロ部分とコーダ部分 |
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次回
I use "ルビふりマクロ".