おもしろコラム

〜右手にワイン、左手薬指に指輪、小指は鼻の穴へ〜

 

 ま、そんなわけでね。ホジホジ(長年にわたって培われた経験とカンによって確実かつスピーディーに鼻腔内のハナクソを小指の爪先でこそげおとしながら)、1ページ貰って、何か書けと、まあ、言われたわけですよ、奥さん。

 ちゅーてもね、テーマは自由だとか好きなこと書けとか言っても書くことなんて特にないわけですよ。ズポッ(そろそろ頃合かと小指を鼻の穴から抜き出し漁果を確認し、その出来栄えを堪能)、なんか書くべき事なんて物があったとしたらそのネタで本出してサークルスペース取って売ってるハズなんですから。

 

そんでもって、即売会当日になると全くジャンルの合わない上に、日常生活では絶対に口きかないようなツラとか性格とか体臭の人が両隣に座ってたりするんですよ、ええ。それでも一応今日一緒にやってくわけだから、それなりに「今日はよろしくおねがいしますぅ」とかちょっと鼻にかけた言い方で挨拶するフリとかして。ついでにどう考えても買う奴がいるとは思えねぇ、つかこんなん買う奴はバカかそれ以下だ、と売る本人が本気で思っている締め切り6時間前に書き始めて読み返しすらせずに印刷した酷い出来の本を「うちら、こういうのやってます、よろしかったらどうぞー」とかバイトで覚えたての目元だけは微動だにさせずに頬の筋肉の緊張だけで生み出される作り笑いをしながら渡して、在庫を消化しようとするわけですよ。

 

 そうすると向こう側もこっちと同じように、こんなん買う奴はバカかそれ以下だと思っているかどうかは定かではないが、そう考えずに出すにはあまりにもあんまりな出来の本を、薄ら笑いを浮かべたり、下向いて無言でこっちの喉元をえぐるように突き出したり、瞳孔が開き過ぎ気味な輝いた目でこっちを見つめたりしながら、対応に個人差(全く関係無いが、筆者は個人差というと中学校の保健体育の教科書でゴシック体の太字で第2次性徴期の説明の項に書いてあったことと、それに付随して掻き立てられた青臭くも若さゆえの荒々しさがある妄想の数々を思い出すのであるが、諸君にはそのようなことは無いだろうか。もしもあったら私にこっそりその内容を教えて欲しい。別に、いやらしい話だったらなんでもかまわないし、いやらしい行為を一緒にしようという女子からの誘いであれば面接の結果次第でいくらでもお相手になりたいものである。おっと、話がそれすぎたな、気にせず先に進んでくれ)はあるが、大抵は交換という形で貰ってその日一日の暇つぶしのタネを格安でゲットだぜ!ってことになるわけで。

 

 いかんせん、こういう所で言うのは実に気が引けるというか、よっぽどのトンパチでなければ書かないと思うのだが、読み物としては同人誌というものは9割以上がクソつまらない紙クズじゃないですか。他人の同人誌しかり、自分の同人誌しかり、今書いてるこの原稿も含めてね。スタージョンの法則っていうの?それが如実に反映してるっつーか、スタージョンは同人誌即売会に足を運んでいるに違いないと確信するに至るほどつまらないハズレの山じゃないですか。スタージョンは即売会なんざ来ないけどね。

 

 そんなものを2冊とか3冊とか貰ってもね、実際のところはうれしくもなんともないわけですよ。そりゃあ「ありがとうございますぅ」とかテケトーに調子出してうれしいポーズは社交辞令というかオトナの態度としてするけどね。それでも折角だからと読んでもみてもね、ジャンル違いすぎて書いてることワケわかんねえし、それ以前にお前絵ぇヘッタクソじゃん、チラシの裏ならともかくこんな良い紙に描くってのはどうよ?つかもっと前、根本的な問題として日本語覚えろ、とかそんなネガティヴな感想が次から次へと、俺がもしサトラレだったら間違い無く殺されていそうな、俺がもしオダギリジョーだったら子供番組や特撮を軽視しながらトレンディドラマに行くぐらいならヘソ噛んで死ぬね、俺なら。絶対。とか、そんな怒りの王子バイオライダーに変身してもおかしくない位の勢いの感情を秘めながら、流れる客を椅子にボォーっと座って眺め続けるイベントライフになるわけですよ。

 

 そんなこんなで開場すると、自分ですでに予想済みで分かってはいたから悲しくもなんともないはずなのに、モーゼが海を割ったか、アラレちゃんが地球を割ったのかと錯覚するぐらいに目の前に客はいなくて、両隣はなんか人が並んでいて、「スケブお願いできますかぁ」とか中学生ぐらいの同人スレしてなさそうな普段は運動部で汗をかいていそうな実にブルマの匂いを嗅いでみたい可愛らしい女の子がさっき買ったばかりのスケッチブックをおずおずと差し出したら快くOK貰って笑顔で「ありがとうございます!」とか言ってるのを横で指くわえながら見ることになったり。人に見せると恥ずかしい水準でも良いから絵心が少しは欲しいなぁ、とか女子中学生と喜びを共に出来るような作品チョイスをする感性がなんで俺には無いんだろうとか、なんで俺は女子中学生に忌み嫌うべきものかもしくは初めから無いもののような扱いで見られているように感じるんだろうとか、暗く深い答えが無い上に救いの無い疑問が次々となんでだろう、なんでだろう、とテツandトモよろしく出てきて、テツトモのなんでだろうのテンションとは対象的に落ち込むわけで。欝MAXですよ。Withスーパーモンキーズとは全く関係ありませんが、VAPのファミコンソフト元祖西遊記スーパーモンキー大冒険級の絶望感はひしひしと感じるわけで。ながい たびがはじまる……

 

 気づけば長いようなイベント開催時間は実際に拷問を受けているような長さに感じられるも終わりに近づき、朝に確認したのと同じ数だけの本があり、売れもしなければ盗まれもせず、立ち読み痕の指紋すらなくて法治国家日本の国民の高いモラルと深刻な不況に胸を馳せ、辛い現実は極力直視しないようにする自分がいるのです。リアップのCMなんか見たくない。

 

ま、そんなことがリアルシャドーよろしく俺の脳内即売会では毎日エンドレスでループでキラークイーンバイツァダストでビューティフルドリーマーで終わらない学園祭前日で全てはラムちゃんの夢でスカした顔で「ネットは広大だわ…」とかいまさら言ってるわけですが。そうですか。そういやこの前のCRUSH!では押井守によく似た女の子を見かけて、死ぬほど笑いかけました。すいません。

 

 あー、デビル忍法かゲルマン忍法覚えてーなー。ニンニン。

2003.4.9 佐藤良寛