「石森萬画館」第十四回訪問記

平成十四年十二月二十二日(日)

 前日所用で一泊の仙台市から仙石線快速うみかぜ9号で石巻入り、十一時四十六分着。今秋から仙石線車両にも手洗いが設置されている。今まで石巻市で降雪は何度か見ているが積雪は見たことが無い、曇天のこの日も市内に積雪は全く見当たらない。
 今回も定例どおり八幡家に直行。ミニうな丼一つ。紀代子女将と歓談。数十分過ごしてから辞去。
 萬市場でバンダイのS.I.C.「仮面ライダーブラックRX & 仮面ライダーブラック」を買う。試作品の発表段階から大きな話題になっているこの人気商品、筆者は近所で入手できなくて「本場、総本山」のマンガランドにはあるだろうと期待して来たらきちんと在庫あり。商品についての所感は後述する。
 店内には公開中の映画にちなんで「とっとこハム太郎」商品も数多く陳列。積極的に時流に合致させた販売戦略、これでいいのだ。
 萬画館入館は十三時頃。思うところあって三階のBLUE ZONEに直行してアイスコーヒー一杯、勿論砂糖は入れない。前回訪問時にあった芸能人のサイン色紙は外され、港湾の風景写真のコンテストの作品が飾られている。ここでもなじみになった店員嬢と少し歓談。
 廊下の壁面の来館者イラストの大半は「009」関連で、残りは「龍騎」関連。一枚「マシンマン」のがあって筆者大喜び。
 一階に降りて「墨汁一滴」も少し見る。今回は館内では買い物せず。
 二階。今回の特別企画展は常設と抱き合わせ料金で単独売りは無し。常設のトキワ荘コーナーの関係者インタビュー映像の征服に掛かる。今まで、入館の機会は何度でもあると思っていて未着手だったのだ。入居していた漫画家や、通っていた関係者の談話。
 それを見ている途中で、「十四時から一階でコンサート開催」の場内アナウンスあり。また降りる。毎度毎度、館内では昇降の激しい筆者。
 市内の杉本冨美子音楽教室出演のクリスマスコンサート。一階の石巻の歴史コーナーにキーボードが設けられ、そこに一人ずつ登場して演奏、歌唱する。師弟全員女性、弟子は小学生から高校生まで十人くらいか。筆者は映像ホール入り口付近に立ち、出演者達を斜め後ろから見下ろす格好で鑑賞する。
 派手な舞台衣装に身を固めた少女達。曲目は西洋古典や童謡、歌謡曲、勿論クリスマスソングと多岐に亙る。アニメ歌曲は「カントリー ロード」「君を乗せて」だけだと思う。石森関連曲が一つも無いのが残念、萬画館でコンサートを開くのなら石森関連曲を入れるべきだろう。ふるさと記念館では地元中高生がちょくちょくブラスで「レッツゴー! ライダーキック」を演奏している。しかし今時の少女達が知っている石森関連曲って何だろう、彼女達に「Alive A life」を歌えと言うのは無理か。ああ、「仮面ライダーのクリスマス」という歌はあるがあれも俊輔節独特の陰気な歌だしな。
 曲目に不満はあるが、皆上手に奏で、歌う。一時間ほど。
 着ぐるみの「どれみ」が一階玄関近くに登場、入場者と記念撮影。
 コンサート終了後再び二階常設に向かい、トキワ荘のビデオを征服。石森原画展示は「HOTEL」に入れ替わっている。常設一周の後に企画に入る。
 第10回特別企画展「どれみとデジモンのおもいっきりアニメ!」十二月七日から三月九日まで。標題の両作品を中心に、アニメーション制作の解説やセル画、人形等の展示。
 開幕早々に萬画館ウェブページの掲示板で来館者から内容を非難された今回の企画展、筆者が見ても内容が大変薄い。セル画やアニメキャラクターの人形展示はあまり芸が無いし、何よりアニメーション制作の解説の内容が古すぎる。制作風景の写真をよく見れば何と「キャプテンフューチャー」ではないか、世代人としてはそれはそれで嬉しいのだが最新作品と一緒に展示するのは如何なものか。それに最近のアニメーションはデジタル制作でセル画は使わないだろう。展示品の中にはだいぶくたびれた徳間書店の東映動画史の本や、「さよなら銀河鉄道999」のフィルムの缶まである。テレビセットでは「東映動画主題歌集」上映中。これだけ歴史的展示物を並べておいて今回の企画は「子供向け」だというのだからわけがわからない。最新作に絞るでもなく徹底的に古典を懐かしむでもなくどうにも中途半端である。それとアニメーションの原理である残像現象や目の錯覚等の理科方面の説明は、萬画館よりはこども科学館の分野だろう。筆者自身が「どれみ」も「デジモン」も見ていないという点を割り引いても、はっきり言って今までの特別企画展の中ではかなりひどい出来の部類に入ると思う。
 最近は、筆者はまだ向こうを認識していないが向こうでは筆者を知っているらしい萬画館職員からよく挨拶をされる。企画入り口の男子職員に感想を求められて上記のような講釈を垂れる。
 先程の「どれみ」が二階にもやって来る、筆者の背後から物言わずスーッと寄って来るのでギョッとする。何と事務方やアテンダントの女子職員達が交替で入っているのだそうな。せっかくの美しい容姿を「どれみ」の大きな頭で隠して奮闘する彼女達に筆者感動、握手で激励してしまう。
 板橋社長にも挨拶され、職員達にいろいろ教えてやってくれと言われる。萬画館勤務ならある程度は石森作品を知っているべきだと思うがあまり詳しく勉強する必要も無いと思う。お客の事を「お詳しいですね」と持ち上げるのも接客技術だろう、それにまんまと乗っている筆者。二階には一時間ほどいるか。
 同社長に事務室にも寄ってくれと言われて本当に事務室を訪ねる筆者、コーヒー一杯はすぐ出て来る。営業の木村氏等と会話。不況に負けるな木村氏! 今回、小学館てれびくんデラックス愛蔵版「スーパー戦隊超全集」初版と「戦隊ヒーロー超全集」最新版を持参して職員達に見せるとこれが好評、女の子でも「サンバルカン」「ダイナマン」等結構見ているようだ。「戦隊」は一時期石森原作の「ゴレンジャー」「ジャッカー」を含まなかったが現在は含んでいる、だから「ファイブマン」の頃に出た初版は「バトルフィーバーJ」からしか載っていないが、最新版には「ゴレンジャー」から載っている。「バトルフィーバーJ」以降は石森ではなく八手三郎原作であり、石森プロは無関係。
 十六時半頃まで居座る。
 萬画館辞去の後は駅へ直行、十七時九分の小牛田行で帰る。

 前述のとおり、今回の企画展の出来はお粗末。もっと企画を練って欲しいものである。そして東映グループは今後も大いに「構想」に協力すべし。
 萬画館職員の筆者への接遇が訪問の度に向上している、間違いなく国賓待遇。旧「墨汁一滴」の頃から石巻市に通っていろいろ協力しているのだから当然だが、筆者の側でも「これだけよくしてくれるのだからこれからも通わねばなるまい」等とも考えてしまう。我ながら全く以ていいカモである、術中にはまっているのは筆者だ。まあ、石森プロジェクトは通い詰めてもその為に身を持ち崩すような代物ではないだろう。あくまでも筆者は健全な青少年である。
 噂のS.I.C.は素晴らしい出来。部品のはめ込みが硬くてRXからBLACKへの組み替えに苦労してしまった、筆者は模型や人形の扱いに慣れていない。BLACK形態の顎や脇腹の辺りは原作版の特徴が出ているが左胸にはゴルゴムの紋様が刻まれている。本当に「昆虫」風味満点。膝を曲げて腰を落として前かがみにして、テレビシリーズ#1でのバッタ男のような姿勢にしてみると雰囲気がよく出る。
 このシリーズのシャドームーンも既に発売済みだが萬画館には未入荷だった、今から両世紀王を並べて飾るのが楽しみだ。値段もそんなに張るわけではないので、大人のコレクションとして諸氏にも是非勧める。筆者の部屋は萬画館タペストリーとパソコン壁紙に加えてこのS.I.C.とブラックサン尽くしである。

一覧に戻る

目次に戻る

I use "ルビふりマクロ".