「石森章太郎ふるさと記念館」第四回訪問記

平成十二年十月十五日(日)

 東北本線上り八時二十六分水沢発、九時二十八分石越着。今回も好天に恵まれる。
 石越駅に入る列車の中から、今まさに駅前を出発する佐沼行バスが見える。上り列車と宮交登米バスの接続は極めて悪い、そこで往々にして「バスを待つより歩く方が早い」「次のバスが来るまでできるだけ歩こう」ということになる。歩き慣れた県道四号線を独り行く。
 石越「町」を「市民が主役」の民主党宣伝カーが走る。前々から思っているのだがこの党は区民、町民、村民は脇役なのだろうか。
 車道に転がっている狸の轢死体、暫く歩くと今度は猫の。朝っぱらから二体も続けて見るとやはり気分は悪い。
 一時間半ほどで記念館に到着。
 正面の門は開放されている。売店・茶屋の「墨汁一滴in石森」と庭までは出入り自由のようだ。記念館の建物のエントランスで入場券を買う。家族連れが多くて結構賑わっている。高齢者の姿も少なくない。
 この日から開催の第二回特別企画展「畑中純 彫る 宮沢賢治・石森章太郎の世界」。漫画家・版画家の畑中純の漫画原稿や、宮沢・石森作品を題材にした版画等の展示。
 実は筆者、畑中純という作家を全く知らない。また、宮沢賢治も興味ない。
 特別展示室内の数十点の展示作品のうち、石森関連は「009」二枚と「ロボコン、エッちゃん、たまげ太」「ハリマオ」「幻魔大戦」「佐武と市」の水彩画、計六枚のみ。
 一番気に入ったのは、あまり大きくない単色刷り「横綱北の湖土俵入之圖」。あの鋭い眼光がよく表現されていると思う。
 外に出て少し庭をぶらつく。心地よい陽気。庭の草木はまだ青さを保っている。壁画の前で記念写真撮影をする家族あり。
 茶屋の前に置かれたラジカセからは「仮面ライダー」テレビシリーズ歴代主題歌。「アマゾン」「スカイ」「BLACK」「RX」「クウガ」の歌を口ずさんでしまう筆者、音痴な美声が低く響く。
 エントランスには来年放送予定という「009」新作についてのチラシはあるものの、十六日からキッズステーションで放送開始の「人造人間キカイダー THE ANIMATION」関連の宣伝物は館内のどこにも一切見当たらぬ。
 常設展示室へ。開館時に他の漫画家達から贈られた色紙はビデオライブラリーに移されている。これらはいつまでも展示していて欲しいものだ、改めて見るに各漫画家の友情や敬意が感じられて本当に素晴らしい。
 ビデオライブラリーで幼稚園くらいの少女曰く「セーラームーンはどこ?」一体この少女の親達はどこに行くと言って彼女を連れて来たのだろう。尤も、「不思議コメディー」も終了から大分経つし、「クウガ」は男の子番組だろうし、今時の少女達にとって「石森章太郎」がなじみの無い存在なのは間違いないだろう。筆者の世代にとっての怪獣映画のようなものだ。
 「墨汁一滴in石森」売店にはバンダイの「クウガ」最新玩具や「超絶自動変形大鉄人17」が入荷している。後者は筆者既に持っている。ボタンを押すと要塞ワンセブンから戦闘ワンセブンに電動自動変形、本当に素晴らしいが結構な値段でもある。記念館独自商品も増えているが今回は買い物はせず。
 茶屋で蛸焼きとメロンソーダを食し、「佐武市サブレ」を二箱買う。寿司も始めていて、これならちょっとした腹ごしらえ程度にはなろう。駅から歩いて来ても空きっ腹のまま記念館内をさまよわずにすむ。
 午後一時頃退出、石森仲町から十五分頃の若柳行バスに乗る。更に二時一分の下りに乗り、水沢帰着は三時二十三分。
 開館から三ケ月、繁盛しているようだ。その一方で気になるのが参観者の交通手段。記念館開館後に三度赴いている筆者だが、バス停、車内や石越駅近辺で記念館参観者を見掛けたことは一度も無い。近在の人は自家用車なのだろうが、くりこま高原駅からのシャトルバスも無い今、遠来の人はどのようにしているのだろう。まさか東北本線とバス利用は筆者一人、ということもなかろうが、駅から徒歩というのは筆者くらいのものだろうと思う。
 石越駅近辺には記念館の案内板、ポスター等は一切見当たらない。筆者がよく利用する東北本線の駅(盛岡、北上、水沢、一関)は駅ホームや駅前に各種記念館等の案内表示はある。くりこま高原駅の様子も気になるがそこまで調べてみるつもりは無い。

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